発達障害児への支援の一つに〝薬物療法″があります。
〝薬物療法″は、様々な特性(状態像)によって使用される薬が異なります。
著者が勤める療育現場でも、服薬している子どもたちは多くいます。
また、服薬するようになってから、生活全般が改善したケースも多く見られています。
それでは、発達障害児に対して、どのような薬がよく使用されているのでしょうか?
そこで、今回は、発達障害児への薬物療法について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、子どもによく使用される薬について見ていきます。
今回参照する資料は「てんねんDr.(2025)子どもの発達障害がよくわかる本 これ1冊で理解もサポートも!SB Creative.」です。
【発達障害児への薬物療法について】子どもによく使用されている薬について解説する
以下、著書を引用しながら見ていきます。
① ADHD(不注意、多動、衝動性)の薬
・コンサータ ・ストラテラ ・インチュニブ(いずれも6歳~)
・ビバンセ(6~18歳まで。任意継続は可)
② ASD(易刺激性)の薬
・リスパダール(6~18歳まで。任意継続は可)
・エビリファイ(6~18歳まで。任意継続は可)
③ 睡眠の薬
・メラトベル(6~15歳まで。任意継続は可)
④ 不安(強迫症など)に対する薬
・デプロメールなど
⑤ 癇癪に対する薬
・抑肝散
以上のものが、小児期によく使用される薬となっています。
著者は療育現場で現在勤務をしていますが、上記の薬のうち、ストラテラ、インチュニブ、リスパダール、エビリファイを使用されている子どもは多いと感じています。
小児期において、服薬の量は少量であり、また、効果がでるにもある程度の時間がかかる印象があります。
また、副作用(睡眠・食欲・集中力など)が出る場合もあるため、家庭や学校との情報共有を大切にしています。
もちろん、服薬に関しては、医師からの説明を受ける必要があります。
服薬による効果も療育を通して感じることが多いため、療育に携わるスタッフもまた薬に関する知識を身につけておくことが大切だと言えます。
著者の経験談
療育で大切なことは、〝服薬″をはじめた子どもへのアセスメント通して生活を整えていくことだと感じています。
ここでは、小学校低学年のA君の事例を見ていきます。
〝服薬″を始める前のA君は、些細なことでイライラしたり、イライラを抑えることが難しく、時にはパニック・癇癪になることもよくありました。
そのため、著者はA君にとって不快だと感じる刺激(苦手な子どもの声、賑やかな集団の声など)は、極力遠ざけるような環境調整を行いながら支援を行ってきました。
その後、A君は服薬を開始します。
〝エビリファイ″という易刺激性の薬を使用し始めました。
ちなみに、易刺激性とは、些細なことで不機嫌になるなど、過剰に感情が反応することを指します。
著者は〝服薬″を始めたA君の活動中の様子の変化などをよく観察していきました。
最初はあまり変化が見られない印象でしたが、一か月が経過した頃からA君に変化が見られはじめました。
A君は、些細なことでイライラする様子が徐々に減っていき、パニック・癇癪になることはほとんどなくなっていきました。
ここで大切なことは、〝服薬″の効果を実感できるに伴い、これまでできなかった支援が可能になっていったということです。
例えば、他児集団の賑やかな声の苦手さが減ったことで、逆に、他児との関わりを求めようとする行動の変化が見られていきました。
その結果、支援において、他児との関わりを通した様々な遊びを組み立てていくことができるようになっていきました。
そして、A君は、他児との関わりの中で、他児と関わる喜びを感じながら、様々な他児の思いや性格など、より内面に関して意識を向ける力が身に付いていきました。
このように、〝服薬″の効果が実感できるに伴い、療育の効果がさらに見られるようになった良い事例だと言えます。
もちろん、〝薬物療法″は万能ではなく、人のよって効果に変動はあるため、使用後のアセスメントが大切だと言えます。
以上、【発達障害児への薬物療法について】子どもによく使用されている薬について解説するについて見てきました。
薬物療法は医療からのアプローチではありますが、大切なことは、医療的アプローチと福祉・教育からのアプローチとの連携だと思います。
様々な領域が得意とすることを組み合わせていくことで、支援の質を高めていくことができるのだと思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育実践に関して、薬物療法といったアプローチへの学びも深めていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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