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【発達障害児への意思決定支援について】自由に決められないことへの対応

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発達障害児の中には、自由な状況において、自分で物事を決めたり、将来へのプランを立てることを苦手としています。

自分で物事を決めることを〝意思決定″と言いますが、発達障害児は〝意思決定″が得意ではありません。

 

それでは、自由な場合・状況において、発達障害児への意思決定を支援していく上で、どのようなことが必要なのでしょうか?

 

そこで、今回は、発達障害児への意思決定支援について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、自由に決められないことへの対応について理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「てんねんDr.(2025)子どもの発達障害がよくわかる本 これ1冊で理解もサポートも!SB Creative.」です。

 

 

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【発達障害児への意思決定支援について】自由に決められないことへの対応

障害児・者への支援でよく出てくる言葉として〝意思決定支援″があります。

これは、本人が望むことを自分で決められるようにサポートしていくこと、また、本人の意思を尊重していくことです。

一方で、発達障害児も含めた障害児・者において、様々な背景要因の影響によって、この〝意思決定支援″が困難だと感じることが多くあります。

 

ここでは、著書を参照しながら、自由に決められないことへの1つの対応方法について見ていきます(以下、著書引用)。

一般に、質問というのはオープン・クエスチョンクローズド・クエスチョンがあるといわれています。

 

オープン・クエスチョンによる自己開示や自己表現が苦手な子どももいるのです。選択肢が多すぎたり、どんな返答でも可能な自由度の高い質問だったりして、相手に心理的負担をかけてしまうこともあるのです。そのため、ときにはクローズド・クエスチョンにすることも必要です。

 

著書の内容には、意思決定を促す質問の方法として、〝オープン・クエスチョン″と〝クローズド・クエスチョン″の2つがあると記載されています。

オープン・クエスチョン″とは、○○についてどう思いますか?など漠然と質問をする方法であるため、質問事項に対して、様々な思いや考えを持っている場合によく活用されます。

一方で、〝クローズド・クエスチョン″とは、選択肢を設けて、それに対して応える形成を取る方法であるため、自分の考えがない、よくわからない場合などにおいて有効です。

そして、意思決定を苦手としている発達障害児に対しては、〝クローズド・クエスチョン″の方が好ましい場合が多いと言えます。

 

 

著者の経験談

著者も療育現場において、よく〝クローズド・クエスチョン″を活用しています。

例えば、やりたい遊びがうまく思いつかない場合→Aの遊び、または、Bの遊びどっちにする?(もちろん、その子が好きそうな遊びを踏まえて)と聞いたり、自由遊びの予定がうまく組めない場合→14時まで○○遊び、15時まで○○というように○○にやりたい内容を子どもと相談しながら組み込んでいくなどがあります。

このように、自由な状況において、スケジュールを組むといった〝構造化″は子どもたちの過ごしを習慣化させる上でとても重要だと言えます。

もちろん、自由な状況において、自由な発想をもとに自分でやりたいことを次々と考え実行できる子どもは良いのですが、発達障害児の多くは、自由な状況・場面をとても苦手としている傾向があると言えます。

また、自らの意思を他者に伝えることを苦手としている場合も多いと言えます。

そのため、一つひとつの遊びを大人の力を借りながら選択し(そのために〝クローズド・クエスチョン″は有効です)、やりたい遊びのスケジュールを徐々に〝構造化″していきながら、うまくできた!楽しかった!という経験の蓄積が次の成長に繋がっていくのだと思います。

著者がこれまで見てきた子どもたちの中には、大人の力を借りながら意思決定をしていく積み重ねを通して、活動(遊び)の選択肢の幅が広がった、自分から進んでやりたい遊びが思いつけるようになった、その日の予定を子ども主体で決められるようになったなど、意思決定の力が高まっていったケースは数多くあると感じています。

こうして見ると、私たちの生活の中には、意思決定を求められる場面が非常に多くあるように思います。

そして、療育現場においても、日々の選択と実行に関する意思決定支援の積み重ねが後の人生をとても豊かなものにしていくのだと思います。

 

 


以上、【発達障害児への意思決定支援について】自由に決められないことへの対応について見てきました。

人は生涯をかけて数多くのことを選択しながら生きていきます。

幼い頃から、大人の力を借りながら意思決定をしてきたという経験総量は子どもの成長においてとても大切なことだと言えます。

それは、成人になってもなかなか自分で物事が決められない人たちとの関わりを通しても強く実感できます。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も意思決定支援について、長い療育経験を踏まえて、その重要性について継続して考えていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「【発達障害児支援で必要な自由場面が苦手な子どもへの理解と対応】療育経験を通して考える

関連記事:「【モンテッソーリから見た〝自己教育力″とは何か】自身の経験を通して考える

 

 

てんねんDr.(2025)子どもの発達障害がよくわかる本 これ1冊で理解もサポートも!SB Creative.

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