発達障害のある人たちは、コミュニケーションを苦手とするケースが多く見られます。
もちろん、中には、むしろ人との会話を得意としている人や、特定の領域においてはイキイキと会話を進める人もいます。
それでは、発達障害児のコミュニケーションにはどのような特徴があるのでしょうか?
また、特徴を踏まえてどのような関わり方が必要なのでしょうか?
そこで、今回は、発達障害児のコミュニケーションの特徴と関わり方について、臨床発達心理士である著者の意見も交えながら、ASDを例に理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「加藤博之(2023)がんばりすぎない!発達障害の子ども支援.青弓社.」です。
ASDのコミュニケーションの特徴と関わり方について
ASD(自閉スペクトラム症)のコミュニケーションの特徴とは、興味関心など特定の領域において豊富な知識をもとに会話を進める特徴があります。
一方で、興味がないことへの会話が少ないことや雑談の苦手さ、そして、人の心情などを介した会話のやり取りを苦手としています。
それでは、ASDのコミュニケーションに対してどのような関わり方が必要なのでしょうか?
以下、著書を引用しながら見ていきます。
ASDのコミュニケーションは独特ですが、子ども自身がそのことに困っているわけではありません。
子どもが一方的に話してくるときは、しばらく共感し、終わりを作ってあげるといいでしょう
興味深いことに、ASDの子ども同士のやりとりを見ていると、お互いが、自分のことばかり話しているのに、結構楽しそうにやりとりを続けています。
以上の観点から、ASDへのコミュニケーションの関わり方で必要なことは次に集約できます。
- 周囲から見て困っていると感じても実際の所困っていないこともあるため、そっとしておく。
- 一方的な会話に対してはしばらく共感した後、話の終わりを作る。
- ASD同士の会話は独特であるが、楽しい会話を継続できるように配慮する。
1に関しては、定型発達児・者であれば、同じ空間に他者(顔見知り以上の関係)がいれば、なんとなく会話を作ろうとする傾向があります。
一方で、自閉症児にとっては、一人の時間を大切にしていることも多く、困っていると感じるのは周囲の勝手な思い込みである場合もあります。
そのため、過度に干渉せずにそっとしておく関わりも必要です。
以前、著者が関わることのあった自閉症児は、著者のことが大好きでしたが、休み時間に著者が積極的に話しかけると「今は一人にして下さい」と言われたことがありました。
おそらく、何か考え事をしたかったのか、あるいは、休み時間は一人でゆっくりしたかったのかもしれません。
2に関しては、自閉症児によく見られる特徴です。
つまり、自分の興味関心のあることについては、相手がどう思っていようが(そもそも相手の心情がうまく読み取れないことも背景となって)話を進める傾向があります。
そのため、著書にあるように会話の終わりをどこかで作ることが必要です。
著者が関わる自閉症児たちは、会話の終わりが見えることで思いの他スムーズに会話を止めるケースが多いと感じています。
著者が以前関わることのあった自閉症児は、話しはじめると延々と話し続けることがよくあったため、著者は「あと○○分話そう!」「○○時まで話そう!」「○○の話が終わったらおしまいにしよう!」などと声掛けすると話をスッと切り上げることがよくありました。
3に関しては、ASDのコミュニケーションの独特さを感じるものです。
ASD児は興味関心で繋がると、一方的な会話が多いにも関わらずお互い楽しんでいる様子が確かにあると感じます。
そもため、興味関心を基点に接点ができたら、できるだけ会話の機会を多く作る環境調整が必要だと思います。
著者が以前関わった自閉症児たちは、周囲から見ると会話のターンテーキングはあまりうまくはなかったですが、それでも、お互いイキイキと自分の興味のある話をすることで満足している様子がありました。
以上、【発達障害児のコミュニケーションの特徴と関わり方について】ASDを例に考えるについて見てきました。
ASDのコミュニケーションはとてもユニークだと感じます。
そして、興味のツボを理解してくれる他者がいることで、よりイキイキと会話をする様子が多くなることが特徴的だと思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も自閉症の人たちのコミュニケーションの特徴と関わり方についてさらに理解を深めていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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