発達理解・発達支援・ブログ

人間の多様な理解と支援を目指して!

コミュニケーション 発達障害

【発達障害児のコミュニケーションの特徴と関わり方について】ASDを例に考える

投稿日:2024年3月9日 更新日:

発達障害のある人たちは、コミュニケーションを苦手とするケースが多く見られます。

もちろん、中には、むしろ人との会話を得意としている人や、特定の領域においてはイキイキと会話を進める人もいます。

 

それでは、発達障害児のコミュニケーションにはどのような特徴があるのでしょうか?

また、特徴を踏まえてどのような関わり方が必要なのでしょうか?

 

そこで、今回は、発達障害児のコミュニケーションの特徴と関わり方について、臨床発達心理士である著者の意見も交えながら、ASDを例に理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「加藤博之(2023)がんばりすぎない!発達障害の子ども支援.青弓社.」です。

 

 

スポンサーリンク

ASDのコミュニケーションの特徴と関わり方について

ASD(自閉スペクトラム症)のコミュニケーションの特徴とは、興味関心など特定の領域において豊富な知識をもとに会話を進める特徴があります。

一方で、興味がないことへの会話が少ないことや雑談の苦手さ、そして、人の心情などを介した会話のやり取りを苦手としています。

 


それでは、ASDのコミュニケーションに対してどのような関わり方が必要なのでしょうか?

以下、著書を引用しながら見ていきます。

ASDのコミュニケーションは独特ですが、子ども自身がそのことに困っているわけではありません。

 

子どもが一方的に話してくるときは、しばらく共感し、終わりを作ってあげるといいでしょう

 

興味深いことに、ASDの子ども同士のやりとりを見ていると、お互いが、自分のことばかり話しているのに、結構楽しそうにやりとりを続けています。

 

 

以上の観点から、ASDへのコミュニケーションの関わり方で必要なことは次に集約できます。

  1. 周囲から見て困っていると感じても実際の所困っていないこともあるため、そっとしておく。
  2. 一方的な会話に対してはしばらく共感した後、話の終わりを作る。
  3. ASD同士の会話は独特であるが、楽しい会話を継続できるように配慮する。

 


1に関しては、定型発達児・者であれば、同じ空間に他者(顔見知り以上の関係)がいれば、なんとなく会話を作ろうとする傾向があります。

一方で、自閉症児にとっては、一人の時間を大切にしていることも多く、困っていると感じるのは周囲の勝手な思い込みである場合もあります。

そのため、過度に干渉せずにそっとしておく関わりも必要です。

以前、著者が関わることのあった自閉症児は、著者のことが大好きでしたが、休み時間に著者が積極的に話しかけると「今は一人にして下さい」と言われたことがありました。

おそらく、何か考え事をしたかったのか、あるいは、休み時間は一人でゆっくりしたかったのかもしれません。

 


2に関しては、自閉症児によく見られる特徴です。

つまり、自分の興味関心のあることについては、相手がどう思っていようが(そもそも相手の心情がうまく読み取れないことも背景となって)話を進める傾向があります。

そのため、著書にあるように会話の終わりをどこかで作ることが必要です。

著者が関わる自閉症児たちは、会話の終わりが見えることで思いの他スムーズに会話を止めるケースが多いと感じています。

著者が以前関わることのあった自閉症児は、話しはじめると延々と話し続けることがよくあったため、著者は「あと○○分話そう!」「○○時まで話そう!」「○○の話が終わったらおしまいにしよう!」などと声掛けすると話をスッと切り上げることがよくありました。

 


3に関しては、ASDのコミュニケーションの独特さを感じるものです。

ASD児は興味関心で繋がると、一方的な会話が多いにも関わらずお互い楽しんでいる様子が確かにあると感じます。

そもため、興味関心を基点に接点ができたら、できるだけ会話の機会を多く作る環境調整が必要だと思います。

著者が以前関わった自閉症児たちは、周囲から見ると会話のターンテーキングはあまりうまくはなかったですが、それでも、お互いイキイキと自分の興味のある話をすることで満足している様子がありました。

 

 


以上、【発達障害児のコミュニケーションの特徴と関わり方について】ASDを例に考えるについて見てきました。

ASDのコミュニケーションはとてもユニークだと感じます。

そして、興味のツボを理解してくれる他者がいることで、よりイキイキと会話をする様子が多くなることが特徴的だと思います。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も自閉症の人たちのコミュニケーションの特徴と関わり方についてさらに理解を深めていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「【発達障害児のコミュニケーションの特徴と関わり方について】ADHDを例に考える

 

加藤博之(2023)がんばりすぎない!発達障害の子ども支援.青弓社.

スポンサーリンク

-コミュニケーション, 発達障害

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

【発達障害児のイライラ・癇癪の原因について】療育経験を通して考える

発達障害児の中には、〝イライラ・癇癪″が見られることがよくあります。 もちろん、子どもたちは、やりたくて〝イライラ・癇癪″を起こしているわけではありません。 子どもたち一人ひとりに背景となる理由があり …

大人の発達障害の理解が難しい理由

最近、大人の発達障害関連の書籍やニュースなどが増えています。 その中で、テレビやネットでの当事者出演、診断名の公表など、ここ10数年で大人の発達障害が話題になることは多くなっています。 私はこれまで福 …

発達障害児の感覚への支援【公園遊びを例に】

  発達障害児の多くは感覚の問題があると言われています。   関連記事:「発達障害の感覚調整障害について【4つのタイプから考える】」   感覚に問題があると、無意識的に不 …

【発達障害児に見られる過度なマイペースへの対応】療育経験を通して考える

著者は長年、発達障害など発達に躓きのある子どもたちへの療育をしてきています。 療育現場には、自分のペースで物事を進める子どもも少なからずおり、中には、過度な〝マイペース″な子もいます。 例えば、遊びを …

【発達障害児を持つ保護者支援について】効果的な支援方法を伝えることの意味

発達障害児への支援と言えば、本人への直接的な支援も重要ですが、それに加えて、〝保護者支援″もまたとても大切です。 発達障害児に関わる支援者は、様々な観点から子どもの支援に携わっており、その中には、家庭 …