発達障害児は、発達特性などが影響して、生活の様々な所で困り感が生じる場合があります。
著者は長年、療育現場で発達障害児支援を行っていますが、個々の発達特性や発達段階等を踏まえたオーダーメイドな支援はとても大切だと感じています。
それでは、発達障害児に見られる予定変更が苦手な場合に対して、どのような対応方法が有効だと考えられているのでしょうか?
そこで、今回は、発達障害児に見られる予定変更が苦手な場合への対応について、SST・ペアトレ・感覚統合からのアプローチを通して理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「岩坂英巳・宮崎義博(2021)「うまくいかない」ことが「うまくいく」に変わる!発達障害のある子どもがいきいきと輝く「かかわり方」と「工夫」.幻冬舎.」です。
予定変更の苦手さはなぜ生じるのか?
〝予定変更の苦手さ″は、自閉症児によく見られる特徴です。
自閉症の人たちは、変化に対する抵抗、つまり、〝こだわり″〝同一性保持″といったいつもと同じ(場所・スケジュール・手順など)を好む傾向、逆に言えば違いに対して不安感・抵抗感が定型発達の人より多く見られます。
例えば、どこか目的地に向けて移動する場合にいつもと同じ道順を好むこと、何かの作業をする際にいつもと同じ手順で物事を進めようとすること、などがあります。
そのため、急な変更に対して、過度な抵抗を示すことがよく見られます。
予定変更の苦手さへの対応について
著書には、予定変更の苦手さへの対応として、〝①SST(ソーシャルスキルトレーニング)″〝②ペアレントトレーニング″〝③感覚統合療法″の3つからのアプローチ方法が記載されています。
それでは、次に、①②③のそれぞれのアプローチ方法について具体的に見ていきます。
① SST(ソーシャルスキルトレーニング)
以下、著書を引用しながら、SSTからのアプローチを見ていきます。
・予定の示し方を工夫する
・パニックになっても落ちつける場所を探しておく
まずは、〝事前に予定・見通しを伝える″ことです。
自閉症児においては、〝視覚的な理解が強い″ことがよくあるため、新しく行く場所の写真、スケジュール及び変更点をホワイトボードに書く、などの配慮が大切です。
また、あまり細かく変更点を伝えるよりも、シンプルに変更点を示すこと、そして、〝1に○○→2に○○″といったように継次的な伝達の方が入りやすい場合があります。
次に、〝パニック時にクールダウンエリアを用意しておく″ことです。
予定変更が本人にとって難しい場合、イライラした気分が高まりパニック状態に陥ることがあります。
そのため、事前に〝クールダウンエリア″を確保しておくこと、そのエリアを子どもに伝えておく配慮もまた大切です。
② ペアレントトレーニング
以下、著書を引用しながら、ペアレントトレーニングからのアプローチを見ていきます。
・変更内容を視覚化する
・いつもと違うことを伝える
まずは、〝予定の変更を可視化する″ことです。
これは、家庭においても、学校や療育現場などと同様に視覚化する配慮が必要だと言えます。
次に、〝前もっていつもと違うことを伝える″ことです。
予定変更の苦手さへの対応において、事前の提示は必須と言えますが、子どもが少しでも、いつもとの違いを受け入れることができたら、しっかりと褒めることが大切です。
③ 感覚統合療法
以下、著書を引用しながら、感覚統合療法からのアプローチを見ていきます。
・過程を変更することが難しい、感情のコントロールが難しい
前者(〝過程を変更することが難しい″)においては、身体活動を通して試行錯誤の練習をしていきながら、変化への〝気づき″を促していくことが有効です。
後者(〝感情のコントロールが難しい″)においては、感覚欲求を満たすこと、例えば、子どもが好む体を使った遊びを取り入れるなど、また、呼吸を整える方法を伝えるなどの取り組みが有効です。
以上、【発達障害児に見られる予定変更が苦手な場合への対応】SST・ペアトレ・感覚統合からのアプローチについて見てきました。
予定変更の苦手さは自閉症の人たちによく見られる特徴です。
大切なことは、この特徴を軽視せずにしっかりと対応方法を考えていく必要があるということです。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で関わる子どもたちにより良い支援を届けていけるように、理解と支援に関する知識を身につけて実践していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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岩坂英巳・宮崎義博(2021)「うまくいかない」ことが「うまくいく」に変わる!発達障害のある子どもがいきいきと輝く「かかわり方」と「工夫」.幻冬舎.