発達理解・発達支援・ブログ

人間の多様な理解と支援を目指して!

発達障害 重複

【発達障害は重複しやすいのか?】ASDとADHDの重複を通して考える

投稿日:2024年3月16日 更新日:

発達障害には、ASDやADHD、SLD、DCD、IDなどが含まれています。

著者は療育現場で様々な子どもたちを見てきていますが、診断名のある子やない子など、その状態は様々ですが、気になるのはメインの診断名がありながらも、他の障害特性が思いの他多く見られるといった実感があります。

中でも、ASDとADHDとの関連は非常に強いと感じています。

 

それでは、発達障害とは実際のところ重複しやすいのでしょうか?

そして、重複していた場合には、関わり方・配慮の点で何が重要となるのでしょうか?

 

そこで、今回は、発達障害は重複しやすいのか?といったテーマについて、臨床発達心理士である著者の意見も交えながら、ASDとADHDの重複を例に理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「加藤博之(2023)がんばりすぎない!発達障害の子ども支援.青弓社.」です。

 

 

スポンサーリンク

 

 

発達障害は重複しやすいのか?

以下、著書を引用しながら見ていきます。

臨床現場で子どもたちを見ていると、実際に純粋なASD、あるいはADHDという子どもはさほど多くないことがわかってきます。

 

それぞれの障害が重なり合っているケースが多いのです。

 

著者も同様に療育現場でASDとADHDの重複例の方が割合多いのではないかと感じています。

診断名はADHDのみであっても、背後にASDの特性も伺えるということがあります。

それも、一般的には、ADHD特性が強いと、多動性・衝動性の影響から周囲から見て分かりやすい特徴が子どもの頃に浮かび上がってくることが多くあります。

そして、年齢を重ね、多動性・衝動性の特性が落ち着いてくると、今度は背後に隠れていたASDの特性が対人関係上の難しさから目立ってくるケースがあります。

つまり、年齢が上がり、脳が成熟していく過程の中で、ある特性が目立ち、他の特性が隠れるということが実際にあるのだと思います。

もちろん、脳の成熟といった個人要因だけではなく、周囲の環境の調整・配慮といった環境要因の影響もあると思います。

そして、特にASDとADHDの重複例は、著書にもあるように実際の所とても多いことが事実としてありそうです。

 

 


それでは、こうした重複ケースにおいて、関わり方・配慮の点で何が重要となるのでしょうか?

次に、この点について見ていきます。

 

重複ケースへの関わり方・配慮点について

以下、著書を引用しながら見ていきます。

結局、発達障害の子どもの「障害の重複」は、まずはメインになる障害を見つけ、それをしっかりと把握することが大切です。そのうえで、付随する障害についても目を配る必要があります。

 

著書には、重複ケースへの対応方法として、第一に、メインとなる障害を見つけて把握すること、第二に、重複している(している可能性のある)他の障害にも目を向け対応することが大切だと記載されています。

関わり方・配慮事項として、まずは生活の中での困り感(本人や大人を含め)が発達特性からくるものかを見立てていく必要があります。

つまり、メインとなる発達特性が影響して、生活の中での生きづらさがどこに生じているのかを把握していくことが重要です。

そして、次に、重複している(可能性のある)発達特性についても、生活の中で困り感が生じていないかどうかを分析し、配慮すべきものがあれば実施していく必要があります。

 

著者は以前、ADHDと診断を受けた小学生児童を見たケースがあります。

このケースにおいて、ADHD特性を踏まえた配慮を実施していくことで、不適応状態が少しずつ改善していった一方で、どこか支援がうまく進んでいないような漠然とした不安感がありました。

今にして思えば、その子どもには、ASD特性も重複しており、ASD特性がむしろ年齢が増すごとに、メインとなる症状に変化していったのだと思います。

この事例をはじめとして、生活の中での困り感を特性と紐づけて分析することの大切さを学んだように思います。

そして、様々な発達障害は重複している可能性が高いといった認識を持って関わることが大切だと思うようになりました。

 

 


以上、【発達障害は重複しやすいのか?】ASDとADHDの重複を通して考えるについて見てきました。

今回は、ASDとADHDについて見てきました。

一方で、ADHD+DCD、ASD+ID、ASD+ADHD+SLDなど、様々な障害は重複しているケースが多いことが分かってきています。

大切なことは、様々な発達特性を深く理解すること、そして、生活の中での困り感を発達特性との関連性の中で分析する目を養っていくことだと思います。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で関わる子どもたちの困り感に寄り添いながら、重複例も含めた発達特性への理解を深めていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「ASDとADHDの併存について【症状の発現過程から考える】

 

加藤博之(2023)がんばりすぎない!発達障害の子ども支援.青弓社.


スポンサーリンク

-発達障害, 重複

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

【発達障害児の居場所支援について】学校生活を安心して過ごすために必要なこと

発達障害のある子どもが日々の生活を安心して過ごすためには〝居場所″が非常に大切です。 〝居場所″には、例えば、家庭や学校、放課後等デイサービスなど様々な〝活動拠点″があるかと思います。 そして、安心で …

【発達障害児への居場所支援について】放課後等デイサービスでの経験を通して考える

発達障害のある子どもたちに対して、安心できる〝居場所″を作り環境を整えていくこと、つまり、〝居場所支援″はとても大切なことです。 その理由には、発達障害児やその保護者にとって自ら〝居場所″を見つけるこ …

【力で押さえつけた発達障害児への反動への対応】信頼関係を回復するために必要なこと

発達障害児支援をしていると、時々、スタッフ(支援者・教員など)の対応が〝力で押さえつけた関わり″をしている様子を目にすることがあります。 もちろん、場面や状況によりやむを得ない場合もあります。 一方で …

【知的障害と発達障害は併存するのか?】療育経験を通して考える

医学界においては、知的障害も発達障害(神経発達症)の一部に含まれています。 一方で、日本において、法制度上、両者は別ものとされています。   関連記事:「【知的障害と発達障害の違いについて】 …

【発達障害児に見られる暴言・暴力への対応】SST・ペアトレ・感覚統合からのアプローチ

発達障害児は、発達特性などが影響して、生活の様々な所で困り感が生じる場合があります。 著者は長年、療育現場で発達障害児支援を行っていますが、個々の発達特性や発達段階等を踏まえたオーダーメイドな支援はと …