著者は長年、発達障害など発達に躓きのある子どもたちへの療育をしてきています。
療育する立場として、子どもたちの〝発達″を理解した上で、支援をしていく必要があります。
もちろん、〝発達″を理解することは、実践を通した関わりの中で少しずつ理解が深まるといった側面もあります。
それでは、そもそも発達を理解することは、どのような意味で大切なのでしょうか?
そこで、今回は、発達を理解することの大切さについて、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「加藤博之(2020)親も教師も悩み解決! こんなときどうする?発達が気になる子への指導・支援Q&A100.明治図書.」です。
発達を理解することの大切さについて
子どもの発達にはある程度の順序性・方向性があると考えられています。
例えば、〝社会性″の発達において、急に集団遊びが可能になるわけではなく、最初は大人との二者関係を基点として、そこから徐々に子ども同士の関係へと発展するなど順序性があります。
つまり、こうした基本的な〝発達″に関する理解(知識)がないと、子どもたちに対して無理な支援内容を計画してしまう危険性が出てきます。
そうなると、支援者側にも支援の効果を実感できないといった焦りや徒労感が生じることになってしまいます。
以上を踏まえて、発達を理解することの大切さについて、著書を引用しながら見ていきます。
まずは子どもの実態を把握し、今何をすべきか、それが終わったら次は何をすべきか、というように段階的に土台作りを行っていく必要があります。「できないこと」そのものにアプローチしても何も変わらないと考えることが大切です。そして、この土台作りこそが、発達を学ぶ意味そのものと考えられるのです。
著書の内容から、発達を理解するためにも、〝今″そして、〝次″といった時間軸で子どもの育ちを理解する視点が必要だと言えます。
〝今″〝できること″を着実に身に付けていくことを考えていくことが、〝発達″つまり〝土台作り″のためにも非常に大切だと言えます。
そして、〝今″という子どもの実態にあった支援を行うことで、〝次″のステップが次第に見えてくるという理解に繋がっていきます。
〝できないこと″〝現実的ではないこと″が支援内容になっていないかを判断するためにも、〝発達″の理解はとても大切です。
発達を理解する上で必要な主観性について
先にみた発達にはある程度の順序性・方向性があると書きました。
一方で、著者は関わり手の〝主観性″もまた支援において非常に重要だと感じています。
例えば、子どもがお絵描きに興味を持ち始めたというケースを考えて見ましょう。
お絵描きには、殴り描きから頭側人(頭・胴体・手足のある人)まで、ある程度の発達の順序性・方向性があると考えられています。
こうした客観的とも言える発達の視点には、子どもが〝何かを描きたい!″〝描いている時がとても楽しい!″といった心情は含まれていません。
支援において大切なことは、子どもが興味を持ち始めていることや、やってみたいことに対して、いかに関わり手がその心情を汲みとり、伸ばしていける関わりを持てるかどうかもまた大切だと思います。
つまり、子どもが〝好きなこと″〝やりたいこと″〝挑戦したいこと″などに対して、関わり手がその思いを汲みとり、それを〝できること″(土台を作ること)へと繋げていくことを支援することが重要だと思います。
子どもは〝今″できることが定着してくると(土台ができると)〝次″の段階に向けてまたハードル上げて挑戦しようとし始めます。
こうした一連の流れ作っていくためにも、発達を理解することはとても大切だと言えます。
また、こうした取り組みを通して、発達を深く理解していくことができるのだと思います。
以上、【発達を理解することの大切さ】発達障害児支援の現場を通して考えるについて見てきました。
色々と書いてはきましたが、著者自身まだまだ発達について分からないことが豊富にあると感じています。
それは、子どもたち一人ひとりの発達にバリエーションがあるからです。
大切なことは、無理な課題を提示せずに、しっかりとできることを定着させていくこと、そして、子どもの思いを汲みとりながら支援をしていくことにあると思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も発達を理解することを実際の療育現場での実践を踏まえて試行錯誤していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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加藤博之(2020)親も教師も悩み解決! こんなときどうする?発達が気になる子への指導・支援Q&A100.明治図書.