療育(発達支援)を長年行っていると、子どもたちの成長を実感する機会に多く出会うことがあります。
こうした出会いは、療育(発達支援)の〝成果″を感じる時でもあります。
もちろん、療育(発達支援)の成果は、複合的な要因が影響していることが多いため、特定の因果関係からは語ることができない難しさがあります。
一方で、〝○○の発達が大きく影響して○○の成果が出た可能性がある″〝○○の支援が大きく影響して○○の成果がでた可能性がある″といった仮説を立てることも可能だと言えます。
そして、長期的な子どもとの関わりを通して、この○○に当てはまるものが徐々に見えてくることがあります。
さらに、多くの事例を通して、仮説の精度を高めていくことが可能になっていきます。
それでは、療育(発達支援)の成果を感じる時として、どのような事例があるのでしょうか?
そこで、今回は、療育(発達支援)の成果について、臨床発達心理士である著者の経験談から、人への興味関心の広がりをキーワードに理解を深めていきたいと思います。
【療育(発達支援)の成果】人への興味関心の広がりをキーワードに考える
事例:小学校高学年のA君(当時)
著者はA君とは、小学校の6年間という学童期すべてにおいて携わることができた子どもです。
A君には、自閉症スペクトラム障害(ASD)の特性が顕著に見られていました。
低学年の頃のA君は、人への興味関心が弱く、一人でお絵描きや読書、工作などをして静かに過ごすことが多かった印象があります。
A君には、感覚過敏が顕著に見られ、中でも、〝聴覚過敏″、例えば、子どもの泣き声、工事音などに非常に敏感に反応することがありました。
また、〝こだわり″も顕著で、時間へのこだわり(○○時に必ず帰宅するなど)、順番へのこだわり(行き・帰りの送迎順など)が見られていました。
中でも、学校の行事など、いつもと違う活動が入ると、〝こだわり″の強度が強くなることが多い印象がありました。
このような状況において、著者は〝感覚過敏″と〝こだわり″への配慮を中心に支援を進めていきました。
そして、A君が中学年(4年生)以降になると、少しずつ〝対人意識″が高まってくる様子が見れてきました。
A君は、著者との関わりを欲してくるようになり、その後、著者との関わりを通して興味関心の世界を広げていきました。
著者は〝環境調整″の中でも、〝人的環境″の影響の強さをA君との関わりを通して学ぶことができたように思います。
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それでは、次に、人への興味関心の広がりをキーワードに支援の経過をお伝えしていきます。
人への興味関心の広がりへの支援から見たA君の変化
自閉症スペクトラム障害(ASD)の子どもの特徴として、興味関心の幅の狭さが特徴としてあります。
もちろん、物に対する興味関心の狭さ以上に、人への関心の乏しさもまたあります。
そのため、著者はA君が興味関心を向けている世界を探りながら、共感的に関わる姿勢を継続してきました。
A君の興味関心の世界はとても独特ではありましたが、その独特さを理解していくことが、A君と繋がる扉だと考えていました。
こうした姿勢を見せていくと、A君は徐々に著者の反応を気にするようになっていきました。
高学年になる頃には、著者と興味関心の世界を共有する時間をとても楽しみにしてくる様子が増えてきました。
また、著者が他児集団と遊んでいる集団遊びにも興味関心を寄せる姿も出てきました。
著者を基点とした集団遊びを通して、他児と関わる様子も少なからず見られるようになっていきました。
さらに、A君は著者と共有したい内容を事前に調べておいて、調べ終えると著者を呼び、著者が大笑いしてリアクションを返すと、とても嬉しそうに次々と話を展開していく様子が見られました。
逆に著者がリアクションした話の内容をしっかりと覚えており、次の話に展開していくなど、以前は会話が一方的な場合が多かった状態が、会話の双方性が多く見られるようになっていきました。
これは、日常生活において、様々なスタッフとの会話のやり取りにおいても、般化される様子が出てきた印象もあります。
また、A君と話し続けた会話の内容は、ある一つの物語として積み重ってきた感じもあります。
つまり、日々の興味関心の共有経験はA君にとって(もちろん、著者にとっても)物語を作り、物語は徐々にアップデートされていく楽しさがあるのだと言えます。
A君との興味関心の世界を通して繋がりを強く感じることができるようになった著者は、例え興味関心の世界が非常に狭いものであったとしても、そこから世界を広げていくことが可能である、そして、そこには人の存在(人への興味関心と興味関心を分かち合える人の存在)がとても重要であることを学ぶことができたように思います。
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以上、【療育(発達支援)の成果】人への興味関心の広がりをキーワードに考えるについて見てきました。
今回見てきた事例を通して、改めて、療育は日々の活動の積み重ねなのだと思います。
子どもの発達は、時に後退している姿を見せながらも、安全・安心感のある環境の中で、長い期間をかけて着実に成長していくだと思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も子どもたちの興味関心の世界に寄り添い続ける存在でありたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。