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【療育(発達支援)で大切なこと】〝実体験″が持つ重要性

投稿日:2024年5月23日 更新日:

著者は療育(発達支援)の現場で、発達障害など発達に躓きのある子どもたちと関わっています。

これまで、未就学児から小学生を対象に様々な活動を通して共に楽しく過ごしてきています。

活動を通して感じることは、〝実体験″が持つ重要性です。

 

それでは、なぜ、子どもたちには実際の体験が大切だと言えるのでしょうか?

 

そこで、今回は、療育(発達支援)で大切なことについて、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、〝実体験″が持つ重要性について理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「養老孟司(2022)子どもが心配 人として大事な三つの力.PHP新書.」です。

 

 

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〝実体験″が持つ重要性について

以下、著書を引用しながら見ていきます。

実体験は、認知世界を広げるうえで重要です。

 

私たちは実際の世界と、そこで起きているすべてのことを体験することはできないからです。人間の脳は、実体験のなかの特徴的なものを抽出して、それをもとに外の世界を認知しますから、実体験が多ければ多いほど認知世界も広がります。

 

バーチャル体験と決定的に違うのは、意識下にまで多くの〝生の情報″が入り、脳神経を活性化させることです。

 

脳が柔らかな幼少期は特に、自然のなかに身を置き、同時にたくさんの人と接して、できるだけ多くの実体験をさせることが大事なのです。

 

著書の内容から、子どもの頃の〝実体験″の量は〝認知世界″を広げる上でとても重要だと記載されています。

人間は〝実体験″の中から特徴的な情報を抽出して、〝認知世界″を広げていきます。

バーチャルな体験と異なるものとして、〝無意識″にまで〝生の情報″が残るため、例えば、自然と触れ合う体験、様々な人と関わる経験がとても大切だと考えられています。

 

 

著者のコメント

著者自身の例で恐縮ですが、著者はこれまで様々な〝生の情報″に触れる機会がありました。

例えば、子どもの頃に空き地でサッカー、野球ごっこ、戦いごっこ、虫取や缶蹴り、かくれんぼ、追いかけっこ、自宅内での工作などの経験は今の療育にとても生きていると感じています。

それは、自分の身体に〝生の情報″が残っているため、体に身を任せることで自然と子どもたちに遊びを提供できるところが大いにあると感じるからです。

また、かつて自分が〝実体験″を通して行った遊びであれば、〝○○ごっこ(遊び)″と聞けば、頭の中で〝イメージ″することができます。

さらに、その遊びの量・質が深いものであれば、よりクリアに〝イメージ″できます。

スポーツ選手などは、実際の〝生の体験″が豊富にあるため、目を瞑った状態や映像を通した中でも仮想の自分がリアルに動いている状態をイメージできると思います。

これは、〝実体験″の量が豊富にあるからだと言えます。

このように、自分の体を通して様々な〝生の情報″を幼少期から取り込むことは、その後の発達において、〝イメージ″する力、〝創造″する力、〝共感″する力などの土台を形成するものに繋がるのだと思います。

 


著者の療育では子どもたちと様々な遊びを行っています。

ごっこ遊び″では、イメージする力、相手に合わせる力、が必要です。

外遊び″では、五感から〝生の情報″を取り込むなど、その後の発達において基盤となる力を見つけるために必要です。

体を使った遊び″では、自分の体の状態をイメージして思い通りに動かすことに繋がっていきます。

様々な他者と関わること″は、自分と気の合う人もいれば、そりが合わない人もいるなど、多様性を理解する上でも大切です。

 

これらの遊びや人との関わりは、療育現場では日常的に行われているものですが、大切なことは、自然と触れ合うこと、様々な他者と関わることを通して、〝認知世界″を広げていくことにあります。

そして、〝認知世界″を広げていく中で、自分の思い通りにいかないこと、予測できないこと、よく分からないことがあること、などを〝身体知″として学習していくことが大切だと思います。

 

 


以上、【療育(発達支援)で大切なこと】〝実体験″が持つ重要性について見てきました。

バーチャルの世界は人間が作ったものである以上、予測可能な部分が多くあると思います。

もちろん、今後のAIの進歩により、人間の予測をはるかに上回る世界へと拡張していく可能性もあります。

一方で、バーチャルの世界は、人間の視覚・聴覚といった高次化された感覚情報に依存した情報入力など偏りがあります。

一方で、自然との触れ合い、人との関わりなどは、様々な感覚情報をフルに活用し、〝無意識″にまでその情報を取り込むことできます。

そのため、自分の〝認知世界″を広げていくためにも、〝生の情報″に接することが大切です。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も子どもたちとの〝実体験″を大切にした関わりを通して、子どもたちのその後の発達が豊かになるように活動内容を工夫していきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「【モンテッソーリから見た〝運動と知性″の関係】〝繰り返す″行動の意味について考える

関連記事:「感覚統合で大切な運動企画について【ボディイメージとの関連から考える】

 

 

養老孟司(2022)子どもが心配 人として大事な三つの力.PHP新書.

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-大切なこと, 療育

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