著者は長年、発達障害など発達に躓きのある子どもたちへの療育をしてきています。
多くの療育経験を通して、支援者として必要な〝専門性″について考える機会があります。
それでは、療育にはどのような専門性が必要になるのでしょうか?
そこで、今回は、療育で必要な6つの専門性について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「加藤博之(2020)親も教師も悩み解決! こんなときどうする?発達が気になる子への指導・支援Q&A100.明治図書.」です。
療育で必要な6つの専門性について
著書には、発達が気になる子どもたちと接する教師の専門性について、6つの行動面からその特徴が記載されています。
6つの行動特徴(専門性)は、教師に限らず、療育に携わる支援者にも適応できると言えます。
そのため、次に、著書に記載のある6つの専門性を引用しながら見ていきます。
発達や障害を理解する力を持っている
子どもの心をつかみ、惹きつける力を持っている
子どもに合わせた教材や活動を次々に作り出せる
活動場面で主導権を握っている
情緒的に安定し、臨機応変の力を持っている
保護者とよい関係を築けている
以上が6つの専門性です。
それでは、次に、具体的に見ていきます。
1.発達や障害を理解する力を持っている
著書には、1の専門性は専門家の資質として最も大切といった記載があります。
発達障害など発達に躓きのある子どもたちに関わる支援者は、発達や発達障害への知識はとても重要です。
著者も療育現場で1の専門性を常に磨いていくことに重きを置いています。
1の専門性を磨くことで、個々の子どもの状態・発達に応じて、背景要因も含めてどのような支援が必要なのかを考える手立てが見えてきます。
1の専門性が不足すると、過度な課題(子どもに合わないもの)を子どもに提示してしまったり、気になる行動を叱責する場面が多くなる危険性があると感じています。
2.子どもの心をつかみ、惹きつける力を持っている
2の専門性は、子どもとの関係構築において、非常に大切な素養となります。
子どもから信頼をおかれている支援者は、一人ひとりの子どもの心にしっかりと目を向け、絶妙な距離感と子どもの発信に対してタイミングよく応答するなどの特徴を有しています。
著者は、2の専門性を磨くために、子どもたちの安全・安心の基地となっているかを意識する機会が多くあります。
子どもにとって安全・安心の基地となっている支援者は、子どもに向ける眼差しがとても暖かく、ユーモアを持って接する部分も多くあると感じています。
3.子どもに合わせた教材や活動を次々に作り出せる
一人ひとりの子どもの発達や興味関心に応じて、教材や活動を発案していける実践力もまたとても必要です。
著者は3の専門性を磨くことは、日々の実践とその後の振り返り、そして、再チャレンジの連続にあると思っています。
こうした過程を通して、自ら遊びを考案する引き出しの数を増やしていくこともまた、とても大切な専門性の資質だと感じています。
4.活動場面で主導権を握っている
子どもの思いに寄り添い受容的に関わることも大切ですが、その一方で、子どもを引っ張っていくリーダーシップもまた必要です。
4の専門性の資質が高い支援者は、受容的な関わり方と能動的な関わり方の双方をうまくとっているケースが多いと言えます。
著者も日々の子どもたちとの関わりの中で、○○のように関わってみるといいかもしれない!○○の遊びに挑戦してみよう!などと、主導権を握って遊びを進めることもよくあります。
こうした周囲を引っ張るリーダーシップ性も子どもの力を伸ばしていくためにとても大切な専門性だと感じています。
5.情緒的に安定し、臨機応変の力を持っている
子どもに関わる支援者の気持ちが不安定だと、子どもはその心理状態を敏感にキャッチするため、どこか安心感を得ることができない部分が出てきます。
5の専門性の資質が高い支援者は、常に変わらない気持ちの安定感と、子どもの状態に応じて臨機応変に関わり方を変える力を有していると言えます。
著者も日々の自分の気持ちの状態が子どもに大きく影響していくのだと感じた経験があります。
子どもは支援者や支援者間が作り出すその場の雰囲気に安心感を求めています。
また、子どもの状態によって既存の枠を超えて臨機応変に接することで、子どもとの関係性はよりポジティブなものへと発展していくことも実感としてあります。
6.保護者とよい関係を築けている
保護者とのよい関係を築いていくことも専門性の資質としてとても大切です。
6の専門性を磨いていくためには、保護者の気持ちにより沿いながらも、子どものよい育ちに貢献していくための情報を提供していく必要があります。
著者は保護者との関係は子どもとの関係と同じくらい大切だと考えています。
そして、保護者との関係がよい方向へと進むことは、子どもの支援を前進させていく上で必要不可欠なものであると感じています。
以上、【療育で必要な6つの専門性について】療育経験を通して考えるについて見てきました。
今回取り上げたもの以外にも療育で必要な専門性はあるかと思います。
大切なことは、自らの実践を常に見つめ直し、専門性の技量を高めていこうとする姿勢だと思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で関わる子どもたちに良い支援を届けていけるように、自らの専門性の質を高めていくことを大切にしていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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加藤博之(2020)親も教師も悩み解決! こんなときどうする?発達が気になる子への指導・支援Q&A100.明治図書.