〝愛着(アタッチメント)″とは、〝特定の養育者との情緒的な絆″のことを指します。
一般的に言えば、愛着関係の中心は〝母親″をイメージされる方が多いのではないかと思います。
一方で、最近の愛着研究によれば、愛着の発達は様々な他者との関係性が大切だと考えられるようになってきています。
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中でも、母子関係以外に繋がりが強固になると考えられるのが〝父親″の存在です。
それでは、父親との愛着関係にはどのような特徴があると考えられているのでしょうか?
そこで、今回は、父親との愛着関係の特徴について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「篠原郁子(2024)子どものこころは大人と育つ:アタッチメント理論とメンタライジング.光文社新書.」です。
父親との愛着関係の特徴について
以下、著書を引用しながら見ていきます。
父親との安定したアタッチメントは、子どもの発達に対して肯定的な関連や影響を持ちます。
特に、子どもの自分に対する肯定的な感情、お友達との友好的な関係、行動面や情緒面に現れる問題の少なさ、より大きくなったときの社会的適応について、父子間アタッチメント関係が影響していることが報告されています。
著書の内容から、〝父親″との安定した〝愛着関係″の特徴として、自己肯定感、仲間との繋がり、行動・情緒の制御、後の社会適応など、様々な面でポジティブな影響があると考えられています。
著者は以前、〝岡田尊司″さんの〝父という病″を読み、〝父親″という存在感は、子どもが乳幼児期の頃など幼い時期以上に、小学校高学年頃からより存在感が顕著(役割が重要になってくる)になってくるといった内容を読んだ記憶があります。
つまり、幼い頃は、主に〝母子関係″が中心であることから〝母親″の存在が顕著であるが、その後、友人関係など学校への適応、社会への適応などより広い世界へと子どもを導いていくためには、社会経験の多い〝父親″の存在がより必要なのではないかということです。
もちろん、ここ最近は、女性の社会進出が増えていることで〝母親″の存在の意味も昔と比べて変化してきているように思います。
また、子育てに力を注ぐ〝父親″も増えていることもあり、これまで多くの〝母親″が担っていた育児を〝父親″が担うということも増えてきているところもあります。
そのため、今後の研究によっては、これまでとは異なる研究結果が出てくる可能性もあると思います。
また、〝スキンシップ″に関する研究では、〝父親″はダイナミックな関わりを〝母親″以上に行うこともあり、こうした関わり方が、その後の社会に向き合う動機を引き出しているという研究知見もあります。
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ところで、〝父親″との愛着が安定しており、逆に〝母親″との愛着は不安定などそれぞれの親に対して別の愛着関係を持っているケースについてはどのような見方ができるのでしょうか?
引き続き著書を引用しながら見ていきます。
なお、先述の両親双方との関係を検討した研究からは、父親、母親の少なくともどちらか一方との間に安定したアタッチメント関係があれば、その子どもが児童期に示す行動上の問題が少ないことが示されています。
著書の内容から、〝父親″ないし〝母親″のどちから一方でも、安定した愛着関係があれば、子どもが児童期に示す問題行動が少ないといったことが記載されています。
つまり、両親双方に対して、それぞれ独自の愛着関係を持っているケースは存在しており(著書にある研究内容では約4割とあります)、どちらか一方でも安定した愛着関係を持っていることで後の発達上の問題は少なくなるということです。
それだけ、子どもは重要な他者との間に安定した愛着関係を持っていることが大切であると言えます。
以上、【父親との愛着関係の特徴について】療育経験を通して考えるについて見てきました。
〝子どもは父親の背中を見て育つ″とはよく聞く言葉です。
その一方で、最近では母親の存在感が増し、父親も育児をする割合が増えているなど、父母の役割にも変化が出てきているように思います。
大切なことは、父母に対して、子どもはそれぞれ異なる愛着関係を築いていくということであり、これまでとは異なる育児スタイルや労働スタイルを考慮した場合においても、親という存在が子どもにとって安心できる存在になっているかどうかが変わらず大切なことだと思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も子どもは様々な対人関係の中で愛着関係を発展させていくということを意識して、療育現場で関わる子どもたちに向き合っていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
篠原郁子(2024)子どものこころは大人と育つ:アタッチメント理論とメンタライジング.光文社新書.