〝愛着(アタッチメント)″とは、〝特定の養育者との情緒的な絆″のことを指します。
子どもは養育者との愛着関係を基盤として、その後の対人関係を発展させていきます。
一方で、幼少期の愛着形成がうまくいかないことで、〝愛着障害″に繋がる危険性があります。
愛着障害のある子どもへの支援として大切なものとして〝感情学習″があります。
関連記事:「【愛着形成で大切な感情学習について】感情発達のプロセスを通して考える」
それでは、愛着障害のある子どもが感情学習を行っていく上で、どのような支援方法が有効だと考えられているのでしょうか?
そこで、今回は、愛着障害の支援で大切な感情のラベリングについて、4つのポイントを通して理解を深めていきたいと思いいます。
今回参照する資料は「米澤好史(2022)愛着障害は何歳からでも必ず修復できる.合同出版.」です。
【愛着障害の支援で大切な感情のラベリングについて】4つのポイントを通して考える
以下、著書を引用しながら見ていきます。
キーパーソンと1対1で一緒の活動をすれば、「同じことをした」(行動)と同じことが起こった(認知)を確認し(行動と認知の共有)、そこで「お互い同じ気持ちになった」(感情)ことを確認できる状況が生じます。この行動・認知・感情の連合学習(行動と認知と感情をくっつける活動)が感情学習です。
著書には、〝感情学習″とは、キーパーソンとの1対1での活動を通して、行動・認知・感情をくっつける連合学習だと記載されています。
愛着障害の支援には、キーパーソンといった特定の他者を基盤としたアプローチが必須だと〝愛情の器モデル″では述べられています。
関連記事:「愛着障害への支援:「愛情の器」モデルを例に」
その中で、〝感情のラベリング″支援といった感情学習が有効だと考えられています。
そして、〝感情のラベリング″支援を進めていくにあたり、4つのポイントがあるとしています。
以下、〝4つのポイント″について具体的に見ていきます。
1.一緒に同じ活動を行う
以下、著書を引用しながら見ていきます。
行動と認知を一緒にするには、同じ作業をしないといけません。
おすすめは、工作(ものつくり)、お絵かき、草むしり、料理など、同じ方向を向いて、一緒の作業をすることです。
1つ目のポイントが〝一緒に同じ活動を行う″があります。
同じ作業の例は、子どもが興味のある活動、楽しく行えるものであり、ポイントは同じ方向を向いて取り組めるものが良いとされています。
同じ活動を通して、行動と認知とが関連づくことが大切です。
一方で、勉強を教えることや対戦型(勝ち負けが伴う)の遊びは、同じ方向に向きずらくなってしまうためお勧めできないとされています。
2.同じ活動を通して生じる感情を確認する
以下、著書を引用しながら見ていきます。
「感情は放置したり、問うてはいけない!感情は(支援者が)言い当てるもの、教えるもの」だと理解することが、ポイントです。
2つ目のポイントが〝同じ活動を通して生じる感情を確認する″があります。
つまり、一緒の活動を通して、行動と認知とが関連付き、それに今度は言葉での言い当てを通して、感情を関連付けるといった作業になります。
間違っても〝どんな気持ちかな?″と問うたり、せっかく楽しく活動している状態を放置せずに、今子どもに生じている感情を言い当てる(例:〇〇して、楽しいね!など)ことが大切だと言えます。
今の感情を問われることで、不快な感情が湧き、大人との関係が悪化することがよくあるため、あくまでも関係性の構築初期においては、このような対応はしない方が良いとされています。
また、関係性が深まってくるに伴い、それまで不快に思っていた感情の言い当ても、徐々に受け入れられるようになっていくと考えられています。
3.行動・認知・感情を繋げる接着剤を用意する
以下、著書を引用しながら見ていきます。
誰と一緒だとその気持ちになるかということを確認しない限り、行動・認知・感情はつながらない、絆などできないのです。
3つ目のポイントが〝行動・認知・感情を繋げる接着剤を用意する″があります。
接着剤とは、〝誰(人)″といったものであり、〝誰″と一緒だからこそ楽しい気持ちになれるといったことを、行動・認知・感情にくっつける働きだと言えます。
例えば、工作を一緒にしていて、子どもができた作品を見て楽しい気分が生じたと感じた際に〝○○さんと一緒に作ったから楽しいね!″と、ラベリングするなどがあります。
4.常に同じ感情反応を示す
以下、著書を引用しながら見ていきます。
同じ人がいつも一緒にいても、こどもから見てその人の振る舞いがその都度違って見えたら、効果はでません。
同じ活動をしたときは、いつも同じ感情反応をすることを心がけないといけません。
4つ目のポイントが〝常に同じ感情反応を示す″があります。
愛着障害のある子どもにとって、愛着対象となる存在の感情反応に変動があると不安定になります。
例えば、工作で作った作品を最初に見せた時は〝すごい!″と驚いた反応を見せたのに対して、次に見せた時は〝へー″などと、ほぼ無反応な反応を見せるなどがあります。
感情反応は可能な限り変動が少なく、安定した反応を見せることが大切だと言えます。
以上、【愛着障害の支援で大切な感情のラベリングについて】4つのポイントを通して考えるについて見てきました。
感情のラベリング支援には、今回見てきたように様々な段階やポイントがあると言えます。
これを可能にするためには、キーパーソンの選定やチームでの連携がとても大切だと言えます。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も愛着障害への理解と対応についての学びを深めていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
愛着・愛着障害に関するお勧め関連書籍の紹介
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米澤好史(2022)愛着障害は何歳からでも必ず修復できる.合同出版.