〝小児期逆境体験(Adverse Childhood Experience:ACE)″とは、小児期や思春期に経験した子ども虐待および機能不全、家族内における逆境的境遇のことを指します。
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子どもが〝小児期逆境体験″を経験すると、その後の発達において多大な悪影響が生じると考えられています。
それでは、小児期逆境体験は後の発達において、どのようなリスクと関連性があると考えられているのでしょうか?
そこで、今回は、小児期逆境体験はその後の発達にどう影響するのかについて、リスク要因との関連性について理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「てんねんDr.(2025)子どもの発達障害がよくわかる本 これ1冊で理解もサポートも!SB Creative.」です。
【小児期逆境体験はその後の発達にどう影響するのか?】リスク要因について理解を深める
著書には、生後18年間のうちに小児期逆境体験があったケースとなかったケースとを比較した調査結果が載っています(以下、著書引用)。
高度な肥満(BMI≧35) 1.6倍
喫煙 2.2倍
休日に体を動かさない 1.3倍
年に2週間以上うつ気分あり 4.6倍
自殺企図 12.2倍
自分がアルコール依存だと思う 7.4倍
薬物使用 4.7倍
薬物注射 10.3倍
性感染症 2.5倍
50人以上と性交渉あり 3.2倍
心筋梗塞 2.2倍
何らかの癌 1.9倍
脳卒中 2.4倍
慢性気管支炎または肺気膿 3.9倍
糖尿病 1.6倍
以上、著書には、〝小児期逆境体験″の経験の有無により、その後の発達において様々なリスクが上昇する可能性があるといった調査結果が出ています。
〝小児期逆境体験″は、愛着の問題とも密接に関連しているため、生涯の対人関係の発達に様々なネガティブな影響を及ぼし、そして、心身の様々なリスク要因とも関連性が生じると言えます。
小児期逆境体験への対策
小児期逆境体験への対策には〝早期発見″〝早期支援″が重要だと言えます。
小児期逆境体験が起こる可能性がある場合、まずは、その状況が起きないような予防策を講じていくことが必要です。
もちろん、誰が加害者・被害者になる可能性があるかで、対応方法にも違いがでてくると言えます。
例えば、家庭内の父親が加害者である場合、父親とその他の家族を離す必要が出てきます。
家庭内における父親の役割も当然重要ではありますが、必ず父親の存在が必要かと言えばそうではありません。
むしろ、小児期逆境体験のリスクとなる父親の存在はいない方が好ましいと言えます。
それは、後の子どもの発達に多大なダメージをもたらすことの影響の方が明らかに大きいからです。
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一方で、家庭内の母親が加害者となる場合、子どもの愛着の発達も踏まえて非常にリスクが高くなると言えます。
信頼関係の土台は、母親との関係性が基盤となるケースが多いからです。
一方で、小児期逆境体験のリスクとなる母親の場合においても、子どもとの距離感をどのようにとっていくのかを検討する必要があります。
また、母親へのサポートも必要になっていきます(ペアトレ、レスパイト、カウンセリングなど)。
愛着理論で言えば、幼少期の信頼できる愛着形成は、何も母親を中心とした養育者に限定しておらず、その他の養育者であっても、安定した愛着形成は可能だと考えられています。
また、最近では、特定の養育者との関わりも含めて、子どもの事を愛情深く接してくれるネットワークの構築も重要だと考えられています。
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最後に、被害者側がヘルプサイン・ヘルプ信号を出せるかどうかもとても大切な視点です。
小児期逆境体験が繰り返され、その状況を我慢し続けることで、様々なリスクの発生率を高めてしまうからです。
傍に、相談できる人や相談機関との繋がりを形成しておくことがとても大切になってきます。
以上、【小児期逆境体験はその後の発達にどう影響するのか?】リスク要因との関連性について理解を深めるについて見てきました。
小児期逆境体験は、子どもの後の発達において様々なリスクを高めることに繋がっていきます。
また、対応策は、子どもを取り巻く状況によって取るべき方法は異なってくると言えますが、必須事項としては、〝早期発見″〝早期支援″にあります。
著者は、これまでの療育経験の中で、小児期逆境体験があった子ども、また、その可能性があった子どもと関わる機会がありましたが、長期化することで様々なリスクが浮上してくることだけは回避することが必須だと感じています。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育実践の中で、小児期逆境体験への理解と対応策についても学びを深めていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
てんねんDr.(2025)子どもの発達障害がよくわかる本 これ1冊で理解もサポートも!SB Creative.