幼少期の子どもの発達において特に大切なことは〝安定した愛着形成″です。
愛着関係が良好に築かれることで、子どもは大人に向けて、心の安心感を保持しながら外の世界に向かっていこうとする意欲が湧いてきます。
一方で、〝安定した愛着形成″を築くことが難しいケースに、〝小児期逆境体験″があります。
それでは、小児期逆境体験とはどのような内容を指すのでしょうか?
そこで、今回は、小児期逆境体験とは何かについて、臨床発達心理士である著者の発達障害児支援の経験を踏まえて理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「てんねんDr.(2025)子どもの発達障害がよくわかる本 これ1冊で理解もサポートも!SB Creative.」です。
小児期逆境体験とは何か?
以下、著書を引用しながら見ていきます。
小児期逆境体験は、小児期や思春期に経験した子ども虐待および機能不全、家族内における逆境的境遇のことです。
親による侮辱、暴力・暴言、性的虐待、ネグレクトのほか、家族の誰からも大事にされていない、家族同士の仲が悪い、誰にも守ってもらえないと感じた経験などが、精神的または身体的ストレスの原因として挙げられています。
発達障害の子どもの場合は、小児期逆境体験もしくはそれに準じた状態によるリスクが特に大きいのです。
著書によれば、小児期逆境体験(Adverse Childhood Experience:ACE)とは、小児期から思春期の時期に、虐待・機能不全、家族内での逆境的境遇の経験のことを指します。
ここで大切なことは、子どもが親など大切な人たちから安心感・安全感を得ることが困難な状況のため、精神的・身体的ストレスが生じてしまうことです。
そして、様々な理由はあるにせよ発達障害児は小児期逆境体験のリスクが高いと言われています。
著者の経験談
著者の療育現場で関わり・対応が非常に困難なケースが〝小児期逆境体験″を持つ子どもたちだと感じています。
中でも、虐待経験はとても長く子どもの心に大きなダメージを与えてしまいます。
もちろん、〝小児期逆境体験″にも、内容・程度の差があるため、それを受けた子どもの状態像も多様だと言えます。
一方で、情緒が安定しない、気分の変動が激しい、やる気・意欲がない、パニック・癇癪が多い、他害・暴言などの攻撃性が高いといった共通点も多く見られます。
発達障害児に〝小児期逆境体験″が重なることで、〝二次障害″へのリスクが格段に高まってしまいます。
この場合の〝二次障害″とは〝愛着障害″のことを指します。
そして、こうしたケースにおいて、発達障害児に特化した支援を継続しても効果が見られないことが多くあります。
著者は、もともと発達障害を抱える子どもへの支援(発達特性を中心とした支援)を継続しても、思うような効果が得られなかったことがありました。
それは、〝小児期逆境体験″による〝愛着障害″への支援がうまく行われていなかったためだと思います。
一方で、〝愛着障害″への支援を優先的に行うことで、時間は非常にかかりますが、効果は少しずつ得られるものだと思います。
〝愛着障害″への支援で大切なことは、子どもにとっての〝安心基地″〝安全基地″を再構築することだと言えます。
〝安心・安全の基地″は、親(養育者)の思い(関わり手の視点から愛情深く子どもに接している状態)以上に、子どもが親(養育者)の思いをどのように感じているかどうかがカギになると考えられています。
著者の実感としても、子どもが求める気持ちに、うまく関わり手が応答(敏感性・洞察性を持って)していくことで、子どもにとっての〝安心・安全の基地″が徐々に構築されていくように思います。
また、〝小児期逆境体験″のリスクが高い子どもへの予防的な視点もとても大切だと言えます。
まだ、起きてはいないが、いずれ起こる可能性が高い子どもに対して、早期に対応策を講じていくこともまたとても重要なことだと感じています。
そのためのキーワードが、家族支援並びにアタッチメントネットワークだと感じています。
家族支援は文字通り、家族を支えていくことであり(レスパイトやペアトレなど)、アタッチメントネットワークとは、様々な人たちが子どもに愛情を持って共に支えていくといったネットワーク的視点だと言えます。
一方で、〝愛着障害″など症状が重篤な場合には、特定の養育者との関係性から出発することが必要です。
このように、〝小児期逆境体験″に関する様々な理解や支援の視点を持つことが、長期的な支援の効果に繋げていくための指針になるのだと感じています。
以上、【小児期逆境体験とは何か?】発達障害児支援の経験を踏まえて考えるについて見てきました。
小児期逆境体験は子どもにとっての最悪の事態だと言えます。
そのため、こうした状況への早期発見・早期支援は必須事項だと言えます。。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育実践を通して、二次障害への予防・支援の方法を試行錯誤していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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