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【実行機能障害仮説とは何か?】自閉症の特徴について考える

投稿日:2023年5月22日 更新日:

自閉症(自閉症スペクトラム障害:ASD)とは、対人コミュニケーションの困難さとこだわり行動を主な特徴とする発達障害です。

自閉症には様々な行動面や心理面の特徴があると考えられています。

中でも、実行機能の弱さが自閉症の特徴として様々な書籍等で取り上げられています。

 

それでは、実行機能とはそもそもどのような機能のことであり、そして、自閉症の特徴とどのような関連があるのでしょうか?

 

そこで、今回は、実行機能障害仮説とは何かについて、自閉症の特徴との関連について考えを深めていきたいと思います。

 

 

今回、参照する資料は「サイモン・バロン=コーエン(著)水野薫・鳥居深雪・岡田智(訳)(2011)自閉症スペクトラム入門 脳・心理から教育・治療までの最新知識.中央法規.」です。

 

 

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実行機能とは何か?

以下、著書を引用しながら見ていきます。

実行機能とは、活動をコントロールする能力と定義されている。活動とは、「運動(すなわち、動作)」「注意」と「思考」である。活動のコントロールは、プランを創造したり実行したりすること、必要に応じて注意を留めたり切り替えたりすることを含む。

 

著書の内容から、〝実行機能″とは、活動をコントロールする能力と定義されています。

また、別な書籍では、〝やり遂げる力″とも言われています。

〝実行機能″の下位要素として主に、〝抑制″〝更新″〝シフト″の3つの要素があると考えられています。

私たちは、何か目標を立てて遂行するためには、目標以外の要素を〝抑制″し、目標に必要な情報を〝更新″し、そして、目標に向けて様々な課題への取り組みを柔軟に〝シフト″する必要があります。

また、別の書籍では、〝実行機能″の下位要素として、〝プランニング″〝ワーキングメモリ″〝セルフモニタリング″〝自己抑制″〝注意持続″〝シフティング″の6つの要素を取り上げているものもあります。

 

詳細は、以下の記事を参照して頂ければと思います。

関連記事:「自閉症の実行機能について:実行機能の3つの要素と療育での困難事例を通して考える

関連記事:「実行機能とは何か?-療育現場での活用方法について考える-

 


冒頭に書きましたが、自閉症の特徴の一つとして、実行機能の弱さがあります。

そのため、専門書籍などでは、自閉症の行動・心理面の特徴として〝実行機能障害仮説″が上げられています。

以下、〝実行機能障害仮説″について見ていきます。

 

 

実行機能障害仮説とは何か?自閉症の特徴について

以下、著書を引用しながら見ていきます。

自閉症スペクトラムの中心的な特徴は、活動を計画すること(実行の調整)と注意の切り替えの能力障害によって最もよく説明される。

 

著書の内容では、自閉症の実行機能の弱さの特徴として、〝プランの実行″と〝注意の切り替え″の二つを取り上げています。

〝プランの実行″とは、段取りを立てて実行する力のことを言います。

〝注意の切り替え″とは、切り替える力のことを言います。

例えば、前者が今日やるべきタスクの順番を決めタスクをこなしていく力であるのに対して、後者は柔軟にタスクを切り替える力と言えます。

自閉症の人たちは、段取りを立てて実行することが苦手、そして、今取り組んでいることから他のものへと注意を切り替えることが苦手だと言えます。

 

著書の中では、〝プランの実行″と〝注意の切り替え″がうまくできないと以下の状態になると記載されています(以下、著書引用)。

行動面では、新しいプランや見通しを柔軟にこなすことができずに同じところを突っつき回す状態になってしまうということで、自閉症の常同行動、つまり「反復」や「保続」が説明できる。

 

著書の内容から、実行機能の弱さといった特徴(〝プランの実行″と〝注意の切り替え″の弱さ)は、同じ行動を繰り返すといった自閉症の特徴である〝常同行動″の説明を可能にすると記載されています。

確かに、見通しを立て遂行する力と注意の切り替えが弱いと、行動を修正することが困難となり、同じ行動を繰り返すことに繋がるという説明は納得のいくものであると考えられます。

一方で、書籍には実行機能障害仮説から自閉症の特徴を全て説明することは難しいとも記載されています。

つまり、自閉症の特徴を説明するためには、他の様々な要因(仮説)も想定されるということです。

 

 


以上、【実行機能障害仮説とは何か?】自閉症の特徴について考えるについて見てきました。

実行機能の弱さは、自閉症の他にも、ADHDや知的障害などにも見られる特徴です。

その中で、自閉症の特徴として、実行機能の中で言う〝プランの実行″〝注意の切り替え″の弱さがあると考えられています。

最後に自閉症という特徴を理解するためには、実行機能障害仮説以外の要因についても同時に理解を深めていくことが大切だと考えます。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も自閉症の特徴を理解していけるように、実行機能を含めた他の要因についても学びを深めていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

サイモン・バロン=コーエン(著)水野薫・鳥居深雪・岡田智(訳)(2011)自閉症スペクトラム入門 脳・心理から教育・治療までの最新知識.中央法規.

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-実行機能, 自閉症

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