〝実行機能″とは、〝遂行能力″や〝やり遂げる力″とも言われています。
〝実行機能″には、思考と感情の2つの側面があると考えられています。
〝思考の実行機能″とは、目標にむけて遂行中な(遂行しようとしている)ことに対して、ついつい目がそれてしまう習慣を制御する機能のことを言います。
〝感情の実行機能″とは、非常に本能的な衝動を制御する機能のことを言います。
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それでは、思考の実行機能と感情の実行機能はどのような発達過程を辿ると考えられているのでしょうか?
そこで、今回は、実行機能の発達について、思考と感情の発達過程について理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「森口佑介(2021)子どもの発達格差 将来を左右する要因は何か.PHP新書.」です。
思考の実行機能の発達について
以下、著書を引用しながら見ていきます。
幼児期には「種のようなもの」を持っているにすぎないのですが、幼児期に著しく発達し、児童期から青年期にかけて穏やかに発達します。
著書の内容から、〝思考の実行機能″は、幼児期に著しく発達して、その後は、緩やかな発達を示すと記載されています。
思考の実行機能については、ルールの切り替えテストを用いて、年齢ごとの能力を測る方法が取られています。
その結果、ルールの切り替えが可能になる年齢は、5歳頃の幼児期に急激に発達することがわかっており、その後は緩やかな発達を見せることが分かっています。
ルールの切り替えとは、様々な基準がある中で、その基準を変更してもうまく適応できるということです。
私たちの身近にも、様々なルールがあります。
例えば、子どもの遊びではカードゲーム、かくれんぼ、ケイドロなど様々なルール遊びがあります。
こうした遊びは、遊びの中で、様々なルールがあったり、時と場合によってルールが変更になることがあります。
ルールを理解し、ルールへの変更に適応しはじめる年齢が5歳頃と言われていますが、確かに、定型児において、就学前頃から集団遊び(ルールによる遊びの増加)が活発化する様子などを見ても納得できます。
感情の実行機能の発達について
以下、著書を引用しながら見ていきます。
感情の実行機能は、幼児期から児童期にかけて、順調に発達していきます。ところが、青年期では、この能力が一時的に低下します。
著書の内容から、〝感情の実行機能″は、幼児期から児童期にかけて発達していく中で、青年期には一時的に低下すると記載されています。
〝感情の実行機能″を理解するために、著書にはアクセルとブレーキの例か記載されています。
つまり、自分の感情を抑制する側面がブレーキであり、自分の感情を表に出すことがアクセルだということです。
例えば、おやつの時間まで食べてはいけないと親から言われている状態において、食べたい欲求をうまく抑制する機能がブレーキであるのに対して、我慢できずに食べてしまう行動がアクセルになります。
そして、著書にもあるように、アクセルとブレーキのコントロールがうまく働くようになる時期が、幼児期から児童期にかけて発達していくということになります。
それでは、青年期にはなぜこの機能が低下するのでしょう?
以下、著書を引用しながら見ていきます。
小学生では、アクセルとブレーキのバランスが良いようです。一方、中学生や高校生では、アクセルが強すぎて、ブレーキによってうまく制御できていません。
著書にあるように、青年期には、アクセルが強く働きすぎるという特徴があると記載されています。
つまり、ブレーキの機能は良いのにもかかわらず、アクセルが強くなりすぎるということです。
青年期にはアクセル>ブレーキの構図が優位に特徴として出ると言えます。
こうした感覚は、青年期を経験した人であれば、経験則的に理解できるのではないかと思います。
以上、【実行機能の発達】思考と感情の発達について考えるについて見てきました。
思考と感情の実行機能の発達は、幼児期頃から急激に発達し、児童期までは似たような発達の特徴を示すことがわかっています。
一方で、感情の実行機能については、青年期に低下するといった違いがあります。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も実行機能についての理解を深めていきながら、実行機能の発達について学んだ知見を療育現場に応用できる方法を考えていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
森口佑介(2021)子どもの発達格差 将来を左右する要因は何か.PHP新書.