子供たちは、遊びを通して様々なことを学んでいきます。
遊びを通した学びといえば、様々な内容の遊びに取り組むといったイメージがあるかもしれませんが、子供には自分が好きな遊びを繰り返し行う姿がよく見られます。
それでは、子供が同じ遊びを繰り返すことにはどのような意味があるのでしょうか?
そこで、今回は子供が遊びを繰り返すことの意味について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「ピーター・グレイ(著)吉田新一朗(訳)(2018)遊びが学びに欠かせないわけ 自立した学び手を育てる.築地書館.」です。
子供が遊びを繰り返すことの意味とは?
以下、著書を引用しながら見ていきます。
遊びがもつ教育的な機能として、もうひとつ指摘しなければならないのは、その「反復性」です。遊びのほとんどは、繰り返しがベースになっています。
それぞれの繰り返しは創造的な行為なのです。
ほとんどの繰り返しは体系的な形で前のとは違うのです。
著書の内容から、繰り返しの遊びは一見似ているようであっても、本人の自発性に基づく行為のため創造的であると考えらえています。
モンテッソーリ教育では、繰り返しの行為を通して、子供の中で知性が育まれていき、ある一定水準までいくと満足感・達成感からかその繰り返しの行為を止めると考えられています。
そのため、繰り返しの行為は意味がないもの、学習を促進させないものではなく、次の段階へと進む上でとても大切な過程であると言えます。
私たちの過去を振り返って見ると、自転車の乗るにしても、砂場で泥遊びをするにしても、同じような行為を反復していたことは多くの人に共通する特徴だと思います。
子供たちは、感覚と運動を通して、同じ行為を繰り返すことで、体の使い方、道具の使い方、五感といった感覚器官の発達を促進させていきます。。
著者の経験談
著者の療育現場でも子どもたちは同じ遊びを繰り返す様子がよく見られます。
しかし、長いスパンで遊びを観察すると一見すると同じような遊びであっても、成長・発達が見られていると感じます。
例えば、砂場遊びが好きなA君は、砂場遊びを始めた当初は水の感覚・砂の感覚に没頭することが多くありました。
とにかく、繰り返し水や砂に触るという感じです。
それが、しばらく期間が経つと、今度は川やダムを作るのに夢中になる様子が出てきました。
シャベルを使って川の道を作ったり、大きな穴を掘ってダムに見立てるなどです。
さらに、期間が経つと、今度はホースやストローなどを使用して排水管を作成する様子が出てきました。
このように同じ砂場遊びの繰り返しの中にも様々な変化が出ていたことを感じたケースです。
次に、戦いごっこが好きなB君です。
B君は他児と一緒に大人を倒すという遊びを毎日のように繰り返して遊ぶことが好きな子供です。
最初にやわらかい素材の剣やボールをぶつけて倒すというシンプルなルールを繰り返して遊ぶ様子が多く見られていました。
しかし、次第に遊びの内容にも変化が出てきました。
それは、戦いごっこのレベル設定や戦いごっこに何らかのストーリー性を加えていくといったものです。
敵役のレベルが変わることでB君は様々なアイディアを考えながら敵を倒す作戦を独自に考えようとしたり、ストーリー性が出てきたことで、それまで単発に終えていた戦いごっこが翌日・翌々日と関連性を考えながら話を生み出し、そして繋いでいこうとする想像性が見られるようになってきました。
こうした変化は、日々目まぐるしく変わるというよりも、ある程度の期間、繰り返して遊んだ先に発展形として見られるようになったという感じがします。
このように戦いごっこなどごっこ遊びにおいても、繰り返し→変化が出る→繰り返し、というループがあるのだと感じたケースです。
以上、【子供が遊びを繰り返すことの意味について】療育経験を通して考えるについて見てきました。
著者も子供の頃には同じ遊びを何度も何度も繰り返していたことを思い出します。
以前はこうした行為に何の意味があるのかが当然ながらよく分かりませんでしたが、今になって初めて子供が繰り返し遊ぶことの意味が経験と知識とをもって分かるようになってきたと実感しています。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も子供たちが日々の活動で見せる行為の意味を長いスパンでも捉えていけるように、経験と知識の双方からの学びを継続していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
関連記事:「【モンテッソーリから見た〝運動と知性″の関係】〝繰り返す″行動の意味について考える」
ピーター・グレイ(著)吉田新一朗(訳)(2018)遊びが学びに欠かせないわけ 自立した学び手を育てる.築地書館.