〝二次障害″という言葉は、福祉・医療・教育の現場にいる方であれば非常に多く耳にする言葉だと思います。
〝二次障害″への理解を深めることは、対人支援に直接・間接的に携わる人たちにとってとても大切なことです。
それでは、二次障害とは一体どのようなものなのでしょうか?
そこで、今回は、二次障害とは何か?について、臨床発達心理士である著者の療育経験も交えながら理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「前田智行(2023)子どもの発達障害と二次障害の予防のコツがわかる本.ソシム.」です。
二次障害とは何か?
以下、書著を引用しながら見ていきます。
身体障害・構音障害・発達障害などの生まれつきの個性を「一次障害」と呼びます。そして、特性に合わない環境で過ごし、無理に適応しようとして、精神症状の発症や不適切な行動の学習、不登校・引きこもりなどの二次的な問題が起きている状態を、二次障害と呼びます。
著書には、〝一次障害″と〝二次障害″といった用語が説明されています。
〝一次障害″とは、著書にあるように、生得的に持っている個性(身体・構音・発達障害など)のことを指します。
〝二次障害″とは、生得的な個性に加え、環境に対する不適応状態が影響して生じる症状(精神疾患、誤学習、不登校、引きこもりなど)のことを指します。
例えば、〝一次障害″として、発達障害(ADHD)のある子どもに不注意(例えば、忘れ物)が多いことを周囲の大人が過度に注意したとします。
大人の叱責が続いたことで、子どもは自信を無くし、やる気が出なくなり、うつ傾向が見られるなどが〝二次障害″の例として考えられます。
つまり、〝一次障害″が少なからず影響して〝二次障害″が生じるというプロセスになります。
二次障害の二つの方向性について
〝二次障害″のエネルギーの向かう方向性には大きく以下の二つがあると言われています。
以下、著書を引用しながら見ていきます。
友達に暴言や暴力を繰り返してしまったり、自傷行為に走ってしまうなどの、自分の外側にエネルギーが向かうことを、「外在化」や「外向性反応」と呼びます。
不登校やひきこもり、あるいはうつ病や不安障害などの精神障害など、自分の内側にエネルギーが向かう状態を、「内在化」や「内向性反応」などと呼びます。
〝外在化(外向性反応)″の例として、よく見られるものとして、〝反抗挑戦症″があります。
他者に対する過度な暴言や暴力を振るうことが特徴としてあります。
中でも、ADHD児によく見られることが分かっています。
〝反抗挑戦症″がエスカレートすると〝素行症″といった法律に触れる行為へと発展していくケースも多いことが分かっています。
著者もADHDの発達特性が〝一次障害″にあり、〝二次障害″として〝反抗挑戦症″が生じているケースをこれまでの療育現場でよく目にしてきました。
生育歴などを見ると、環境から受けた不適切な行為がある場合がほとんどだと思います。
一方で、早期に対応をしていくことで時間はかかりますが改善が見られたケースもあると感じています。
〝内在化(内向性反応)″の例として、よく見られるものとして、〝不登校″〝うつ傾向″〝不安障害″などがあります。
これらは、相互に関連して発症しているケースが多いと感じます。
例えば、不安が高まることで不登校になる、そして、不安障害も発症していたなどです。
著者がこれまで見てきたケースには、ASDの発達特性が〝一次障害″にあり、〝二次障害″として、〝不安障害(傾向)″〝不登校(傾向)″があった子どもがいます。
仮説として、学校での出来事に何らかの原因のある可能性がありましたが、本質的な問題がはっきりしませんでした。
自分の気持ちを話すことに苦手さのあるASD児にとって、学校での出来事を自他の感情なども含めて整理することは小学生段階では難しいため、問題の本質が分かりにくかったのだと思います。
また、〝内在化″からくるこれらの特徴は、エネルギーが外に向かう〝外在化″に比べるとわかりにくさがあるように感じます。
そして、〝外在化″同様に、早期から支援を開始することがとても必要だと感じています。
以上、【二次障害とは何か?】発達障害児支援の現場を通して考えるについて見てきました。
今回は、〝一次障害″として、発達障害(ASDやADHDなど)があり、発達特性が影響して〝二次障害″が生じている例を中心に見てきました。
〝二次障害″への支援や予防は、療育(発達支援)の現場において取り組むべき最重要テーマだと言えるほど抑えるべきことは多くあると感じています。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で関わる子どもたちが二次障害へと陥らないように支援の観点・予防の観点を大切にしていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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