子どもが園や学校に〝行きたくない″など行き渋りが見られ、その結果、不登園・不登校になることがあります。
その理由は、はっきりと分からないこともありますが、中には、些細な出来事がきっかけで起こる場合もあります。
子どもに関わる大人からすれば、〝大したことはない″と考えることもあると思います。
一方で、子どもからすれば、深刻な問題に至っていることがあります。
それでは、なぜ、些細な出来事で学校に行けなくなるのでしょうか?
そこで、今回は、 なぜ、些細な出来事で学校に行けなくなるのか?について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、愛着障害に見られる探索基地の欠如を例に理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「米澤好史・松久眞実・竹田契一(2022)特別支援教育 通常の学級で行う「愛着障害」サポート 発達や愛着の問題を抱えたこどもたちへの理解と支援.明治図書.」です。
【なぜ、些細な出来事で学校に行けなくなるのか?】愛着障害に見られる探索基地の欠如を例に
以下、著書を引用しながら見ていきます。
しかし、たとえ、ちょっとした嫌な経験でも、そのときに生じた嫌な気持ちを減らしてくれる探索基地、人がいないのです。嫌な気持ちをまだ抱えたまま、その嫌な気持ちが生じた学校園に行きたくないという気持ちはおわかりいただけると思います。それでも無理に行って嫌な気持ちがなくなる経験ができなかったら、行きたくないという気持ちは増大してしまいます。
著書の内容を踏まえると、〝些細な出来事で学校に行けなくなる″背景には、〝探索基地″が欠如している可能性があると言えます。
子どもが嫌な出来事があり、その気持ちが学校で解消されずにいれば、さらに学校への行き渋りは増大していきます。
〝探索基地″の存在とは、子どものネガティブ感情を軽減して、前進する行動のエネルギーを生じさせてくれる存在だと言えます。
家庭や学校でこうした〝探索基地″を担う存在がいなければ、子どもが自発的にさらに嫌な経験が増大する可能性のある環境に身を置こうとは思わないはずです。
〝些細な出来事で学校に行けなくなる″といった〝些細な出来事″は、常日頃から、子どものネガティブ感情に寄り添い、その気持ちを軽減する関わり、そして、次の行動意欲を引き出してくれる存在があってこそ、ネガティブな出来事は堆積していかないのだと言えます。
そして、〝愛着障害″のある子どもは、〝探索基地″以前に、〝安心基地″や〝安全基地″も欠如していることがあるため、様々なネガティブな刺激に敏感に反応するのだと言えます。
そのため、まずは、〝安心基地″→〝安全基地″→〝探索基地″を意識した関わりが必要になってきます。
関連記事:「【愛着形成に必要な探索基地の欠如による2つの行動特徴】療育経験を通して考える」
関連記事:「【愛着で大切な3つの基地機能】安心基地→安全基地→探索基地のメカニズム」
著者の経験談
著者がこれまで見てきた子どもたちの中にも、〝些細な出来事で学校に行けなくなる″あるいは〝些細な出来事で事業所に行けなくなる″ケースはあったと思います。
こうした子どもたちには、〝探索基地″が欠如しているといった印象があります。
〝探索基地″ができている子どもは、簡潔に言えば、愛着関係がしっかりと形成されている状態だと言えます。
つまり、信頼のおける大人との関わりを通して、少し嫌な出来事があってもその気持ちが軽減でき、次の行動に繋げていくことができます。
そして、さらに、自尊心・自己肯定感も維持されていると言えます。
そのため、家庭や学校・放課後等デイサービスなど、子どもたちが過ごす居場所において、一人は〝探索基地″となる存在がいることが大切だと思います。
著者の実感として、仮に、放課後等デイサービスで嫌な出来事があっても、信頼のおける支援者との関わりにより、嫌な出来事が早期に解消されていければ、放課後等デイサービスへの行き渋りなどはほとんど見られないと感じています(他の要因による行き渋りなどはあります)。
これは、家庭や学校においても同様だと思います。
子どもの思いに敏感であり、安心・安全を保障してくれる人、そして、困った出来事を相談できる相手がいることで、子どもにとってのネガティブな出来事は予防・軽減していくことができます。
そのためにも、子どもが過ごす様々な居場所において〝探索基地″、つまり、愛着対象となる存在を作っていくことが大切だと言えます。
以上、【なぜ、些細な出来事で学校に行けなくなるのか?】愛着障害に見られる探索基地の欠如を例にについて見てきました。
愛着障害のある子どもたちは、些細な出来事で傷を受けやすいとも言えます。
そのため、子どものポジティブな感情を引き出し、ネガティブな感情を軽減し、そして、様々な思いについて確認・報告できる愛着対象との関係構築がとても大切になってきます。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も子どもに見られる様々な行動について、深い思考を持って対応できる力を身につけていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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