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行動障害の対応について【療育経験を通して考える】 

投稿日:2022年12月7日 更新日:

行動障害(Challenging Behaviour)とは、自傷や他害、パニックや癇癪、器物破損など、その行動が自他に悪い影響を及ぼすものだとされています。

また、行動障害と強度行動障害とを定義上分類している方もおりますが、今回は、以下の参照資料に基づいて「行動障害」に統一して話を進めていきたいと思います。

 

関連記事:「行動障害と強度行動障害の違いについて-行動障害の背景にあるものとは?-

 

それでは、行動障害への対応にはどのような視点が大切となるのでしょうか?

 

そこで今回は、行動障害の対応について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら大切な視点について考えを深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「英国行動障害支援協会(編)清水直治(監訳)ゲラ弘美(編訳)(2015)行動障害の理解と適切行動支援 英国における行動問題への対処アプローチ.ジアース教育新社.」です。

 

 

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行動障害の対応について

 

1.薬物療法などはあるのか?

まずは、行動障害に対して効果のある薬などはあるのでしょうか?

以下、著書を引用します。

残念ながら行動障害は、抗生物質を飲んで短期間に感染症を治療するようには治せません。ほとんどの場合には、魔法のように効く特効薬はありません。

 

著書の内容から、行動障害に有効な特効薬などはないとされています。

行動障害は、問題となる行動が過去に何らかの形で誤った表出方法(自傷・他害・かんしゃくなど)として誤学習してしまった結果、生じていると考えられます。

そのため、行動に対してできるだけ問題行動が生じない環境設定(予防的対応)と問題行動を適切な行動へと修正・学習していく関わり・対応が大切になります。

 

 

2.行動障害支援で大切な予防的対応

まず、大切なことは、問題行動が生じないように未然に防ぐことです。

著書にも次のような記載があります(以下、著書引用)

まず、行動障害が起こらないように予防することがいちばん重要

 

このように著著では予防的対応の重要性を指摘しつつも、それは簡単ではないと書かれています。

それは、その人の状態や環境の違いなど様々な要因が影響しているからだと思います。

著者も行動障害がある人、あるいは行動障害傾向がある人の関わりにおいて、事前に問題となる行動を予測し、それに対する対応策を前もって考えるようにしています。

その際に、一人で対応するというよりも、チームで課題を共有し、役割分担などを行うなど、チームでの対応を心がけるようにしています。

 

 

3.適切な行動を学習していく関わり・対応

著書の中では、適応的な行動の学習として「機能分析」を取り上げています。

「機能分析」とは、問題となる行動に関する情報を集め(時間帯・頻度・状況)、問題行動について分析を行っていくことです。

 

以下、著書を引用しながら機能分析についてさらに詳しく見ていきます。

この機能分析をとおして、行動障害を予防したり、行動障害が起こる頻度を次第に減らしていく方法を見出すことができます。そして、その当人が問題行動を起こさなくても自分の要求を満たすことができるように、もっと望ましい行動を代わりに獲得させることによって、行動障害を減らそうとします。

 

著書にあるように、機能分析を用いることは、問題行動の予防や軽減だけではなく、望ましい行動を学習していくことを可能にする方法だと考えられています。

機能分析は、行動障害の人たちの対応でよく用いられるものになります。

その中で、大切なことは、対応するアプローチを他の場所でも共有し、対応方法を一貫させることや、成果がでるのに時間がかかるという長期的な展望を事前に想定しておくことです。

著者は、療育現場で、行動障害が見られる人に対しては、機能分析と同様に、まずは問題行動に関する情報を集めるようにしています。

そして、前述した予防的対応に加え、好ましい行動の獲得のために、モデリングによる伝達や事前に決めたルールを守れたら“褒める”など、様々な対応策を取っています。

対応策も、その人の状態像(年齢・興味関心・知的レベル・障害の程度など)によっても変わってきます。

その人が理解できる伝え方や報酬だと感じるような行動後の関わり方も大切な視点だと思います。

 

関連記事:「行動障害について【特徴・症状の程度・発症しやすいタイプ】

 

 


以上、行動障害の対応について【療育経験を通して考える】について見てきました。

行動障害は現場で関わっていて非常に手ごわいものだと感じます。

しかし、様々な情報を集め分析し、長期的な展望を持ちながら、丁寧な関わり・対応を継続していくことで、気がつくと行動が良い方向に徐々に変わってきたと感じるケースも少なくありません。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も行動障害についての学びも継続して行っていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

英国行動障害支援協会(編)清水直治(監訳)ゲラ弘美(編訳)(2015)行動障害の理解と適切行動支援 英国における行動問題への対処アプローチ.ジアース教育新社.

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