自傷や他害、パニック、感覚の異常など行動上に問題が生じる状態を〝行動障害”ということがあります。
私が関わる療育現場でも、思うようにいかないと壁に頭を打ち付けて泣き叫んだり、他児を叩く蹴るなど他害をするお子さんがこれまで少なからずいました。
関わる大人(保護者や支援者など)が対応の面で非常に困る場面かと思います。こうした行動障害について様々な知見から対応方法などが述べられています。
それでは、行動障害への対応方法にはどのようなものがあるのでしょうか?
そこで、今回は行動障害について太田ステージから対応方法を説明していきながら、私の療育現場での体験なども交えてお伝えしていこうと思います。
今回参照する資料は「立松英子(2011)発達支援と教材教具Ⅱ 子どもに学ぶ行動の理由.ジアース教育新社.」です。
行動障害について(太田ステージより)
太田ステージとは感覚運動期(StageⅠ)から概念を獲得した時期(StageⅢ‐1からStageⅣ)までの認知の発達をいくつかのステージに分け、それぞれのステージに見られる状態像や対応方法などをまとめた考え方になります(詳しくは、「太田ステージから障害児の発達を考える」に記載しています
)。
太田ステージの各ステージと行動との関係には次のようなものがあります(以下、著書引用)。
- StageⅠ➢睡眠障害が多い
- StageⅢ‐1➢きまり、こだわりがピークに見られる
- すべのStage➢こだわり、感覚の異常、手や体の決まった動き、パニック、自傷、他害
こうした行動の問題は、「やむにやまれぬ行動」とも言えるため、やみくもに禁止するよりも、全体的な発達を促進する中で「減弱する」「変化していく」ことを期待する方が有効であると考えられています。
つまり、「どうしたらやめさせられるか」から「どうしたら順調な発達を支えていけるか」という視点の転換が重要だと考えられます。
行動障害への対応について
また、予防的対応も重要です。以下に行動障害への対応として(重度の知的障害や自閉症児)大切な視点をお伝えします(以下、著書引用)。
- 行動そのものへの対応よりも予防的対応を重視する
- 予防的対応で優先するのは、適応行動を身につけること
- 適応行動を身につけるには、達成感が必要
- 達成感を経験するには、達成可能な目標とわかりやすい環境設定が必要
- 達成可能な目標とわかりやすい環境設定のためには、子どもの「わかり方」を詳細に知ることが必要
著者のコメント
こうした対応内容を見て、改めて子どもたちがどのような発達にいるのかという現状の理解が重要だと感じると同時に、内面の理解は非常に難しいとも感じます。
私自身、自傷や他害などに対して、以前は行動の背景やその子の発達の理解をすることが難しく、力任せにとめるなど、とにかく無理やりやめさせるような対応を無意識的にやっていところもあったかと思います。
見る視点➢悪い行動・いけない行動、対応➢とめる・やめさせる、という一方向的に見方でした。
前述した考え方を少しずつ学んでいくことで、行動の背景やその子の認知の発達などを考慮することで私の対応も少しずつ変化していきました。
例えば、環境が変化しパニック行動を起こしていた子に対して、その状況を理解できる段階ではないという認識のもと、彼にとってわかりやすい環境設定をするために、環境を細分化し、その中で彼に何があるとわかりやすいのか、安心できるのかを詳細に検討していきました。その結果、以前は環境の変化でパニックを起こしていた行動も少しずつ軽減していきました。
そうした変化は急激に起こりませんが、対応する大人が長期的なスパンで子どもたちを支えていくという構えが大切なのだと実感しました。なにより、大人が子どもの環境への「わかり方」を理解するには時間がかかります。
行動の問題は現場に関わる人たち(当の本人も含め)すべてが、日々悩み苦戦するものかと思います。
太田ステージはこうした子どもたちの行動上の問題に対して新たな視点や気づきを与えてくれるものだと思います。
今後も子どもたちの行動の意味を背景要因なども考慮にいれながら地道に考えていきたいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
立松英子(2011)発達支援と教材教具Ⅱ 子どもに学ぶ行動の理由.ジアース教育新社.