愛着とは特定の養育者との情緒的な絆のことをいいます。
自閉症児においても安定した愛着形成は可能です。
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自閉症児の愛着形成には認知能力が影響すると言われています。
つまり、自閉症児の中でも高い認知能力を持つ子の方が愛着を形成しやすいことがわかっています。
それでは、なぜ認知能力の高さが愛着形成に影響するのでしょうか?
そこで、今回は、自閉症児の愛着形成について、認知能力との関連からお伝えしていきたいと思います。
今回、参照する資料は「数井みゆき・遠藤和彦(編著)(2007)アタッチメントと臨床領域.ミネルヴァ書房.」です。
自閉症児の愛着形成について【認知能力との関連から考える】
それでは、定型児と対比しながら愛着形成の質の違い・認知能力との関連について見ていきます。
定型児の愛着形成について
定型児の場合について以下著書を引用します。
健常児の場合、内的作業モデルは、半ば自動的に行われる相互主観的経験の蓄積を土台に形成されると考えられる。その土台の上で、表象レベル、自分が困ったら養育者が何とかしてくれるといった内的作業モデルを形成する。
内的作業モデルとは、アタッチメント対象(愛着対象)との情緒的な交流(相互作用経験)が内部に(イメージとして)取り込まれたものになります。
関連記事:「愛着で重要な内的作業モデルについて【心の中に大切な人がいることの重要性】」
著書の内容から、定型児は特定の養育者との情動交流を自然と取ることができ(少なくともそうした基盤がある程度あるため)、そのため、愛着対象となる養育者への安心・安全に繋がる(イメージできる)内的作業モデルを築きやすいと考えられています。
例えば、子どもが、お腹がすいた時に泣くといった発信をします。そうすると養育者がすぐに反応してミルクをあげます。
また、子どもが不安なこと、楽しいことなどがあると、養育者に言葉やジェスチャーで発信します。そうすると養育者がすぐに子どもの気持ちを察して言葉や表情、スキンシップなどで応答・反応します。
こうした子どもと養育者との関係は定型児においては、自然と行われることが多くあります。
そして、こうした子どもからの発信、養育者からの応答(逆もあります)といった情動交流が、お互いの主体を実感し、子どもにとって養育者は自分を守ってくれる存在だという確信・イメージ(内的作業モデル)が形成されます。
自閉症児の愛着形成について
それでは、自閉症児の場合はどうでしょうか?
自閉症児の場合について以下著書を引用しながら見ていきます。
ところが自閉症児の場合、相互主観的経験そのものが形成しにくいとすれば、子ども自身の行動とそれに随伴して生起する養育者の応答行動を、子どもの側が1つ1つ記憶し処理することによってしか、養育者や自分に関する経験や情報を取り出せないと考えられる。
著書の内容から、自閉症児が愛着形成の基盤となる相互主観的経験をつくることが難しい要因として、自閉症児特有の情報処理過程にその要因があると言えます。
つまり、自分からの(子どもの)発信に対する養育者の反応を一つ一つ処理する必要があるため、高い認知能力が必要になり、それを記憶として保持するために時間がかかるということになります。
自閉症児は、そもそもの脳機能の特性上、人への注意の向け方、表情の理解、音声の理解などに特有の認知処理を行っています。
例えば、顔全体の表情よりも口元といった細部を見たり、人の声よりも他の物音を気にしたりなど、特有の情報処理を取ることが多くあります。
また、感覚過敏や鈍感さもあるため、抱っこなどスキンシップを取ることで養育者からの安心感を得るのにも時間がかかります。
つまり、自閉症児は、自閉症特有の認知処理(情報処理)や感覚(過敏さ・鈍感さ)を持っていることから、養育者の行動を理解するのに(安定した愛着形成を築くのに)時間がかかります。
また、自閉症児からの発信と養育者側の応答一つ一つを紐付けて理解する必要があるため、それには高い認知能力を要するということになります。
これが、自閉症児において、高い認知能力が愛着形成上影響している理由になります。
以上、自閉症児の愛着形成について【認知能力との関連から考える】について見てきました。
最後に重要な点を補足すると、重度の自閉症児でも、もちろん安定した愛着形成は可能ということです。
今回は、あくまで認知能力の高さが自閉症児の愛着形成に影響するといった視点からお伝えしてきました。
自閉症自体が認知に特徴があるため、愛着形成においても認知能力が影響していることは当然かもしれません。
大切なことは、自閉症特有の認知を理解していくこと、そして、理解していく中で時間をかけながら安定した愛着を形成していくことだと感じます。
私自身、まだまだ未熟ですが、日々の療育現場で自閉症の子どもたちと関わることが多いため、今後も自閉症の子どもたちの理解をさらに深めていきながら、より良い支援を目指していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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数井みゆき・遠藤和彦(編著)(2007)アタッチメントと臨床領域.ミネルヴァ書房.