発達障害児・者と定型発達児・者の中間のゾーンの人たちの中には「グレーゾーン」と言われる人たちがおります。
「グレーゾーン」というと環境への不適応状態を示しているといった捉え方もされます。
一方で、発達障害の特性が見られるといった発達障害傾向といった言葉が使われることもあります。
しかし、発達障害傾向があるからといって即座に「グレーゾーン」(環境への不適応状態が見られる)になるわけではありません。
発達障害傾向がある人たちの中にも、うまく社会生活を送ることができている人たちも多くいるからです。
それでは、発達障害傾向のある人が「グレーゾーン」の状態になっている場合には、どのような要因が加わっているのでしょうか?
そこで、今回は、発達障害「グレーゾーン」と適応障害の関連について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「大人の発達障害 グレーゾーンの人たち」、「発達障害 キーワード&キーポイント」です。
適応障害とは?
以下、著書を引用します(市川,2016)。
置かれた環境にうまく適応することができず、さまざまな心身の症状があらわれて、社会生活に支障をきたす状態を適応障害といいます。
適応障害は、ストレスによって引き起こされます。(略)症状はさまざまで、不安、抑うつ、過敏などの心理症状、不眠、食欲不振、倦怠感、疲労感、頭痛、腹痛などの身体症状があります。不登校やひきこもりに至ることも少なくありません。
著書の内容から、適応障害とは、環境への不適応状態(ストレスの長期化)が原因で、心身に様々な症状が生じ、社会生活が困難な状態のことを言います。
適応障害への対応方法としては、ストレスの軽減が大切であり、まずは休むことが重要となります。
著者の身近にも適応障害といった診断を受けた方がおり、症状としては、不安や抑うつなどが顕著に見られました。
ある程度の期間休息をとることでだいぶ回復されていました。
発達障害「グレーゾーン」と適応障害の関連について
以下、著書を引用します(林,2020)。
グレーゾーンは適応障害を必ず発症しています。ですから、グレーゾーンとはなにかを定義するには、2つの条件があるといえます。
著書の中では、「グレーゾーン」の2つの条件として、1つ目に、発達障害の傾向がある、2つ目に、適応障害を発症しているとしています。
つまり、「グレーゾーン」には必ず適応障害が併存しているということになります。
もちろん、発達障害にも適応障害が見られます。
このように、発達障害ならびに「グレーゾーン」のどちらも適応障害が併存しているというところがポイントになります。
著者のコメント
発達障害にしても、発達障害「グレーゾーン」にしても、社会生活上の困り感・生きづらさなどがあり適応障害になっていることが診断の条件として大切なポイントになります。
こうした条件を理解する大切さとして、発達特性が強く見られる・あるいはその傾向が少し見られる人たちの中にも、普通に社会生活を送っている場合もあるということです。
つまり、普通と違う・少し違うからといって障害に直結するわけではありません。
本人の生きづらさが解決できず長期化してしまった状態が、障害となって現れていくといった理解が大切だと思います。
著者も療育現場で長年勤めていますが、発達の特性が強く見られても(発達や能力の凸凹が顕著にある)、環境が良いとその特性が弱まったり、問題となって現れることが少ない印象があります。
このように、現場レベルで見ても、周囲の理解や配慮、関わり方はとても大切だと実感しています。
障害という言葉以上に、その人たちが何に困り感を抱えているのか、そして、どのようなサポートを欲しているのかを考えていくことがとても重要だと言えます。
以上、【発達障害「グレーゾーン」と適応障害の関連について】著者の経験も通して考えるについて見てきました。
発達障害「グレーゾーン」など、発達障害に対する認知度が高まっていく中で、大切なことは、長期の展望を持って、日々、本人やご家族を支えていくこと、つまり、実践することだと思います。
一方で、実践することは容易ではなく、様々な困難さが関わる側にもあります。
しかし、日々の生活を支えることなくして、真の実践家ではないと言えます。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も、多様な発達の状態を理解していけるように、日々の実践から多くを学んでいきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
発達障害「グレーゾーン」に関するお勧め書籍紹介
関連記事:「発達障害「グレーゾーン」に関するおすすめ本【初級編】」
林寧哲・OMgray事務局(監修)(2020)大人の発達障害 グレーゾーンの人たち.講談社.
市川宏伸(監修)(2016)発達障害 キーワード&キーポイント.金子書房.