人間の感覚には、触覚、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、前庭感覚、固有覚など、様々なものがあります。
その中でも、触覚は、原始的な感覚であり、幼い乳児は自分の手で様々な物を触りながら、外の世界を認識していきます。
それでは、触覚はどのような過程を経て発達していくのでしょうか?
そこで、今回は、感覚統合で大切な視点として、原始系と識別系をキーワードに、触覚の発達について考えを深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「木村順(2006)子育てと健康シリーズ㉕:育てにくい子にはわけがある:感覚統合が教えてくれたもの.大月書店.」です。
原始系について
私たちの触覚は、乳幼児期から様々なものを触ることで外の世界を少しずつ理解していきます。
特に、生まれたばかりの赤ちゃんは「原始反射」といものがあり、例えば、口の周りに指を近づけると吸おうとしたり(→吸てつ反射)、また、赤ちゃんの手に大人の手を近づけると握ろうとする(→把握反射)などが本能的に備わっています。
また、大人になっても、チクチクするものを誤って触ってしまった場合に、本能的に手を引っ込める行動があるかと思います。
このように、「原始系」は大人になっても消えずに残ると言われています。
以上を踏まえて「原始系」とは以下のように考えられています(以下、著書引用)。
そういう本能的な情報をつかさどっている皮ふ感覚のはたらきに関して「原始系」という名前がつけられています。
識別系について
それでは、「識別系」についてですが、著書では以下のように記載されています。
触れたものの「素材」や「かたち」「大きさ」を「触り分け」たり、自分のからだのどの「位置」に触れているかなどを感知するときに用いられている触感のはたらきを「識別系」といいます。
「識別系」は、「原始系」の触覚が発達することで育つものだと考えられています。
著書にもありますが、「識別系」の例として、例えば、ポケットに手を入れながら、中に何があるのかを人は触感を頼りにして確認することができます。
この場合に、例えば、手袋をしていたとしたらどうでしょうか?
手袋が無い状態と比べて、物の感じがつかみにくいのではないでしょうか。
それだけ、私たちは、触感を頼りに物を識別しているということになります。
識別系の発達について大切なこと
それでは次に、「識別系」の発達について著書を参照ながら見ていきます。
「識別系」というネットワークは、生まれてから発達していきます。生後三か月ごろから、少しずつその使い方を学習していくのです。
著書の内容から、生後3か月頃から子どもは、目と手の協応動作を基盤として、物の認識を広げていきます。
例えば、自分が手に取ったものを舐めまわす、また、手にとったものをじっと見るなどがあります。
このように、触覚を手掛かりとしていたことから、徐々に、触覚+視覚など他の感覚器官との連携が始まることで、「識別系」が育っていきます。
以下、引き続き著書を引用して見ていきます。
二歳ごろになると、袋のなかやひとのポケットに手をつっこみたがる時期に入ります。(中略)「見えない世界は手で探れる!」ということに興味が向きはじめたからです。これも、「識別系」が発達してきた証拠です。
三歳をすぎると、手探りで「素材」や「形」「大きさ」の弁別ができるようになっていきます。
著著の内容から、2歳頃から、「見えない世界」を、触覚を頼りにして探索する行動が増えていき、3歳を過ぎると、触覚で物の識別が可能になっていきます。
繰り返しにますが、この時期以降、大人になっても、「原始系」は残り続けますが、「識別系」優位となります。
感覚統合の世界では、感覚に様々な問題があると(「原始系」が強く残っていると)、「識別系」が育ちにくいといった視点から、様々な感覚を理解していきながら、感覚の交通整理をしていくことを大切としています。
以上、感覚統合で大切な識別系と原始系について【触覚の発達について考える】について見てきました。
私たちは、大人になるにしたがい、視覚や聴覚などの感覚器官を頼りに行動する機会が多くなると思います。
一方で、発達障害のある人たちは、感覚の問題を併せ持っているケースが多いことから、触覚など「原始系」と非常に密接に関連してる感覚を理解していくことが重要だと思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も感覚の理解を深めていきながら、より良い発達理解と発達支援に繋げていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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木村順(2006)子育てと健康シリーズ㉕:育てにくい子にはわけがある:感覚統合が教えてくれたもの.大月書店.