愛着障害と発達障害とでは、両者の行動特徴が似ていると言われています。
しかし、それぞれ異なる障害であるため、その違いを理解していかないと適切な支援に繋がらないケースが多くあります。
それでは、愛着障害と発達障害にはどのような違いあると考えられているのでしょうか?
そこで、今回は、発達障害と愛着障害の違いについて、両者を見分ける4つのポイントを通して理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料として「米澤好史(2020)事例でわかる!愛着障害 現場で活かせる理論と支援を.ほんの森出版.」になります。
愛着障害と発達障害の違いについて:先天的か後天的か?
まず、愛着障害と発達障害は、先天的か後天的な障害なのかという問題があります。
発達障害(ASDやADHDなど)は、先天的な子どもの脳機能の障害であり、生まれもっての特性の問題です。
一方、愛着障害は、子どもと関わる特定の人との後天的な関係性の障害です。
さらに、先天的な脳機能の障害の発達障害の子どもが、後天的な関係性の愛着障害を併せ持つ場合もあります。
発達障害と愛着障害とを見分ける4つのポイント
以上を踏まえた上で、次に、発達障害と愛着障害とを見分ける4つのポイントについて説明します。
①多動
多動は、注意欠如多動性障害(ADHD)、自閉症スペクトラム障害(ASD)といった発達障害でも、愛着障害(AD)でも見られます。
ADHDの多動の現れ方は、「気づく」という認知機能や気持ち・感情の機能とは無関係に、「いつも」多動であるという特徴があります。
ASDの多動は、「ここにいていい」「これをしていればいい」と受け止める居場所感の欠如が原因で起こります。
愛着障害の場合は、非常に変わりやすい感情が多動の原因となっているため、多動であったりなかったりと、「ムラのある」多動が特徴です。
②片付けができない、ルールが守れないように見える
ADHDと愛着障害によく見られる特徴ですが、その原因は異なります。
ADHDの場合は、実行機能・遂行機能の問題があるために、「片付ける」という一連のいくつかの行動を最後まで行うことが困難で、「片付ける」行動がなかなか身に付かず、「片付けられない」という現象に繋がります。
愛着障害では、「ルールを守ればどんなポジティブな感情になるのか」がわからない、つまり、「ルールを守ろう」という意欲そのものが育っていません。そして、感情のコントロールの難しさから、規範逸脱行動が頻発します。
③「取り上げない」「無視する」対応をしてみてわかる特徴の違い
これは子どもが不適切な行動をした場合、その行動に対して反応せずに、「取り上げない」「無視する」対応をしてみたその効果で、ADHDと愛着障害を峻別することができます。
ADHDの場合は、発生した行動を強化しない、つまり、その行動に何らかの反応をして報酬を与えなければ、その行動は消去され、消滅していきます。ですので、「取り上げない」「無視する」という対応は有効になります。
愛着障害の場合は、不適切な行動は、感情の問題から来ています。ですので、「取り上げない」「無視する」という対応は、自分の感情をわかってくれないという思いを誘発してしまい、その感情を逆なですることになります。こうした対応をすると、注目されたくて様々な不適切な行動が増えてしまいます。
④集団か二人きりか等、対人場面の違いによって特徴の現れ方が変わるか?
ADHDの場合は、他者との関係性の障害ではないため、場面の違い、対人関係の違い、集団か一対一か等によって違いは見られません。
愛着障害の場合は、特定の人との絆の問題のため、ある特定の人の関係が意識しにくい集団場面でその特徴がより顕在化されます。逆に、大人と子どもの一対一の状況では、現れにくいとされています。
以上が、愛着障害と発達障害の違いを見分ける4つのポイントになります。
教育現場や療育現場では、様々な特徴のある子どもたちがいるため、それぞれの特徴の背景には何があるのかという視点がとても大切になります。
子どもたちのより良い理解に向けて上記の内容はとても参考になるかと思います。
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米澤好史(2020)事例でわかる!愛着障害 現場で活かせる理論と支援を.ほんの森出版.