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【発達障害児支援で大切な伝え方の工夫】数字での説明を例に考える

投稿日:2024年9月27日 更新日:

発達障害(神経発達症)とは、簡単に言えば、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如多動症(ADHD)、学習症(SLD)など、様々な生得的な発達特性(AS、ADH、SLなど)に加え、環境への不適応状態(障害:Disorder)が見られる状態のことを言います。

発達障害児支援には、発達特性を踏まえた様々な支援方法があります。

 

発達障害児は、曖昧な表現(もっと、ちゃんと、しっかりなど)だと理解が難しい場合があります。

そのため、支援において〝伝え方の工夫″が必要になってきます。

 

それでは、支援において必要となる伝え方には、どのような方法があると考えられているのでしょうか?

 

そこで、今回は、発達障害児支援で大切な伝え方の工夫について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、数字での説明を例に理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「前田智行(2024)「できる」が増えて「自立心」がどんどんアップ!発達障害&グレーゾーンの子への接し方・育て方.大和出版.」です。

 

 

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伝え方の工夫:数字での説明を例に

冒頭で述べた通り、発達障害児に対する声掛けとして、できるだけ曖昧な表現は避け、〝具体的″であることが大切になってきます。

〝具体的″な伝え方の工夫として、〝数字″を使って説明することもまた一つの方法です(以下、著書引用)。

1つの方法として、数字を使って説明することがおすすめです。

 

数字での評価に抵抗がある子どももいますが、数字は客観性が高い分・ほめることにも、改善点の指摘にも使えるため、数字を使った伝え方は、発達障害・グレーゾーンの子ども対応には必須と言えます。

 

どんな行動がより良いのかという基準を伝えておくと、より気持ちが安定します。

 

著書には、〝数字″を使って具体的に説明すること、改善点に〝数字″を使うこと、行動の良い基準に〝数字″を使うことが有用であると記載されています。

 

 


それでは、次に、著者の経験談も踏まえて、具体的に〝数字″の使用方法を見ていきます。

 

著者の経験談

 

1.数字を使い説明する

著者も療育の中の様々な場面で〝数字″を使うことがよくあります。

例えば、片付けが苦手な子どもに、〝○○秒″だけやってみようと促したり、待つことが苦手な子どもに〝○○秒″待ってみよう、と伝えるなどです。

こうした行動を繰り返していくことで、少しずつ取り組める時間が伸びた、待てる時間が伸びた、結果として、時間での説明が不要になったケースもあります。

これは何も、子どもへの提示に留まらず、大人も数字を使って子どもの行動を把握するのにも役立ちます。

例えば、長く集中が難しい子どもにおいて、どのくらいの時間(〇〇分)なら取り組めるのかを把握するのにも役立ちます。

〝数字″には〝具体性″がある分、客観的に子どもの行動を理解するのに役立ちます。

 

 

2.改善点に数字を使う

マイナスの評価をすると子どもは落ち込みます。

そんな時に役立つのは改善点に〝数字″を使うことです。

例えば、もう少しで荷物の整理整頓ができる状況において、高く評価する(〝90点″)ことで、残りの〝10点″(もう少しで100点になりそうな部分)に目を向けることができます。

著者も療育現場の中で、あと少しで〝100点″になりそうな評価をすることで〝改善点″に子どもが目を向け(改善へのモチベーションの向上)、その結果、少しの頑張りが可能になったケースがこれまで多くありました。

 

 

3.良い行動基準に数字を使う

子どもは良い行動もするし、悪い行動もします。

そのため、○○ができたら100点、○○までできたら80点、など先に行動基準を〝数字″で伝えておくことも有用だと思います。

著者は、以前、ネガティブな行動が多く見られる子どもに対して、チームで評価基準を作り、活動の最後で伝える工夫をしたことがあります。

例えば、帰りの時間が守れたら〇〇点、公共の場で静かに過ごすことができたら○○点、など事前に評価基準を示し、最後にうまくできた点をできるだけ肯定的に〝数字″で伝えるといった内容です。

こうした取り組みは、子どもだけでなく、関わる支援者の共通の理解・認識においても分かりやすいものだと思います。

 

 


以上、【発達障害児支援で大切な伝え方の工夫】数字での説明を例に考えるについて見てきました。

数字での説明はあくまでも一つの伝達方法ですが、伝え方の工夫以上に、子どもとの信頼関係が大切だと思います。

つまり、信頼している大人から数字による分かりやすく、かつ、モチベーションの上がる声掛けがなされた場合、とても効果を発揮するのだと思います。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育実践を通して、子どもたちに対する分かりやすい伝え方の工夫について試行錯誤していきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「【発達障害児支援で大切な伝え方の工夫】損得での説明を例に考える

 

 

前田智行(2024)「できる」が増えて「自立心」がどんどんアップ!発達障害&グレーゾーンの子への接し方・育て方.大和出版.



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