発達障害児支援(療育)で大切なことことは子どもの自尊心を育むことです。
自尊心を育むためには、信頼のおける大人から〝褒められた″〝認めてもらえた″という経験の蓄積がとても大切です。
一方で、発達障害児は状態像も様々なことから単純に褒めてもうまく伝わらないことがあります。
それでは、発達障害児への褒め方にはどのような種類や方法があると考えられているのでしょうか?
そこで、今回は、発達障害児への〝褒め方″で大切なことについて、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「小嶋悠紀(2022)小嶋悠紀の「特別支援教育・究極の指導システム」①.教育技術研究所.」です。
それでは、以下、パターン①~③を例に具体的な〝褒め方″について見ていきます。
パターン①
以下、著書を引用します。
①褒められることは、良いことだと分かっていないパターン
著書には、パターン①は低学年時によく見られると記載されています。
このパターンの例として、大人が注意(叱責)をすることが〝強い刺激″〝はやい刺激″といった強化刺激になっており、こうした刺激を逆に子どもが好んでしまい、叱ることが裏目にでてしまっているということです。
著者も以前、未就学児と関わる機会があった際に、このような体験をしたことがあります。
著者が子どもの特定の行動(望ましくない行動)に対して強く注意をすると、逆に子どもは笑顔で嬉しそうになり、その特定の行動を繰り返してしまっていたことがあります。
パターン①への対応方法
以下、著書を引用します。
「素早く力強く褒める」ことだ。「叱責の刺激よりも、望ましい行動を起こしたときの『褒められる刺激』の方が『強い』こと」を体感させていく。
パターン①への対応方法としては、著書にあるように、望ましい行動への刺激を強化していくことが重要になります。
子どもが見せる望ましい行動に対して、〝すごい!″〝えらい!″〝100点!″などすかさず、そして強く返していくというものです。
著者は現在の療育現場で、パターン①の方法は特に年齢の低い子どもたちには非常に有効であると感じています。
この方法を取り入れたことで、片付けが早くなった、切り替えがうまくなったなど様々な望ましい行動の強化に繋がったと感じています。
パターン②
以下、著書を引用します。
入力できる刺激の強さや種類が合わずに、うまく入力できていないパターン
パターン②は、大人の褒める言葉がなかなか子どもに伝わらない、入力されない状態のことです。
例えば、子どもの望ましい行動を褒めても、その言葉には子どもが注意を向けていない(他のことに注意を向けている)ケースがあります。
著者も療育現場では、こうした状態は日々起こります。
著者が褒めた言葉とは全く違うことに注意を向けている(もちろん、無視しているわけではない)という感じです。
パターン②への対応方法
以下、著書を引用します。
ポイントは「名前を呼んで褒めること」である。(中略)名前を呼んだ後の「間」を見極めることが重要である。
「視覚で褒められている」ということを示す必要がある。
パターン②への対応方法としては、与えたい刺激のチャンネルを子どもたちの状態像に応じて変えていくといった方法になります。
例えば、著書にあるように、まずは注意を大人に向ける(〝間″を取って)、その後に褒める、ということが特にADHDなどに見られる不注意の強い子どもには効果的であるとされています。
また、自閉症の子どもには、視覚情報を活用して褒める、が有効だとされています。
例えば、ジェスチャーで示す、シールを貼ってトークン形式で褒めるなどがあます。
著者も〝間″を取ってから伝えることは時々行います。
一度、褒めようとしている子どもの名前を呼び、注意が著者に向いてから褒めることで褒められたという実感を生じさせることができると感じています。
パターン③
以下、著書を引用します。
過去の失敗経験がトラウマの形で残ってしまい、褒められることを拒絶しているパターン
パターン③は、小学校高学年から中学生に多いと著書には記載されています。
二次障害や愛着障害といった過去の失敗経験(これまで過度に叱責を受けてきたなど)が積み重なることで、大人が褒めても拒絶してしまうというものです。
著者もこうしたケースはこれまで多く見てきましたが、とても改善・修復に時間がかかることを実感しています。
褒めることで逆に苛立ちを見せる子どももいるため、関わり方・対応方法は長いスパンをかけてチームで見ていく姿勢が大切だと感じています。
パターン③への対応方法
以下、著書を引用します。
「感謝の言葉」を多く使うことをお勧めしたい。
褒め言葉をシャワーのように浴びせていく。また短く刺激の優しい言葉を何回も掛けていくのも有効である。
パターン③への対応方法としては、著書にあるように、多くの〝褒め言葉″〝感謝の言葉″を短く穏やかに使い続けていくというものです。
これまで責を積み重ねてきた以上にポジティブな言葉を子どもの内部に蓄積させていくことが大切です。
著者もこのパターンは難しいと感じながらも、少しずつ肯定語を使い続けることで、長い時間はかかりますが、子どもの状態は少しずつ安定してくることを実感しています。
以上、【発達障害児への〝褒め方″で大切なこと】療育経験を通して考えるについて見てきました。
著者はこの記事を書きながら、〝褒め方″にも子どもの状態像や年齢の違いによって様々な方法があるのだと改めて実感することができました。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も子どもたちの自尊心を高めていけるような関わり方・褒め方を試行錯誤していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
関連記事:「療育で大切な視点-子どもへの「叱り方」について-」
関連記事:「愛着に問題のある子の支援-「叱る」対応の問題点について-」
参考となる書籍の紹介は以下です。
関連記事:「発達障害の支援に関するおすすめ本5選【初級~中級編】」
小嶋悠紀(2022)小嶋悠紀の「特別支援教育・究極の指導システム」①.教育技術研究所.