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【発達障害児に見られる物を投げる・物を壊すことへの対応】4つのポイントを通して考える

投稿日:2024年11月8日 更新日:

著者は長年、療育現場で発達障害など発達に躓きのある子どもたちへの療育をしてきています。

その中で、子どもの対応で苦慮するものとして、〝物を投げる・物を壊す″があります。

 

それでは、発達障害児に見られる物を投げる・物を壊す行為に対して、どのような対応方法があると考えられているのでしょうか?

 

そこで、今回は、発達障害児に見られる物を投げる・物を壊すことへの対応について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、4つのポイントを通して理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「岩永竜一郎(2022)発達症のある子どもの支援入門-行動や対人関係が気になる幼児の保育・教育・療育-.同成社.」です。

 

 

※幼児を対象として書かれた本ですが、学童期にも活用できる視点も含まれていると思います。

 

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物を投げる・物を壊すことへの対応:4つのポイント

著書には〝物を投げる・物を壊す″ことへの対応方法として、以下の4つのポイントが書かれています(以下、著書引用)。

安全な環境を作る

 

丁寧な物の扱いを教える

 

物を投げていないでしていること、壊さずに扱っていることを褒める

 

投げたり壊したりする行動の前後から分析してみる

 

 


それでは、次に、以上の4つのポイントについて具体的に見ていきます。

 

1.安全な環境を作る

以下、著書を引用しながら見ていきます。

子どもが使うものは危険がないものにする必要があるでしょう。

 

投げてほしくないもの、投げると壊れるものはなるべく、子どもの手の届くところに置かないようにする配慮も大切です。

 

まずは、できるだけ安全な物を使用すること、物を床や子どもの手の届くところから遠ざけることです(〝安全な環境を作る″)。

著者も療育現場でできるだけ子どもの手が届く所に危険性のあるものを置かないようにしています。

また、活動で使用したおもちゃ等は直ぐに片付けるようにするなど、視覚的にもたくさん物が溢れないようにすることも心掛けています。

またボールやブロック類などはできるだけ弾力性・クッション性のある投げても破損や怪我に繋がりにくい素材を選ぶことも大切だと思います。

 

関連記事:「【発達障害児の〝他害″行動への対応方法について】〝環境調整″の視点から考える

 

 

2.丁寧な物の扱いを教える

以下、著書を引用しながら見ていきます。

不器用であったり投げると壊れることがわかっていなかったりして、物を丁寧に扱う、置く、箱などに入れるという動作ができない子どももいます。

 

丁寧に置く、、所定のところに物を入れる動作を教えることも必要です。

 

物を乱暴に扱ってしまう子どもの中には、物を扱い方がうまくわからない、そもそも不器用のためうまく扱えないケースもあります。

そのような場合には、著書にあるように、〝丁寧な物の扱いを教える″ことが必要になってきます。

また、所定の物入れを子どもが見てわかりやすく整えるなどの環境調整も大切だと思います。

環境調整をしていく中で、物の置き方(ゆっくり、やさしくなど)を声掛けしていく必要があります。

 

関連記事:「発達障害児と不器用の関連について【自閉症・学習障害・ADHD・知的障害を例に】

 

 

3.物を投げていないでしていること、壊さずに扱っていることを褒める

以下、著書を引用しながら見ていきます。

投げずに望ましい行動をしている(優れた行動でなくても良い)時に声かけすると投げる行動が減ることがあります。

 

声かけの際に問題行動の逆の行動を褒める言葉を入れることも大切です。

 

問題行動への対応として、問題となる行動が出た際の対応も必要ですが、著書にあるように、問題行動が出ていない状況での関わり方もまたとても大切だと言えます。

例えば、物をうまく扱えていること、丁寧に扱っていること、などが普段の活動内で見られている時に褒めるなどがあります(〝物を投げていないでしていること、壊さずに扱っていることを褒める″)。

著者も日頃から、子どもたちが良き行動をしている際に、できるだけ褒めることを心掛けています(そのためにも子ども発達課題を認識しておく必要があります)。

それも少し大げさに褒めるようにしています(インパクトを残すために)。

こうした日々の関わりの継続が、逆に問題行動の減少にも繋がっていると感じることがよくあります。

 

 

4.投げたり壊したりする行動の前後から分析してみる

応用行動分析学の視点を踏まえると、物を投げる・壊すといった行動の前後状況を分背して対応方法を考えていくことが大切です(〝投げたり壊したりする行動の前後から分析してみる″)。

つまり、先行事象→行動(物を投げる・壊す)→結果といった時系列・因果関係の分析です。

著者も、なぜ物を投げる・壊すのか?ということを理解していくために、応用行動分析学の視点を活用する場合もあります。

分析が深まっていくことで、どのような状況や場面で物を投げる・壊すといった行動が見られやすいのかといった、ある種の行動パターンが見えてくることがあります。

そうなると、対応方法の精度も高まっていくと感じています。

 

 


以上、【発達障害児に見られる物を投げる・物を壊すことへの対応】4つのポイントを通して考えるについて見てきました。

物を投げる・壊す行為には様々な背景要因と対応方法があるのだと思います。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も子どもたちの問題行動の意味を理解していきながら、現場での実践の質を高めていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「【不適応行動の原因について】4つの機能を通して考える

 

 

岩永竜一郎(2022)発達症のある子どもの支援入門-行動や対人関係が気になる幼児の保育・教育・療育-.同成社.

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