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【発達障害児に見られるイライラへの対応】SST・ペアトレ・感覚統合からのアプローチ

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発達障害児は、発達特性などが影響して、生活の様々な所で困り感が生じる場合があります。

著者は長年、療育現場で発達障害児支援を行っていますが、個々の発達特性や発達段階等を踏まえたオーダーメイドな支援はとても大切だと感じています。

 

それでは、発達障害児に見られるイライラしている状態に対して、どのような対応方法が有効だと考えられているのでしょうか?

 

そこで、今回は、発達障害児に見られるイライラへの対応について、SST・ペアトレ・感覚統合からのアプローチを通して理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「岩坂英巳・宮崎義博(2021)「うまくいかない」ことが「うまくいく」に変わる!発達障害のある子どもがいきいきと輝く「かかわり方」と「工夫」.幻冬舎.」です。

 

 

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イライラはなぜ生じるのか?

発達障害児がイライラする場合に多く見られる要因として〝感覚過敏″があります。

感覚の問題は、周囲の大人からすると理解しにくい・わかりにくい問題でもあります。

著者が見てきた発達障害児の多くに〝感覚の問題″、中でも〝感覚過敏″はとても多く見られていたという実感があります。

そのため、〝感覚過敏″がある状態で、外界からの様々な刺激を受けながら日々を過ごしていると、定型発達児以上に疲れる場合があります。

こうした〝感覚の問題″もまたイライラの要因になっていると現場を通して感じることができます。

その他、〝コミュニケーションの問題″、例えば、思ったことが通じない、相手の心理がよくわからない、困った際にうまく助けを求めることができない、なども、ストレス要因となります。

また、〝普段と違う環境″、例えば、予定の変更、行事、新奇な場面、などもストレス要因となります。

さらに、子どもの中には、何がストレスとなっているのかがうまく自覚できないことに加えて、疲労感に対する自己認知も弱い場合も多くあります。

このように、〝感覚の問題″〝コミュニケーションの問題″〝普段と違う環境″などが、イライラが生じる要因だと言えます。

 

 

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イライラへの対応について

著書には、イライラへの対応として、〝①SST(ソーシャルスキルトレーニング)″〝②ペアレントトレーニング″〝③感覚統合療法″の3つのアプローチ方法が記載されています。

 

 


それでは、次に、①②③のそれぞれのアプローチ方法について具体的に見ていきます。

 

① SST(ソーシャルスキルトレーニング)

以下、著書を引用しながら、SSTからのアプローチを見ていきます。

・体調ノートを作る

 

・自分の気持ちに気づき、言葉で表現する練習をする

 

まずは、〝体調管理″です。

著書には体調を管理するための一つの方法として、〝体調ノートを作る″方法が記載されています。

例えば、自分の疲労度について、〇、△、×などで日々記入したり、イライラやストレスがたまる出来事などがないか(なかったか)などを聞き取っていく(観察したり、子どもに関わる大人から情報を得るなど)ことが必要です。

ストレス要因やストレス強度を理解していくことで、ストレス対策が講じやすくなります。

 

次に、〝自己理解″です。

つまり、自分自身の心の状態を理解する力を身につけていくといった方法です。

例えば、絵カード言葉のカードを活用して、今の自分の気持ちを知り、他者に今の自分の状態を伝える練習をするなどがあります。

 

 

② ペアレントトレーニング

以下、著書を引用しながら、ペアレントトレーニングからのアプローチを見ていきます。

・できている行動に目を向ける

 

・しばらく様子を見てみる(見守る)

 

まずは、〝肯定的なフィードバック″です。

ペアレントトレーニングでは、親子の悪循環となっている関係をいかに断ち切り、好循環を生み出していくように練習することが大切な視点となっています。

そのため、イライラしていたとしても、言葉でその気持ちを伝えることができた、イライラしながらでも取り組めたことがあった、など褒めるポイント(できている行動)を探していくことが大切です。

 

次に、〝見守る・様子を見る″といった対応です。

様子の味方としては、しばらくそっとしておいて時間が経ったら話しかける、傍で様子を見る、話しかけても良いか本人に聞いてみるなどの方法があります。

これに対して、何らかの反応・返事があれば、その反応に対しても肯定的なフィードバックすることが大切です。

 

 

③ 感覚統合療法

以下、著書を引用しながら、感覚統合療法からのアプローチを見ていきます。

・本人が落ちつける環境をつくる

 

・答えないときには、正面から話し掛ける

 

まずは、〝不快な刺激を遮断し(遠ざけ)、心地よい刺激を与える″ことです。

例えば、静かな空間、物が少ない空間、光の少ない空間、また、ハンモックによる心地よい揺れ、手の感触から心地よさを感じるおもちゃなどが有効です。

また、事前にクールダウンエリアを確保し、子どもに伝えておくことも大切です。

 

次に、〝反応がない場合、話しかけ方を工夫する″ことです。

発達障害児には、注意や感覚などの問題から、大人の声がうまく入らないこともあります。

そのため、正面から話し掛けたり、肩を軽く叩いてこちらに気づいてから話し始めるなどの関わり方も必要です。

 

 


以上、【発達障害児に見られるイライラへの対応】SST・ペアトレ・感覚統合からのアプローチについて見てきました。

子どもがイライラするのには様々な背景要因があります。

そのため、個々に応じた関わり方・支援内容もまた工夫していく必要があります。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も発達障害児が抱える様々な困り感に対して、理解する目と支援する目の両方を養っていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「【不適応行動の原因について】4つの機能を通して考える

 

 

岩坂英巳・宮崎義博(2021)「うまくいかない」ことが「うまくいく」に変わる!発達障害のある子どもがいきいきと輝く「かかわり方」と「工夫」.幻冬舎.

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