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【発達障害児と信頼関係をつくるために大切な2つのこと】自閉症を例に考える

投稿日:2023年9月29日 更新日:

 

発達障害のある子どもと信頼関係をつくることはとても大切なことです。

著者は療育現場で様々な子どもたちとの関わりの中で、信頼関係を作ることの大切さを感じる一方で信頼関係をつくる難しさを感じることもあります。

 

それでは、発達障害児と信頼関係をつくるためにはどのような関わり方が大切になるのでしょうか?

 

そこで、今回は、発達障害児と信頼関係をつくるために大切な2つのことについて、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、自閉症を例に理解を深めていきたいと思います。

 

※この記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有する筆者が執筆しています。

 

 

今回参照する資料は、「小嶋悠紀(2022)小嶋悠紀の「特別支援教育・究極の指導システム」①.教育技術研究所.」です。

 

 

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信頼関係をつくるために大切な〝共感″と〝共有″

以下、著書を引用しながら見ていきます。

信頼できる大人の言うことなら聞くことができるのが、発達障害の子供たち。

 

信頼関係を構築するときに重要な対応となる「共感と共有」

 

著書の中では、発達障害児にとって信頼のおける大人であれば言うことを聞くことができると記載されています。

そして、信頼関係をつくるために大切な関わり方は〝共感″と〝共有″だとされています。

 

この視点は、著者のこれまでの療育経験に置き換えても腹落ちする感覚があります。

 

 


そのため、次に、この視点について、著書の経験談をもとに深堀していきたいと思います。

 

著者の経験談

 

信頼関係構築で大切だと感じること

著者が子どもたちとの関係性において信頼を築けていると感じる指標には大きく以下の3つがあります。

①自分の様々な気持ちを伝えてくれる

②困った時に相談しにくる

③いざという時には、こちらの話を聞いてくれる

 

①の〝自分の様々な気持ちを伝えてくれるは、子どもたちと喜怒哀楽、様々な体験を共有・共感することで、この人は安心できる人、話していて楽しい人、といった信頼をおいてもらえるという実感があります。

 

②の〝困った時に相談しにくるは、自分の困り感についてこの人なら理解してくれる、何とか解決方法を探してくれる、といったこれもまた信頼があるからこそ成り立つものであると感じます。

 

③の〝いざという時には、こちらの話を聞いてくれるは、著書の引用にあったように信頼関係が構築していないと成り立たないものだと感じます。

〝話を聞いてくれる″といっても勘違いしてはいけないのが、力で押さえつけるような関係性ではないということです。

子どもが萎縮してしまったり、この人に言っても怒られるだけだから言うことを聞いておこう、というような関係性は良い関係性ではありません。

あくまでも、信頼関係が成り立っているという前提上、〝話を聞いてくれる″という関係が大切であると感じます。

 

 

自閉症への関わり方を例に考える

さらに、こうした信頼関係を構築する上で著書にあったように、〝共感″と〝共有″はとても大切な関わり方であると感じます。

特に、自閉症(自閉スペクトラム症:ASD)の子どもたちは、独特な興味関心の世界をもっています。

そのため、本人の独特な世界を〝共有″していくこと(相手の世界に入り込んでいくという姿勢)が基本的な関わり方である感じます。

例えば、好きなアニメがあればその世界に一緒に入り込み会話を楽しむことで〝共有″世界が深まっていきます。

こうした深まりは信頼関係を構築する上でも非常に重要なものです。

また、本人がもつ独特な困り感について〝共感″的態度で接することも大切です。

例えば、聴覚過敏があり集団行動がうまくとれない子どもに、その子の苦しみを想像し声をかけて配慮したり、子どもがもつ独特なこだわりに対して対処するだけではなく、その子なりの理由や重要視していることがあるといった背景に目を向けていくこともまた大切です。

以上の内容は、定型発達児では見られることが少ないため、自閉症児の気持ちを想像する力が非常に重要になってきます。

そして、〝共感″や〝共有″を通して、関わる前には関係構築が難しいと感じていた自閉症の子どもたちとも徐々に良好な関係が築けていったという実感があります。

 

 


以上、【発達障害児と信頼関係をつくるために大切な2つのこと】自閉症を例に考えるについて見てきました。

発達障害児の中には、関係構築が非常に難しいケースも多くあります。

それでも、上記に見てきた内容を参考にしていくことで少しずつかもしれませんが、良好な関係が築けていったと感じたケースは著者の経験上非常に多くあります。

最後に、信頼関係の構築には一人の力ではなく、周囲の力も借りていくことがとても重要だと思います。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も子どもたちとより良い関係をつくっていけるように自分の関わり方を振り返ることも忘れないようにしていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 


参考となる書籍の紹介は以下です。

関連記事:「発達障害の支援に関するおすすめ本5選【初級~中級編】

 

小嶋悠紀(2022)小嶋悠紀の「特別支援教育・究極の指導システム」①.教育技術研究所.

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