〝社会性″とは、様々な定義や表現があるかと思いますが、一つ定義を取り上げると、〝人とある対象を共有し、その共有体験を楽しむといった共同行為″だと言えます。
関連記事:「【〝社会性″とは何か?】療育で〝社会性″を育てるために大切なこと」
それでは、〝社会性“は、具体的にどのような活動を通して育まれていくのでしょうか?
そこで、今回は、〝社会性“の発達で大切なことについて、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、〝協同活動“を通して考えを深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「長崎勤・中村晋・吉井勘人・若井広太郎(2009)自閉症児のための社会性発達支援プログラム‐意図と情動の共有による共同行為‐.日本文化科学社.」です。
〝社会性“の発達で大切なこと:〝協同活動″を通して考える
以下、〝協同活動″の特徴について、著書を引用していきます。
著書の中では、行為哲学者Bratmanが述べた〝協同活動″について引用しています。
協同活動は、
①参加者が参加しかかわっている活動に関して目標の共有、
②参加者が参加している活動に適した相互の役割を理解し遂行することにより、相互的な活動になる、
③参加者が参加活動において相互の役割を理解し、役割を果たそうとする他者に、必要に応じて支援を行う、
という3つの特徴を満たすものであると述べている。
著書の内容から、〝社会性″の発達において大切な〝協同活動″は、まずは、お互いが目的を共有していること、そして、各々に役割があり、役割のある他者に必要に応じて支援を行うものとされています。
つまり、各々がお互いの役割を意識せずに、活動を遂行しているような状態は〝協同活動″とは言えないということになります。
あくまでも、共通の目標において、それぞれが役割を意識しており、各々を助け合う関係が〝協同活動″と言えるということになります。
それでは、次に著者の療育経験から〝協同活動″の例を取り上げて見ていきます。
著者の経験談
著書の療育現場では様々な活動行われています。
その中で、〝協同活動″の例として、〝集団遊び″の中から〝ケイドロ″を例に見ていきます。
〝ケイドロ″とは、警察と泥棒にチームが分かれて、時間内に警察が泥棒全員を捕まえるとゲーム終了(警察の勝利!)、あるいは、泥棒が時間内に一人でも残ればゲーム終了(泥棒の勝利!)という遊びです。
警察チームは泥棒を捕まえると(タッチすると)、牢屋と言われるエリアに泥棒を入れます。
捕まった泥棒は、同じ泥棒チームからタッチされると牢屋から抜け出すことができます。
著者の療育現場では、大人チーム(警察か泥棒)と子供チーム(泥棒か警察)にわかりやすくチームを分けています。
仮に、子供チームが泥棒役になったとします。
子供たちは、制限時間内に警察から逃げ切るという共通の目標を持ち、それぞれを助け合うという役割もまた出てきます。
例えば、足が遅い低学年児を助けるのが足の速い子どもの役割という感じです。
このように、〝ケイドロ″といった遊び一つを取り上げて見ても、遊びの中に様々な〝協同活動″があるということを感じます。
こうした〝協同活動″を通して、子共たちの中には、お互いを仲間だと認識し、それぞれの得意不得意などを、役割を通して理解していきます。
様々な活動の中には、活動の目標があり、それに向けて自分の役割、他児の役割があるという経験の蓄積は、〝社会性″の育ちに貢献するものだと現場での実践を通して感じることができます。
以上、【〝社会性″の発達で大切なこと】〝協同活動″を通して考えるについて見てきました。
〝協同活動″は、生活の様々な場面であるかと思います。
〝社会性″の発達で大切なことは、それぞれが単独で活動するのではなく、繋がりを持ちながら互いに協力することだと思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場でお互いに助け合いながらチームで取り組むということを大切にしていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
関連記事:「【〝社会性″の〝発達段階″について】3つの〝発達段階″について考える」
長崎勤・中村晋・吉井勘人・若井広太郎(2009)自閉症児のための社会性発達支援プログラム‐意図と情動の共有による共同行為‐.日本文化科学社.