自閉症(自閉症スペクトラム障害:ASD)とは、対人・コミュニケーションの困難さと限定的興味と反復的(常同)行動を主な特徴としています。
著者は療育現場で発達に躓きのある子どもたちと多く関わっています。
その中には、ASDの子どもも多くおり、対人面の苦手さやこだわりなど個人差はありますが特性としてよく見られます。
こうしたASDの特性は、青年期や成人期など大人になっても持続すると言われています。
それでは、こうした自閉症の特性の合理的配慮を継続することの重要性として、どのような意味があるのでしょうか?
そこで、今回は、自閉症の特性への合理的配慮の重要性について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、青年期・成人期を見据えての配慮の意味について理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は、「本田秀夫(2013)子どもから大人への発達精神医学:自閉症スペクトラム・ADHD・知的障害の基礎と実践.金剛出版.」です。
自閉症(ASD)の特性への合理的配慮の重要性について
以下に著書を引用しながら見ていきます。
近年では、どんなにわずかでもASの特性を有するケースでは、その特性に対する十分な配慮がさまざまな生活環境において求められることが強調されている。ASの特徴を見過ごされて青年期以降に初診したケースでは、全般的な自信の欠如と意欲の低下、および対人不信あるいは対人回避に陥っていることが多いため、この状況からの支援は困難を極める。たとえ非定型であってもASの特徴を軽視すべきでないのは、このためである。
著書の内容で着目すべき点は、ASD特性の配慮を適切に受けなかった際に、青年期以降の人の場合に、自信や意欲の低下、そして、対人関係においても人への信頼や人への回避的な傾向があるなど、その後の支援が難しい状態になることが指摘されています。
ちなみにASとは、ASD(Autism Spectrum Disorder)のうちのDisorderを抜いたものになります。
簡単にいうと自閉的な特徴を有するといった非常に幅の広い概念のことになります。
繰り返しになりますが、ASDの特性への配慮が子どもの頃から適切に行われていないと、青年期・成人期以降にマイナス要因(自信や意欲の低下、対人面の問題など)が蓄積され、改善されずに残存してしまうこと、そして、その状態からの支援は非常に難しくなるということが危惧されています。
それでは、次に著者の経験も踏まえ特性への配慮の重要性について言及していきたいと思います。
著者の経験談
著者はこれまでASDの方、あるいはASの方(診断などは受けていないがASの特性がある人)と関わる機会が多くありました。
その中で子どもの頃から、周囲から適切な配慮を受けなかったことにより、青年期以降の発達で特に躓いてしまった事例があります。
事例:自閉症のAさん
Aさんは、高校入学頃に自閉症の診断を受けました。
Aさんは高校入学頃までは、独自の力で定型児・者と同じような環境で特別な配慮を受けずに育ってきました。
そのこともあってか、青年期頃のAさんは、とにかく自分に自信がなく、また、意欲もない(普段の生活がやっとという感じ)状態でした。
また、もともと持っているASの特性もあり、人と関わることを回避する傾向が続いていました。
その後も、適切な配慮を受けたというよりは、Aさん自身の努力でなんとかやってきたという感じでした。
その中で、福祉的なサポートの力もかりながら徐々に自己理解を深めていったAさんですが、これまでの配慮を受けずにきた失敗経験の積み重ねは想像以上に生きづらさを引きずるものになっていたように思います。
その後のAさんは、少しずつですが、やりたいことを見つけ、意欲を少しずつ取り戻し、信頼できる人も増え、人への関わり方も不器用ながら以前よりも回避的にならずに関わることができるようになっていきました。
Aさんの事例を振り返って見ても、特性への配慮を子どもの頃から受け続けることは、青年期・成人期を見据えた際に、自分への自信や意欲の維持や向上、人との関わり方などにおいて非常に重要な影響を及ぼすものだと実感できます。
以上、自閉症の特性への合理的配慮の重要性について-青年期・成人期を見据えて-について見てきました。
私自身、現在、療育現場で発達に躓きのある子どもたちと関わっているため、現在だけに焦点を当てずに、今の関わりが今後どのような影響を子どもたちに与えるのかも考えながら、特性への適切な配慮ができるように実践からの学びを継続していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
関連記事:「【合理的配慮とは何か?】発達障害児・者支援の経験を通して考える」
本田秀夫(2013)子どもから大人への発達精神医学:自閉症スペクトラム・ADHD・知的障害の基礎と実践.金剛出版.