自閉症(自閉症スペクトラム障害:ASD)とは、対人・コミュニケーションの困難さと限定的興味と反復的(常同)行動を主な特徴としています。
ASDの人たちは、人によって違いはありますが、人よりも物に関心が向かいやすく、自分の興味のある世界に没頭するという特徴があります。
それでは、このようなASDの人たちが他者との関わりを通して、外の世界に関心を向けていくにはどのような条件が必要なのでしょうか?
今回は、著者の療育経験も踏まえて、ASDの支援がうまくいくための条件についてお伝えします。
今回、参照する資料は「岡田尊司(2020)自閉スペクトラム症:「発達障害」最新の理解と治療革命.幻冬舎新書.」です。
ASDの支援がうまくいく条件とは?
以下、著書を引用します。
ASDの療育やトレーニングを効果的なものにするためには、その子自身が意欲的に取り組むことがとても重要になります。意欲的に取り組むという点で最悪の状態は、本人がシャッターを下ろし、外の世界に関心を向けていないときに無理矢理教えたり、トレーニングしたりすることです。
著者の内容から、ASDの支援がうまくいく条件とは、その人自身が意欲的に主体的に取り組めるような関わりや環境設定などをしていくことが重要だと言えるかと思います。
ASDの認知は定型の人とは異なるため、無理に定型の人の世界に合わせようとしたり、ASDの人が、自分が好きな世界に没頭している状態の時に、無理に他のことを教えようとするなどがまずい関わりとされています。
さらに、著書では支援の鍵を握る点について以下の内容を言及しています。
では、どうすれば蓋を開けて、吸収できる状態にすることができるでしょうか。その場合に鍵を握るのは、本人の興味です。本人が興味を向けていることを大事にします。教える側、指導する側の興味ではなく、本人の興味に寄り添うのです。
著者の内容から、ASDの興味関心の世界を理解しようとする姿勢や、興味関心から働きかけることがとても大切だとされています。
それでは、こうしたASDの支援がうまくいく条件を踏まえ、次に著者の療育経験をお伝えします。
著者の経験談
著者は以前、児童発達支援センターで未就学児への療育をしていました。
その中で、ASDのお子さんも多くいました。
ASDのお子さんは自分なりの興味の世界を持っていることが多くありました。
当時の私は、半ば無理矢理、彼らが自分の世界に没頭しているときに(シャッターを下ろしているとき)に、関わっていたように思います。
例えば、一人ミニカーで遊んでいる時に他の遊びに誘うなどです。
その時は、私なりに、その子の世界を広げるために必死に働きかけていたように思いますが、結果としてなかなかうまくいかずでした。
関係性も含め関わりがうまくいくようになったのは、彼らの世界観を大切に、こちら側がそれを教えて?という感じで少しずつ距離を縮めていくことでした。
例えば、ミニカーを一つ一つ並べて遊んでいる少し横で、同じようにミニカーを並べてみるなど、同じことをしてみました。
すると、彼の方から自分の興味のある物を通して、私の方に関心を持つようになってきました。
そこから少しずつ関係ができてきて、私がすることを見るようになってきました。
その後、私からの遊びの誘い掛けに応答する様子も増えていき、これまでしなかった遊びをするようになっていきました。
このように彼らの興味関心を切り口に、そこから徐々に関係性をつくり、興味関心を通して、少しずつ世界を広げることができるようになりました。
私がすることに興味を示し、意欲的に関わる様子が見えてきました。
このようにASDの支援は、興味関心からのアプローチが大切であり、そこから外の世界に対して意欲的に行動する様子が増えていったという経験が私の中には多くあります。
彼らの世界を知ることや関係性をつくるには、とても時間がかかるかと思いますが、こうした関わりが基盤となり、その後の人生が大きく変わっていくのだと思います。
今後も、ASDの特性を理解していきながら、彼らが意欲的に取り組んでいけるように、興味関心を通した関わりを大切にしていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
岡田尊司(2020)自閉スペクトラム症:「発達障害」最新の理解と治療革命.幻冬舎新書.