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【自閉症児の集団参加のコツについて】療育経験を通して考える

投稿日:2024年7月9日 更新日:

 

自閉症(自閉スペクトラム症:ASD)とは、〝社会性の障害″〝コミュニケーションの障害″〝こだわり行動″を特徴とする発達障害です。

自閉症の子どもたちは、上記の特徴が背景となって、〝集団遊び″に難しさを抱えているケースが多く見られます。

そのため、集団遊びへの参加の工夫、そして、集団遊びをうまく行えるための工夫が必要になります。

 

それでは、自閉症の子どもたちがうまく集団に参加できるためには、どのような工夫が必要なのでしょうか?

 

そこで、今回は、自閉症児の集団参加のコツについて、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。

 

※この記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有する筆者が執筆しています。

 

 

今回参照する資料は「白石雅一(2024)おもちゃ教材で育む人間関係と自閉スペクトラム症の療育~親・保育園・幼稚園・学校・児童発達支援・放課後等デイサービスのためのガイド~.東京書籍.」です。

 

 

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自閉症児の集団参加のコツについて

以下、著書を引用しながら見ていきます。

集団参加は、ASDの子どもたちの「強み」を活かせるところから、徐々に進めていきましょう。

 

「部分参加」でも「キラリ!」と光る活躍が集団内で徐々に評価されていき、ASDの子どもたちの役割や居場所が確保されて、集団での行動の機会も増え、適応力も向上していくことを期待していきます。

 

著書の内容から、自閉症児の〝集団参加″のコツとして、本人の〝強み″を活かした〝部分参加″的なアプローチも有効な方法であると考えられています。

自閉症児にとって、〝集団遊び″の全体像を把握して、場面・状況に応じて、臨機応変に集団に適応することはとても難しいことです。

そのため、〝部分参加″といったアプローチから入り、その中で、本人が周囲から好まれる・本人が楽しいと感じる〝強み″を集団内で活かせる方法を考えていくことが必要です。

〝部分参加″の頻度を高めていくこで、徐々に集団内での自信の獲得に繋がり、その結果、集団で過ごす頻度が増し、適応力が向上していくことが重要だと言えます。

 

 

著者の経験談

著者は長年の療育経験を通して、自閉症児も含む発達障害児が〝集団遊び″を通して様々な力を身に付けていく様子を多く見てきています。

そして、〝集団遊び″を進める上で、まず前提として、〝集団参加″を促すコツを見出していくこともまた大切だと感じています。

今回は、〝集団参加″への促しが成功した事例について紹介していきます。

 

小学校高学年のAさん(当時)

当時のAさんは〝集団遊び″に興味はあるも、自分の思い通りに事を進めたい欲求が強く、なかなかうまく〝集団参加″が難しい状態が続いていました。

一方で、Aさんには、目新しさに加えてユーモアのあるごっこ遊びを構想する力がありました。

Aさんを担当していたスタッフは、持ち前のAさんの力が発揮できるように、ある程度、時間と場面を設定した上で、他児をAさんの遊びに参加するような環境調整並びに関わり方を工夫していきました。

最初はあまり乗り気ではなかった周囲の子どもたちも、一度、Aさんが構想した遊びに参加することで楽しさを実感するようになっていきました。

こうした成功体験が少しずつAさんに積み重なることで、Aさんは自信を持って意欲的に他児を遊びに誘う様子が増えていきました。

ある意味、自らの遊び(〝強み″)を活かして、〝集団遊び″を作っていくという非常にユニークな方法だと言えます。

通常ならば、自分がいかにして〝集団参加″できるかどうか、どのようにして〝集団″に入っていくかを考える所ですが、Aさんの場合は、むしろ、他児を〝集団参加″させる環境を作り出すことで〝集団遊び″を作り上げていくといったこれもまたとても面白い方法だと言えます。

Aさんは自分の〝強み″を発揮していくことで、徐々に周囲を巻き込み、その結果、〝集団遊び″をうまく立ち上げる機会が増えていきました。

Aさんの遊びに参加した子どもたちは、こうしたAさんの取り組み・遊びの内容を通してAさんに対して徐々に好感度を高めていくようになっていきました。

 

 


以上、【自閉症児の集団参加のコツについて】療育経験を通して考えるについて見てきました。

自閉症の子どもたちは、〝集団遊び″に難しさがある一方で、関わり方・接点の作り方を工夫していくことで、〝集団遊び″での成功体験を積み重ねていくことができるのだと思います。

その際に、自閉症児が持つ〝強み″は何かを把握しておくことはとても大切だと思います。

それは、〝強み″が集団内で認められることで、自信の獲得に繋がるからです。

そして、〝強み″を活かす方法により他児から認められる機会が増えるからです。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で関わる子どもたちの良さ・強みを基点に他児との接点を作り集団遊びを盛り上げていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「【自閉症児の集団遊びで身に付く力とは?】療育経験を通して考える

関連記事:「【自閉症のこだわり行動の強みとは?】療育経験を通して考える

 

 

白石雅一(2024)おもちゃ教材で育む人間関係と自閉スペクトラム症の療育~親・保育園・幼稚園・学校・児童発達支援・放課後等デイサービスのためのガイド~.東京書籍.

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