自閉症(自閉スペクトラム症:ASD)とは、〝社会性の障害″〝コミュニケーションの障害″〝こだわり行動″を特徴とする発達障害です。
〝こだわり行動″には、〝物″〝人″〝時間″〝手順″など様々なこだわりがあります。
〝こだわり行動″は、別な言い方をすると、〝変化への抵抗″とも捉えることができます。
〝こだわり行動″と似た症状・行動には、〝強迫症″〝依存症″〝常同行動″があると言われています。
それでは、〝こだわり行動″と他の症状・行動(〝強迫症″〝依存症″〝常同行動″)には、どのような違いがあると考えられているのでしょうか?
そこで、今回は、自閉症のこだわり行動の定義をはじめとして、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、他の症状・行動との違いを通して理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「白石雅一(2024)おもちゃ教材で育む人間関係と自閉スペクトラム症の療育~親・保育園・幼稚園・学校・児童発達支援・放課後等デイサービスのためのガイド~.東京書籍.」です。
自閉症の〝こだわり行動″の定義について
以下、著書を引用しながら見ていきます。
ある特定の物や状況に著しい執着を示し、それを常に一定の状態に保っていようとする欲求に本人が駆られた結果、それが変わること、変えられることを極度に嫌うようになり、行動面において反復的な傾向があらわになること。
著者の〝白石雅一″さんの定義になります。
キーワードは、〝変えない″〝やめない″〝始めない″です。
関連記事:「【自閉症児のこだわり行動の3つの特徴】〝変えない″〝やめない″〝始めない″を通して考える」
著者はこれまでの療育経験を通して、自閉症児・者の様々な〝こだわり行動″を体感してきました。
例えば、特定の〝物″へのこだわり(車輪・道路標識、ガソリンスタンドのマークなど)や、この〝人″でないと〝ダメ!″といったこだわり、〝時間″へのこだわり(○○時までに必ず○○するなど)、〝手順″へのこだわり(○○をやってから○○、そして○○といった順番・手順のルーチン化など)があります。
定型発達児・者にももちろんこだわりはあると思います。
一方で、自閉症児・者には〝こだわり行動″の対象が非常に限定されていること、そして、変化への抵抗が非常に強いことが特徴してあると実感しています。
そのため、自閉症児・者の〝こだわり行動″について深く理解していくことは、関わり方も含めて、とても大切だと感じています。
一方で、〝こだわり行動″と似た症状・行動もあります。
次に、この点について見ていきます。
〝こだわり行動″と他の症状・行動との違いについて
以下、著書を引用しながら見ていきます。
こだわり行動:好きだから、やめたくない
強迫症:やめたいのに、やめられない
依存症:何にも増して、快感や興奮を求める結果、「ダメ」だと分かっていても、やめられない
常同行動:自己刺激行動と同じ。ASDの人以外にも見られる行動
著者の内容から、〝こだわり行動″と似た症状・行動には〝強迫症″〝依存症″〝常同行動″があり、これらは一見すると〝こだわり行動″と似ているものの、上記の内容から明確な違いがあることが分かります。
中でも、〝常同行動″は、自閉症児・者にはよく見られますが、他の人にも見られる行動だと考えられています。
また、大人の精神医学系の書籍を読むと〝強迫症″と〝こだわり行動″が非常に似たケースとして登場する例もよく見られます。
〝依存症″も最近では、ネット・ゲーム依存、ギャンブル依存などが多く話題に上がりますが、これも〝こだわり行動″とは異なる症状・行動となっています。
こうした症状・行動の違いについて理解を深めていくことは、その人の〝問題行動″〝困り感″の正確な理解と対応に繋がっていくのだと言えます。
逆に、誤った理解をしてしまうことは誤った対応に繋がるリスクがあると言えます。
以上、【自閉症のこだわり行動の定義について】他の症状・行動との違いを通して考えるについて見てきました。
自閉症のこだわり行動は自閉症を特徴づけるものの一つであると同時に、他の症状・行動と一見すると間違われる可能性があります。
こだわり行動について、正しい理解をしていくためにも、こだわり行動の定義を実際の経験(事例)と照らし合わせて考えていきながら、同時に、他の症状・行動との違いも押さえていく必要があるのだと言えます。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も自閉症のこだわり行動について現場での経験をベースに理解を深めていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
関連記事:「自閉症のこだわり-こだわりの強さとその対象について考える-」
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白石雅一(2024)おもちゃ教材で育む人間関係と自閉スペクトラム症の療育~親・保育園・幼稚園・学校・児童発達支援・放課後等デイサービスのためのガイド~.東京書籍.