自閉症(自閉スペクトラム症:ASD)とは、〝社会性の障害″〝コミュニケーションの障害″〝こだわり行動″を特徴とする発達障害です。
上記の特徴にもあるように、自閉症の行動特徴を理解し対応していくためにも、〝こだわり行動″への理解はとても大切です。
それでは、自閉症児・者のこだわり行動が悪化すると、どのような状態になると考えられているのでしょうか?
そこで、今回は、自閉症児・者のこだわり行動の悪化について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、〝パニック″と〝自傷″を通して理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「白石雅一(2024)おもちゃ教材で育む人間関係と自閉スペクトラム症の療育~親・保育園・幼稚園・学校・児童発達支援・放課後等デイサービスのためのガイド~.東京書籍.」です。
こだわり行動の悪化:〝パニック″と〝自傷″について
以下、著書を引用しながら見ていきます。
ASDの人は、こだわり行動が無下に制止されたり、乱暴に扱われたりすることで、パニックに陥り、自傷行動を併発させることがよく知られています。そのパニックは、フラッシュバックと連動するので、錯乱状態が頻発するようになり、併せて自傷行動も増えていきます。
著書の内容から、自閉症児・者に見られる〝こだわり行動″は無理に制止されることで状態悪化に繋がると記載されています。
状態悪化の例として、〝パニック″や〝自傷″があります。
〝こだわり行動″が制止されると、〝パニック″を起こし、〝パニック″に〝自傷行動″が結びつき、〝自傷行動″が〝こだわり行動″となって〝自傷行動″が繰り返される状態を、著書では、〝負の連鎖のトライアングル″の形成と呼んでおり、強度行動障害の典型的な例だとも言われています。
また、著書にもある通り、自閉症の人は〝フラッシュバック″を起こすことがあるため、過去の負の記憶(こだわり行動に対する過度な制止の状況など)が急に蘇り、〝パニック″や〝自傷″がさらにエスカレートするとも言われています。
著者も、自閉症児・者との関わりから、〝行動障害(強度行動障害)″の背景には、周囲の過度な対応・関わりがあると思われるケースが多くあると感じています。
そういう著者自身も、10年以上前に関わることのあった自閉症児の〝こだわり行動″を無理に止めようとしたことがあります。
その子は、特定の遊びをしており、帰りの時間が迫っていてもなかなか遊びを止めることができずにいました。
そこで、著者は少し強引に遊びを止めることを促しました。
すると、翌日以降、著者の顔を見ると泣き出す、叩いてくるなどの行動を見せるようになりました。
おそらく、著者の過度な対応が辛い記憶として残っていたのだと思います。
そこからの信頼関係の形成・回復には非常に時間がかかりましたが、結果、彼らにとって、‟こだわり行動″が止められること(無理解な対応)は、自分の世界が壊されてしまうといった恐怖に繋がるものだと実感できるようになりました。
こだわり行動の悪化を防ぐために大切なこと
以下、著書を引用しながら見ていきます。
ASDの人のパニックは、「陥らせないこと」が第一です。そして、自傷行動も「起こさせないこと」が大事で、具体的には、「自傷行動の代替行動を与えること」が大きな防止策になります。
著書の内容から、〝こだわり行動″の悪化は早急に対応していくことが大切です。
そのためにも、〝パニック″には、〝陥らせないこと″を心がけ、〝自傷行動″には、〝代替行動の提示″などが具体的な方法としてあります。
ここから先は、著者の経験談を踏まえて見ていきます。
〝パニック″への対応として、著者はまずは〝クールダウン″をはかるための〝環境調整″をしています。
例えば、静かな環境、刺激になる物がない(少ない)場所で、気持ちが落ち着くまで待つといった方法です。
それに加えて、〝水を飲む″〝感触遊び″〝外遊び″〝好きな音楽をかける″など〝好きな感覚刺激を取り入れる″ことで、徐々に気持ちが穏やかになって行くことがよくあります。
〝自傷行動″への対応として、著者はまず〝他の物に気をそらす″ような関わり方をしています。
思いがうまく叶わないといった状態において、それを補う遊びの提案などです。
その他、〝嫌な気持ちが伝わったという経験″もまた必要です。
例えば、やりたかったこと(願い)あるいは嫌だったことをイラストで聞く、あるいは、言葉の表出があれば言葉に置き換えて聞くなど、本人の気持ちが相手に伝わったということもまた重要だと思います。
〝自傷行動″がエスカレートすると、その子の安全面を重視することが多くなりがちですが、それと同時に背景要因についても理解を膨らませていくことが大切だと思います。
以上、【自閉症児・者のこだわり行動の悪化について】〝パニック″と〝自傷″を通して考えるについて見てきました。
こだわり行動は〝止むに止まれぬ行動″だとも言えます。
そのため、本人の頑張りでは制御できないところが多くあります。
大切なことは、こだわり行動について理解をしていきながら、状態悪化に繋がらない対応を心がけることだと思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も自閉症のこだわり行動の理解について実践を通して学びを深めていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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