〝愛着(アタッチメント)″とは、〝特定の養育者との情緒的な絆″のことを指します。
子どもは養育者との愛着関係を基盤として、その後の対人関係を発展させていきます。
子どもとの愛着関係の中で、〝父親″も重要な存在になります。
一方で、〝父親″にも様々なタイプの違いがあります。
タイプの違いを理解していくことで、子どもとの愛着関係の質の違いについての理解を深めていくことに繋がります。
それでは、〝父親″といった〝父性のタイプ″にはどのような違いがあると考えられているのでしょうか?
そこで、今回は、父親との愛着について、4つの〝父性のタイプ″の違いから理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「岡田尊司(2015)父という病.ポプラ新書.」です。
4つの〝父性のタイプ″について
著書には、以下の視点を元に4つのタイプに分類できると記載されています(以下、著書引用)。
父子関係は、①愛着の安定度、②不安型か回避型かといった愛着スタイル
①父性的なかかわりが優勢か、②母性を代償するかかかわりが優勢か
以上の違いによって分類される4つの〝父性のタイプ″が次です。
①愛情深く、強い父親
②自己愛的な父親
③母性的な父親
④回避的な父親
それでは、次に、4つのタイプについて具体的に見て行きます。
①愛情深く、強い父親
以下、著書を引用しながら見ていきます。
一つは、オキシトシンもバソプレシンも豊かなタイプだ。このタイプは、愛情深く、絆も安定していると同時に、行動的で、強くたくましい父親だ。
〝愛情深く、強い父親″とは、まさに周囲から見れば〝理想とする父親像″だと言えるものです。
このタイプは、著書にあるように、子どもに対して愛情をしっかりと注ぎながら、家庭や仕事についても引っ張っていく強くて頼りがいのあり、たくましい父親だと言えます。
もちろん、父親としては申し分ないタイプですが、父親が完璧であったり、偉大な場合において、子どもは委縮したり、劣等感を抱く場合もあります。
つまり、一見すると完璧であるこのタイプにおいても、父親が与える影響は、子どもにすべてプラスとして作用するわけではないと言えます。
②自己愛的な父親
以下、著書を引用しながら見ていきます。
このタイプは、攻撃的で、行動力があり、男性的だが、愛情や絆の安定性に欠けるタイプだ。
このタイプは、著書にあるように、男性としての行動力や闘争力などがある一方で、子どもへの愛情に欠けるといった父親だと言えます。
愛着が安定しておらず、自分の感情や気分で子どもと接することが多いため、自己中心的だとも言えます。
例えば、子どもが優秀であったり、学業やスポーツなどで良い成果を上げている場合には、大いに称賛する一方で、挫折や失敗などが重なると、急に冷たく接するなど、子どもへの愛情に関して一貫した愛情を示すことができないといった特徴があります。
③母性的な父親
以下、著書を引用しながら見ていきます。
子どもに対しては愛情深く、よく世話をし、絆もしっかりしている。ただ、攻撃性や行動力には欠け、穏やかで落ち着いた生活を好む。
このタイプは、著書にあるように、男性的な行動力や冒険心などに欠ける一方で、子どもに対して愛情深く、世話好きな父親だと言えます。
家庭での育児には積極的であり、仕事以上に家庭を優先する傾向があります。
そのため、母親代わりの役割を担う場合もあると考えられています。
一方で、男性性に欠ける面があるため、子どもの過度な甘えを許してしまうことが影響して、子どもが社会適応上問題となる発達を示してしまう場合もあると言われています。
④回避的な父親
以下、著書を引用しながら見ていきます。
愛情や子どもへの関心が乏しいだけではなく、行動力や冒険心にも欠け、いざというときも弱々しく、雄々しさにも欠ける。
このタイプは、著書にあるように、子どもへの愛情に欠けるだけでなく、男性としての行動力や冒険心にも欠けるといった、父親としての存在感が最も薄いことを特徴としています。
このタイプには、〝自閉スペクトラム症(ASD)″や〝回避性愛着障害″などの特性・特徴を有している場合もあると考えられています。
〝回避的な父親″を家庭に持つことで、非常に苦労するのが家庭の負担が〝母親″に多分に圧し掛かるといった状態を生みやすいことです。
最近、よく聞く〝カサンドラ症候群″もこのタイプによく見られるものであると言えます。
以上、【父親との愛着について】4つの〝父性のタイプ″の違いを通して考えるについて見てきました。
父親との愛着を考えた場合、〝父性のタイプ″に着目することで、子どもとの愛着関係の特徴をより深く理解していくことができるのだと思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も愛着への理解を深めていくことで、様々な対人関係の中で子どもはどのようにして発達していくのかといったヒントを学んでいきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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岡田尊司(2015)父という病.ポプラ新書.