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【アタッチメントネットワークとは何か?】療育経験を通して考える

投稿日:2024年5月17日 更新日:

愛着(アタッチメント)″とは、〝特定の養育者との情緒的な絆″のことを指します。

最近の愛着研究によれば、子どもは様々な他者との関わりを通して〝愛着関係″を発達させていきます。

愛着関係の発達においてキーワードとなるものの一つに〝アタッチメントネットワーク″があります。

 

それでは、アタッチメントネットワークとは一体どのようなものなのでしょうか?

 

そこで、今回は、アタッチメントネットワークとは何かについて、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「篠原郁子(2024)子どものこころは大人と育つ:アタッチメント理論とメンタライジング.光文社新書.」です。

 

 

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アタッチメントネットワークとは何か?

以下、著書を引用しながら見ていきます。

近年、アタッチメント・ネットワークという表現が注目されています。いろいろな大人との間のアタッチメント関係に囲まれて、安心感に守られていることが、子どもが自分の人生を力強く、幸せに生きていくことの大きな基盤になっていくというイメージです。

 

著書の内容から、〝アタッチメントネットワーク″とは、様々な大人との愛着関係の中で安心感を持つことで、その後の人生をより意欲的により幸せに生きていく基盤となる概念だと言えます。

子どもは親を中心に、祖父母、親戚、先生など様々な大人との関わりを通して成長・発達していきます。

愛着″とは、一人の重要な他者との関わりを基点として育まれるものですが、〝アタッチメントネットワーク″は、様々な愛着関係を抱くことのできる複数の他者との関わり・ネットワークが意味を持つという視点だと言えます。

このことは、人は社会の中で育つ・心が育まれていくといったことに通じる大切な考え方だと言えます。

 

 

著者のコメント

著者個人のこれまでの人生を振り返って見ると、愛着の基盤は母子関係にあったことは間違いないと感じています。

その一方で、それ以外にも、様々な重要な他者との関わりを通して育まれてきた部分も多いにあると感じています。

例えば、祖父母、習い事の先生、幼稚園の先生、などは少なからず自分の人生に影響を与えてくれたと思います(当時は、非常に大きな影響だったと言えます)。

母子関係など重要な一人の大人との関わり以外にも、自分のことを大切に思ってくれる人の存在、そして、安心感を与えてくれる人の存在は非常に大きな支えになると思います。

 

そして、かつての自分が〝育てられる側″であったことが、今では、〝育てる側″になって見てはじめて、〝アタッチメントネットワーク″の持つ大切さを強く感じるようになりました。

その理由は、療育現場で関わる子どもたち、そして、その保護者が多くのことを教えてくれたと思っています。

例えば、親としっかりとした愛着関係を形成している子どもであっても、親の不安定な心理状態や家事や仕事のストレスなどから、時に安定した避難所として親が機能しないことがあるかと思います。

もちろん、子どもはそのような親の大変さや本当は自分のことを大切に思ってくれていることは心では感じていると思います。

しかし、何となく不安である、満たされないイライラ感がある、意欲的になれない、など様々な心情を子どもは抱いて生きていると思います。

そのため、こうした状態において、親だけではなく、他の大人が子どもに安心感を与えることで、子どものモヤモヤした気持ちを支えることに寄与すると考えます。

さらに、自分のことを支えてくれる大人の存在・ネットワークが強固にあることは、どこかで重要な大人との関係が揺らいだ際の支えになると思います。

こうした実感を踏まえて、療育現場で関わる子どもたちが、療育での活動を通して、〝愛情のエネルギー″そして、〝意欲のエネルギー″がうまく充電されていくことがとても大切だと著者は感じています。

もちろん、うまく充電される日とそうでない日がありますが、著者はできるだけ〝愛情のエネルギー″を基盤に〝意欲のエネルギー″を引き出していける関わり方を大切にしています。

そして、こうした関わりは、親以外の養育者でも十分できる所がある(互いに補い合える)と感じています。

 

 


以上、【アタッチメントネットワークとは何か?】療育経験を通して考えるについて見てきました。

子どもたちは〝社会″の中で育っていきます。

〝地域社会″が衰退していく傾向にある現代社会において、放課後等デイサービスなどを通して、子どもたちが様々な他者との関わりから安心感を得ることはとても大切なことだと思います。

そして、そのためにも、著者は子どもたちに安心感を与えるための関わり方を絶えず考え実行していくことが重要だと思っています。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後もアタッチメントネットワークの概要の重要性を認識していきながら、療育現場でできる実践を行っていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「【愛着の発達に影響する要因について】3つのモデルを通して考える

 

 

篠原郁子(2024)子どものこころは大人と育つ:アタッチメント理論とメンタライジング.光文社新書.

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