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発達障害という概念を知ることの大切さ:自閉症を例に考える

投稿日:2020年6月11日 更新日:

自閉症、ADHD、学習障害、発達性協調運動障害などのことを発達障害と言います。

自閉症は対人関係やコミュニケーションに困難さを有するもので、ADHDは不注意・多動性・衝動性などを主な特徴としています。

学習障害は「読み」「書き」「計算」など学習の困難さを特徴としており、発達性協調運動障害は、運動の困難さを特徴としています。

こうした発達障害への理解が近年著しく進んできている印象があります。

私自身、これらの発達障害について実際に当事者の方と接してみてその特徴や困難さを知ることができたと思っています。

今回は、発達障害を知るとはどういうことなのか私のこれまでの経験を踏まえてお伝えしていこうと思います。その中で今回は、自閉症について取り上げてお伝えしていきます。

私自身、前述した発達障害の中でも自閉症の方と関わることが最も多くありました。

それは、学生時代のボランティア活動や実習先の現場、療育施設、放課後等デイサービス、グループホームといったフィールドでの出会いでした。

自閉症とは、コミュニケーションや対人関係など社会性の困難さやこだわり行動などを特徴としています。

自閉症といっても様々なタイプの方がおります。典型的な自閉症というタイプの方から、知的に遅れのない高機能と言われる方、そして、自閉症の特性が少し見られるというグレーの方まで幅をとると非常に多様です。

その多様さは、自閉スペクトラム症という言葉にも見られます。スペクトラムとは連続体を意味しており、すべてはどこかで途切れず地続きに繋がっているということです。

ですので、私が最初にテキストなどで見た自閉症の定義や行動特徴と、現場の当事者の方と関わった時の感覚とではズレがありました。スペクトラムなので当然かと思います。

私がこれまで自閉症の方の中である種対極にあると感じたのは、重度の自閉症の方と知的に遅れはないが少し自閉症の特性が見られるという場合です。

重度の自閉症の方の場合には、当然、知的な遅れという視点も入ります。ですので、自閉症という枠組みだけで行動特徴を理解することに難しさがでてきます。

ある文献によると、知的に重度の方と自閉症の行動特徴は似ているという知見もあります。

また、知的に遅れがなく自閉症の特性がある場合には、非常に定型発達の状態像と似ていると感じることもあります。

例えば、自閉症の方が苦手とすることに、場の空気を読んだり、予定の変更、相手の意図のくみ取りなどがありますが、私が見てきた自閉症の特性のある人の中には、ある種、これらが比較的得意ではないかと感じることもあります。

ですが、重要なのは、ある一場面やある時間軸の一時点だけで見ないということです。

自閉症の特性のある方は、経験などのよって自分なりに適応の方略を学習している場合があり、様々な場面や広い時間スケールで見ないとその特性が目立たないことがあるからです。

そして、こうした重度の自閉症の方と知的に遅れはなく少し自閉症の特性があるという中間ゾーンにおそらく私の弟がいます。

私の弟は広汎性発達障害であり、今でいう自閉症スペクトラム障害です。

知的にはグレーゾーン(平均よりもやや下)であり、自閉的な特徴も少し(?)見られます。

自閉的な特徴は慣れた場面では比較的少ない印象があります。空気を読んだり、相手の意図をくみ取るなどは私から見ると得意なのではないかと感じることもあります。

ですので、最初は自閉症の特徴があると言われてもしっくりくることは少なかったです。おそらく、私など慣れた人といると、対人関係上の振る舞い方や、どうやって相談すればいいかなど経験的にわかっていること、そして、私も慣れから合わせることができるからだと思います。

特性の目立ちは新奇な場面で顕著になります。これまでの弟のつまずきを考えても新しい場面への適応に時間がかかったことから、おそらく、特性もそうした中で顕著になることが多かったのではないかと想定されます。

このように自閉症一つとっても状態像が非常に多様だと感じます。

テキストなどに記載されている自閉症の特徴はある種典型的でわかりやすい部分かと思います。

自閉症など発達障害の概念を深く知るためには、多様な人たちとの関わりが必要不可欠だと思います。そうして初めて、自閉症という発達障害の概念の理解に迫れると思います。

改めて、人の発達は非常に多様で奥深いものだと感じます。

今後も発達支援の現場から発達障害の多様性を理解していきながら、より良い支援を目指していきたいと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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