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【療育で大切なこと】能力の発達について:発達の最近接領域と足場づくりをヒントに

投稿日:2024年4月10日 更新日:

著者は長年、発達障害など発達に躓きのある子どもたちへの療育(発達支援)を行ってきています。

療育経験を通して子どもの成長を実感でき、子どもの成長に携わることができることが大きな喜びになっています。

子どもは成長する過程の中で、〝能力″と〝″を成長・発達させていきます。

両者は互いに関連性を持ちながらも異なる側面があると感じています。

 

それでは、子どもの成長に見られる能力と心の発達にはどのような様相があるのでしょうか?

 

そこで、今回は、療育で大切なことについて、臨床発達心理士である著者の経験談を踏まえて、能力の発達を中心に発達の最近接領域と足場づくりをヒントに理解を深めていきたいと思います。

 

 

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子どもの〝能力″の発達を理解する視点

子どもは様々な経験を通して自身の〝能力″を成長・発達させていきます。

一般的に私たち大人は、○歳頃に○○ができるようになる、といったある種の発達の里程標を想像することがあります。

例えば、1歳過ぎに発語がある、歩けるようになってくる、など定型発達児において多く見られる特徴があります。

一方で、非定型発達児には一般的な発達の里程標とは〝速度″〝質″共に異なる発達の様相を示すことがあります。

子どもの〝能力″面に焦点を当てた際に、年齢による変化以上に発達過程を深く理解することが、発達障害児など発達に躓きのある子どもたちを理解するためには必要になってくると感じています。

臨床発達心理学″では、子どもの発達領域を細分化し〝感覚・運動″〝認知″〝言語″〝社会・情動″といった領域に分けて子どもの発達を理解してきます。

つまり、様々な〝能力″の発達を細分化して理解するという方法です。

具体的には、なぜ、人は歩けるようになるのか?なぜ、人は外界の世界を認識できるようになるのか?なぜ、人は言葉を話せるようになるのか?なぜ、人は他者と協力したり、他者の感情を汲みとることができるようになるのか?といった発達のプロセスを理解することを意味します。

そして、これらの領域は互いに関連性を持ちながら発達していきます(〝発達の機能間連関″とも言われています)。

こうした〝能力″の発達は年齢による理解にとどまらず、人の生涯に渡る発達の経過(歩み・プロセス)を深く理解することことでもあります。

そのため、なぜ○○ができるようになるのか?○○ができるようになるためにはどのような支援が必要になるのか?○○ができるようになるためには現状どの発達過程を辿っているのか?といった問いや問いに対する説明、そして、支援方法を検討する力が必要になってきます。

 


それでは、次に〝能力″の発達を支援する視点にはどのようなものがあるのかを見ていきます。

 

子どもの〝能力″の発達を支援する視点

子どもの〝能力″の発達を支援する視点(方法)として著者が重要だと考えているものに、①発達の最近接領域②足場づくり、があります。

 


次に①と②について見ていきます。

 

①発達の最近接領域

発達の最近接領域″とはロシアの心理学者〝ヴィゴツキー″が考案したもので、教育とは、これからできること(大人・他者が協力すればできること)と、今できること(一人でできること)の差分であり、その境界(差分)を見極めるといった考え方です。

例えば、キャッチボールができるためには、ボールを投げる、ボールが捕れる、といった力が必要です(他にも要素を分解すると様々な能力が必要です)。

この部分のどこが独力でできていて、どの部分に助けがないとできないのかを見極めることが、キャッチボールができるようになるためには必要です。

発達の最近接領域″の視点は、〝発達のアセスメント″とも言い換えてもいいと著者は考えています。

 

②足場づくり

教育の目標が見つかったら(発達のアセスメントが実行できたら)、次に必要となるのは〝足場づくり″です。

足場づくり″とは、学び手が一人では達成できないことを他者が支援することを指します。

例えば、段ボール工作がうまくできない子どもに対して、切るところを手伝う、貼るところを手伝う、作りたいものをイメージするところを手伝う、など子どもの現状に応じて手助けすることです。

 

著者は①の〝発達の最近接領域″及び②の〝足場づくり″の視点は、子どもの様々な〝能力″を育てる上で大切な視点だと考えています。

現に療育現場における支援内容の多くは①と②の二つの視点を実践している場合が多いと感じています。

 

 


以上、【療育で大切なこと】能力の発達について:発達の最近接領域と足場づくりをヒントに見てきました。

子どもたちは様々な経験を通して自身の能力を成長・発達させていきます。

子どもたちの能力がより開花されていくように、〝発達の最近接領域″を見極め、支援をしていく上での〝足場づくり″を行っていくことが大切だと思います。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も子どもたちの興味のある活動を中心とした能力の成長を支援する方法を考え実践していきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「【療育で大切なこと】心の発達について:自尊心、自己効力感をヒントに

 

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