発達理解・発達支援・ブログ

人間の多様な理解と支援を目指して!

大切なこと 療育

【療育で大切なこと】安心できる環境の特徴を通して考える

投稿日:2024年4月5日 更新日:

著者は発達障害など発達に躓きのある子どもたちと療育現場で長年関わってきています。

療育経験を通して感じることは、子どもの成長には個人差があること、そして、日々の地道な活動経験を通して多くのことを学び成長していくといった実感です。

子どもの成長において大切な要素は、〝安心できる環境″です。

 

それでは、〝安心できる環境″とは一体どのような特徴があるのでしょうか?

 

そこで、今回は、療育で大切なことについて、臨床発達心理士である著者の経験談を踏まえて、安心できる環境の特徴を通して理解を深めていきたいと思います。

 

 

療育で大切なこと:安心できる環境で子どもは育つ

子どもにとって〝安心できる環境″とは一体どのようなものなのでしょうか?

著者が療育をはじめた当初は子どもにとって〝安心できる環境″とはいえない環境になっていたと反省すべきことが多くあったと今では感じています。

もちろん、当時の著者は日々の活動を実施するのに精一杯で知識も不十分でしたので、その中でやれることを最大限やった結果だと思っています。

またまだ、途上ではありますが、様々な経験の中で子どもにとって〝安心できる環境″とは何かが少しずつ見えてきたと感じています。

 


以下、著者の様々な経験(反省すべき)と知識からの学びを通して実感することができた〝安心できる環境″の特徴について見ていきます。

 

 

安心できる環境の特徴について

 

1.最大の環境は人

環境調整には大きく〝人的環境″と〝物的環境″とがあります。

その中でも、特に〝人的環境″が重要だと感じています。

子どもは、自分のことを理解してくれる、愛情や意欲のエネルギーを多分に注いでくれる大人を好みます。

その際に重要となるのが、個人差、つまり、子ども一人ひとりの違いを理解することです。

つまり、子どもの育ちや性格などは一人ひとり異なるのだという理解が〝安心できる環境″作りの前提としてとても大切だということです。

著者の失敗例の多くはこれに逆行する対応を行っていた場合に多く生じていたと思っています。

例えば、みんなやっているのであなたもやりましょう、みんなまもっているのであなたも守りましょう、社会のルールなのでみんなと同じように守りましょう、といった〝みんなと同じ″を強要するといったものです。

発達障害など発達に躓きのある子どもたちの育ちは〝ゆっくり″〝凸凹″があるなど非常に多様です(もちろん、すべての子どもが多様な発達を見せます)。

こうした多様な発達を理解している(しようとしている)大人は子どもたち一人ひとりの〝発達″や〝心″に目を向けることができます。

著者は療育経験を積み重ねていきながら、子どもたち一人ひとりのことを把握できるようになってきたこと(もちろん、まだまだ途上ですが)、そして、どのような関わり方を好むのか、どのような心の状態にいるのか、といったことに目が向くようになったことが大きな変化としてあったように思います。

 

 

2.特性への理解

特性″を理解することは非常に大切だと思います。

なぜなら、人は自分の感覚や理解の範疇で物事を捉えようとするからです。

それは他者を理解するときも同様です。

例えば、道順に強い〝こだわり″のある自閉症児がいたとします。

自閉症には〝こだわり″が特徴としてありますので、自閉症の知識のある人であれば、いつも通る道へのこだわりには〝いつもと一緒″つまり、〝同一性保持″への理解がある程度はできます。

一方で、こうした〝特性″への理解が不足していると、誤った対応(子どもを混乱やパニックに導く対応)に繋がる場合が出てきます。

道順の例は非常に分かりやすいものですが、ここで重要となるのが様々な〝特性″は〝重なり合う″場合があること、そして〝強弱″があること、〝年齢に応じて変化″する所もある(なくなりはしませんが)といった理解です。

さらに、〝特性″が生活のどういった場面で生じているのか?といった文脈の中で理解すること、また、心の状態とのリンク、季節や環境の変化による生じ方、など分かりにくいものが様々あると感じています。

〝特性″と言えば、ASD特性やADHD特性などが様々な書籍に載っていますが、こうした知識を経験と紐づけて理解することが重要であり、経験知にまで達する理解にはとても時間がかかると感じています。

一方で、深く〝特性″を理解できるようになると、先に見た多様な発達の理解に繋がり、そして、子どもたちが安心できる関わり方・環境調整ができるようになってくると思います。

 

以上が、著者が思う子どもが〝安心できる環境″の特徴になります。

もちろん、以上の特徴以外にも大切な点は多くありますし、関わり手によっても大切だと考えていることには違いがあると思います。

 

 


以上、【療育で大切なこと】安心できる環境の特徴を通して考えるについて見てきました。

〝安心できる環境″は長期的に見ると最大の支援効果を生むことに繋がるほど必要不可欠なものです。

人は○○ができるようになるといった能力の成長以上に、○○をやってみようといった意欲のエネルギーが重要だと思います。

意欲のエネルギーを高めていくことが結果として、能力の成長に繋がるのだと思います。

そのためには、今回見てきた〝安心できる環境″作りが最も大切だと感じています。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育経験を通して大切だと思ったことを言語化して発信していきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「【療育で大切なこと】子どもたちの良き変化を通して考える

 

 

-大切なこと, 療育

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

【療育(発達支援)の専門性】療育現場で必要な専門性の視点とは何か?

著者は長年、療育(発達支援)の現場で発達障害など発達に躓きのある子どもたちをサポートしています。 その中で、子どもたちの成長・発達は一人ひとり非常に異なるものだと実感させられています。 また、現場での …

【知的障害児への支援で大切なこと】療育経験を通し考える

〝知的障害(ID)″とは、知的水準が全体的な発達よりも低く、かつ、社会適応上問題がある状態のことを言います。 最近では、知的水準よりも〝適応状態″に目が向けられるようになってきています。 知的障害児へ …

療育の成果について-仲間関係を通して-

療育の成果について、どのような働きかけが成果に繋がったのかを特定することは難しいことです。まず、何を持って成果と言えるのか、そして、成果には様々な要因が絡んでいるからだと思います。 さらに、成果(変化 …

発達障害の重複(併存)について-療育経験から理解と支援について考える-

療育(発達支援)の現場で働いていると発達に躓きのあるお子さんたちと多く出会います。 発達障害には、自閉スペクトラム障害、ADHD、学習障害、発達性協調運動障害、知的障害など様々なタイプがあります。 療 …

ADHD児への療育-多動性の対応について-

ADHD(注意欠如/多動性)とは、多動性・衝動性・不注意を主な特徴としています。 ADHDにも多動性・衝動性が強くでるタイプ、不注意が強くでるタイプ、両者の特徴が混ざっている混合型など様々なタイプがあ …