発達障害を特定するためには医師による診断が必要です。
診断する医師は、生育歴、発達特性の検査、知能検査、家庭環境、などの情報を踏まえて診断を行っています。
また、診断内容によってはある程度年齢がいかないと診断できないものもあると言われています。
それでは、医師による診断は100%正確であると言えるのでしょうか?
そこで、今回は、発達障害の診断は100%正確なのか?について、診断をする際の〝主観性″〝流動性″を通して理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「成田奈緒子(2023)「発達障害」と間違われる子どもたち.青春新書.」です。
診断をする際の〝主観性″について
以下、著書を引用しながら見ていきます。
診断方法の在り方上いたしかたないのですが、診断にあたっての質問には、当事者である子どもではなく多くの場合、親など「周囲の人」が答えます。つまり質問への答えは、「まわりの人の主観」によって生み出されるものでもあるのです。
発達障害の診断には、操作的定義を活用しています。
つまり、○○の内容から3つ以上該当し、それが社会生活に持続的に困難さを及ぼしている状態であるのか、といったことを確認していきます。
詳しくは、専門書で確認して頂いた方がいいかと思いますが、ここでのポイントは著書にあるように、診断は時と場合によって〝主観的″判断が入り込む可能性があるということです。
診断をする際に、子どもの場合だと、保護者からの情報をもとに子どもの状態像を見立てる必要があります。
その際に、保護者が子どもの情報を伝えると〝主観性″が少なからず入り込みます。
誰もが、多くの子どもたちの育ちや発達を踏まえた上で、自分の子どもの情報を客観的に捉えるのは難しいことです。
ましてや子どもの発達に悩みを抱えている保護者であれば、客観的判断ができない方も少なからずいると思います。
例えば、他者から見て比較的落ち着いていたとしても、落ち着きがない子どもと判断する可能性もあるとうことです。
つまり、診断の際には、〝主観性″が情報として入っていることが想定されます。
そのため、医師が診断をしたからと言っても、100%正確な診断は難しいと言えます。
診断をする際の〝流動性″について
以下、著書を引用しながら見ていきます。
発達障害は症候の出方にも「濃淡」があるので、「診断は流動的なものである」ということも押さえておきましょう。子どもによっては、症候の出方が一定でないこともあるので、そのときによって診断結果が異なる可能性もないとはいえないのです。
著書には、診断の〝流動性″の例として、緊張によって聴覚過敏の増減が見られた例が取り上げられています。
つまり、発達障害に多く見られる聴覚過敏など感覚の問題も時期と環境の違い(緊張状態など)などによって変化する可能性もあるということです。
全ての発達障害には、スペクトラム、つまり、強弱(濃淡)があると言われています。
さらに、強弱は年齢や環境要因などによっても変化すると考えられています。
このように、症状の出方も著書にあるように、一定ではない、〝流動的″であるため、診断結果にも影響が出る場合もあると考えられています。
そのため、私たちは、一度出た診断結果による苦しみや生きづらさもまた変化する可能性があるということも理解しておく必要があります。
このように、〝流動性″の観点からも、発達障害の診断は100%正確ではない可能があると言えます。
以上、【発達障害の診断は100%正確なのか?】診断をする際の〝主観性″〝流動性″を通して考えるについて見てきました。
私の身近には発達障害の人たちが多くいます。
その中には、発達障害の診断を受けた当時の姿と比べて、今の状態像がだいぶ変化したと感じる方もいます。
こうした事例を通して、発達障害の診断は、〝主観的″〝流動的″な部分もあるのだと考えさせられます。
大切なことは、今を生きる当事者の人たちの困り感の理解に近づいていけること、そして、彼らの未来を豊かにしていくために〝診断″があるのだと思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も医学の力も借りていきながら、変化し続ける子どもたちの状態像を少しでも理解していけるように、学びと実践を深めていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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