私たちの生活には、目に見えない、言葉では伝達されていない、〝暗黙のルール″が存在します。
例えば、人が話している時は静かに聞く、先生がみんなといったときはクラス全員が含まれる、物の貸し借りには順番がある、他人に急に話しかけたり過度な接近をしない、などです。
自閉症の人たちは、こうした〝暗黙のルール″の理解を苦手としています。
それでは、〝暗黙のルール″を理解していくためには、どのような支援方法があるのでしょうか?
そこで、今回は、自閉症への支援について、ソーシャルストーリーを例に理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「藤野博(2023)自閉症のある子どもへの言語・コミュニケーションの指導と支援.明治図書.」です。
ソーシャルストーリーとは何か?
以下、著書を引用しながら見ていきます。
自閉症のある子にとってわかりにくいそのような暗黙のルールを教える教育技術
米国の自閉症支援の専門家のグレイによって開発された支援技術
その場にふさわしいやり方や物事のとらえ方、一般的な対応のしかたはどういうものかということをふまえて、状況や対応のしかたや場に応じた考え方を、特別に定義されたスタイルと文例によって説明する教育技術
著書には、〝ソーシャルストーリー″とは、自閉症児に対して、暗黙のルールを教える教育技術、つまり、場面に応じた対応法・考え方を文字やイラストで説明する方法のことを言います。
市販の教材としても多くの書籍が出ています。
ここで重要なポイントは、著書にもありますが、文字やイラストなどの視覚教材の活用と子どもが実際に困っていることを取り上げることが必要です。
自閉症児は、視覚的に物事を考える人も多いため、口頭以外の情報が理解の手助けになります。
また、実際の課題を取り上げることで問題解決への動機を高めていくことができます。
ソーシャルストーリーが必要な理由
自閉症の人たちは〝暗黙のルール″がなぜ苦手とするのでしょうか?
この理由を理解していくことで〝ソーシャルストーリー″の活用のポイントがさらに詳しく見えてくるかと思います。
キーワードは〝心の理論″と〝中枢性統合″の弱さにあります。
〝心の理論″とは、他者の心情や意図を理解する能力のことです。
例えば、Aさんが親切心を持って自閉症の子の手伝いをしようとしたが、自閉症の子は邪魔をされたと勘違いしてしまったという状況があるとします。
こうした状況が起こるのは、Aさんの親切心といった意図をうまくくみ取れないためです(結果にのみフォーカスしてしまう)。
つまり、〝心の理論″に弱さがあることで、〝暗黙のルール″として困っている人を助けようとする他者の意図や心情がうまく理解できなかったことが背景として考えられます。
〝ソーシャルストーリー″では、他者が決して邪魔をしたかったのではなく、親切心を持って関わろうとしていたというストーリを言葉やイラストで記載することで、〝心の理論″の苦手さをサポートすることができます。
〝中枢性統合″とは、物事の全体像を把握する能力のことです。
例えば、公園とは、ブランコ・すべり台・砂場・鉄棒などの集合体として理解でき、学校とは、先生・クラス・授業・友達関係などの集合体を指します。
〝中枢性統合″が弱いと、こうした集合体の中にある特定の部分に目を向ける傾向が強くなります。
〝ソーシャルストーリー″では、公園とは?学校とは?など全体像を理解するために、言葉やイラストを活用することで、〝中枢性統合″の苦手さをサポートすることができます。
このように、自閉症への支援を考える際には、自閉症の〝認知特性″について把握しておくことが大切になります。
以上、【自閉症への支援】ソーシャルストーリーを例に考えるについて見てきました。
〝ソーシャルストーリー″を活用することで、物事の因果関係や物事の繋がりといっことの理解を手助けすることができます。
そして、〝ソーシャルストーリー″の活用は、子どものニーズによって活用内容は異なっていきます。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も自閉症の認知特性を考慮して、どのような支援方法が子どもに合っているのかを試行錯誤していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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