療育において、子どもの〝自尊心″を育むことはとても大切なことです。
〝自尊心″とは、自分に対する自信や自分を大切に思える感情のことを言います。
一方で、〝レジリエンス″といった立ち直る力を育てていくこともまた療育ではとても大切です。
自尊心とレジリエンスは一見すると似ているように思えます。
それは、自分に対する肯定的な評価が高い人、つまり、自尊心が高い人の方が何か困難があっても立ち直る力が高い、つまり、レジリエンスが高いと推測できるからです。
しかし、両者は異なるものだと考えられています。
それでは、自尊心とレジリエンスにはどのような違いがあるのでしょうか?
そこで、今回は、自尊心とレジリエンスの違いについて、臨床発達心理士である著者の意見も交えながら理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「藤野博・日戸由刈(監修)(2015)発達障害の子の立ち直り力 「レジリエンス」を育てる本.講談社.」です。
自尊心とレジリエンスの違いとは?
以下、著書を引用しながら見ていきます。
自尊心は成功したり、ほめられたりすることで育っていくもの。
レジリエンスは成功時にも育つが、失敗して人にたすけられたときにも育つ。
著書の内容から、〝自尊心″と〝レジリエンス″は、成功体験によりどちらの力も高まっていくとされています。
両者の違いとして、〝自尊心″は失敗経験が続くと低下するのに対して、〝レジリエンス″は、失敗経験が続いても、現実をしっかりと見つめ直したり、他者に頼ることで困難を乗り切るなど負のスパイラルを抜け出す役割を果たしています。
そのため、レジリエンスは失敗経験においても成長できる要素を持っていると言えます。
つまり、失敗(困難な状況)への対処方法の力が高い(現実をしっかりと分析できる・他者に頼るなど)ことが〝レジリエンス″の特徴だと言えます。
一方で、〝自尊心″と〝レジリエンス″の両者は非常に関連性が高いものだと考えられています。
以下、引き続き著書を引用しながら見ていきます。
レジリエンスは自尊心と一体になっていますが、さらにもうひとつ、ソーシャルスキルとも支え合っています。この3つの要素は、社会性の基盤となります。
著書には、〝自尊心″と〝レジリエンス″は、互いに補い合うもの、一体となるものだとされています。
さらに、ここに〝ソーシャルスキル(人と関わる方法・技術)″を加えることで、社会性の基盤ができるとの記載があります。
つまり、社会性の基盤には、〝自尊心″〝レジリエンス″〝ソーシャルスキル″の3要素が非常に重要だと言うことです。
著者のコメント
著者は療育現場で子どもたちの自尊心を育むことをとても大切にしています。
自尊心を育むためには、関わる大人が子どもに肯定的な態度で接し続けることや、仲間集団の中で認められたという経験が必要だと感じています。
自分は他者から認められているという評価、それは、成功も失敗もそして性格の良い点・悪い点なども含めて、全体としてパーソナリティをあるがままに受容された経験が自尊心の育ちにおいて必要だと思います。
さらに、ソーシャルスキルもまた大切です。
発達に躓きのある子どもたちは、自分の気持ちをうまく相手に伝えることができなかったり、相手の心情をうまく汲みとれずに、一方的に自分の思いを伝えることもしばしばあります。
そのため、他者との関わり方の技術を伝えることもまた必要です。
最後に、レジリエンスについてですが、レジリエンスといった言葉自体、自尊心やソーシャルスキルと比べるとまだまだ認識されていない所があるように思います(著者も含めて)。
一方で、子どもの人生において失敗や困難な状況においてどうやってその状況に向き合い前進していくかはとても大切です。
その時に大切になる概念がレジリエンスだと思います。
レジリエンスの重要性を知ることで過保護・過干渉の持つ危険性をより深く実感できるのだと思います。
そして、療育現場において、失敗からいかに立ち直ることができたかという経験をうまく積み重ねていく関わりもまた大切だと思います。
著者が大切にしている社会性の育ちの基盤には、自尊心、ソーシャルスキル、レジリエンスの3つの要素が必要であり、これらを意識して子どもたちに関わっていくことが大切であると改めて考えさせられました。
以上、【自尊心とレジリエンスの違いとは?】療育経験を通して考えるについて見てきました。
自尊心にしても、レジリエンスにしても、こうした用語の重要性を療育現場の中で実感できるには時間がかかるのだと思います。
それは、簡単には身につけることができず、時間をかけて育っていくものだからです。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場の子どもたちの育ちに貢献していけるように、子どもたちの心の育ちにもしっかりと目を向けていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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