人は人生の様々な局面において困難さと向き合うことがあります。
困難さを乗り越えることで得られる達成感がある一方で、困難さに直面した後、うまくいかないことももちろんあります。
そんな時に、落ち込んだままでいるか、立ち直ることができるかなど、人によって立ち直る力には違いがあります。
このような文脈で出てくるのが〝レジリエンス″といったものです。
それでは、レジリエンスとは詳しくはどのようなものなのでしょうか?
そこで、今回は、レジリエンスとは何かついて、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「藤野博・日戸由刈(監修)(2015)発達障害の子の立ち直り力 「レジリエンス」を育てる本.講談社.」です。
レジリエンスとは何か?
冒頭で少し触れたように、〝レジリエンス″とは、一言でいえば〝立ち直る力″になります。
すべての人と言っても過言ではないほど、人は友人関係での躓き、勉強での躓き、スポーツでの躓きなど様々な状況においてうまくいかずに落ち込んだ経験があるかと思います。
そんな時に、いかにして前進しようというエネルギーが働くか、つまり、回復する力があるかが〝レジリエンス″といった〝立ち直る力″になります。
それでは、もう少し〝レジリエンス″を深掘りしていきたいと思います。
以下、引き続き著書を引用しながら見ていきます。
レジリエンスは、心の「強さ」というより「しなやかさ」というべきもの。
レジリエンスは自分と折り合える力といえるでしょう。
思い通りにいかなくても現実に向き合い、前向きにもう一度チャレンジしようとする心のありようが、レジリエンスです。
著書の内容を踏まえると〝レジリエンス″には、いくつかポイントがあると言えます。
1.心の〝しなやかさ″
レジリエンスとは、心のタフさではありません。つまり、困難な状況においても微動だにせずに対応したり、乗り越えていく力ではないということです。
レジリエンスとは、著書にあるように心の〝しなやかさ″であり、うまく行かない状態にあっても気持ちを前進する方向に向けていく力だと言えます。
2.自己と折り合う力
他者との折り合いをつける力がソーシャルスキルであるのに対して、レジリエンスとは自分と折り合える力のことを指します。
他者との距離の取り方のスキルとは異なり、自己コントロール力とも言える、自分の内面で生じる様々な感情や思考に対して、うまく調整をする力だと言えます。
3.チャレンジする力
人は物事がうまくいかないとその原因を他者や外部に帰属することがあります。
一方で、レジリエンスが高い人はうまくいかない状況に対して、その状況を真摯に受け止め再度前進していこうと行動に移す力、つまり、チャレンジする力があると言えます。
著者の経験談
著者がこれまで療育現場で関わってきた子どもたちは〝レジリエンス″の力が高い子やそうでない子がいたと思います。
様々な子どもがいる中で、〝レジリエンス″の力はもとから高かったというよりも、時間をかけて、その能力が高まっていったと感じるケースがほとんどだったように思います。
例えば、昔は、活動でうまくいかないとすぐに泣いたり諦めたりしていた子が、少しずつ成功体験を積み重ねていったことで、うまくいかない状況においても、泣かなくなったり、再度挑戦する姿が増えていったなどです。
著者は、子どもの〝レジリエンス″の力が高まることで、これまで手厚く配慮や支援をしていた子どもに対して、うまくいかないことや落ち込んだ状況の中でも、〝何とか自分を立て直すかもしれない″〝しばらく様子をみてみよう″など、回復する力を信じられるようになったことはこれまで多くあります。
著者のこうした心境の変化こそまさに関わる子どもたちの〝レジリエンス″の力が育まれた証拠であると思います。
そして、〝レジリエンス″の力が高まることで、さらに、外の世界に対してチャレンジする様子も増えていくのだと思います。
そのため、〝レジリエンス″を育てることは、療育現場においてもとても大切なことだと思います。
以上、【レジリエンスとは何か?】療育経験を通して考えるについて見てきました。
レジリエンスの理解の仕方は研究者によっても異なり、そして、まだまだ研究途上の領域だと言われています。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場において、子どもたちのレジリエンスの力を育んでいけるように自分の関わり方を見直していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。