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【不登校の子どもの社会性について】他者への信頼感の重要性を通して考える

投稿日:2024年1月25日 更新日:

子どもが不登校になると保護者には様々な心配事が生じます。

例えば、学校の勉強は大丈夫か?将来は大丈夫か?いつ学校に行けようになるのか?だれに相談すればいいのか?いい解決方はないか?などです。

学校は勉強以外にも友人関係をはじめとした社会性を学ぶ場でもあります。

学校に行かないことで友人関係などから得られる社会性の発達において、今後の育ちに支障がでることを心配される方もいると思います。

 

それでは、不登校の子どもたちは学校に行かない分、社会性の発達に躓きが生じるのでしょうか?

 

そこで、今回は、不登校の子どもの社会性について、臨床発達心理士である著者の意見も交えながら、他者への信頼感の重要性を通して理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「石井志昂(2021)「学校に行きたくない」と子どもが言ったとき親ができること.ポプラ新書.」です。

 

 

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不登校の子どもの社会性:他者への信頼感の重要性

以下、著書を引用しながら見ていきます。

人というのは親子関係で培ったものをベースに家庭の外で振る舞うので、「社会性は家庭の中で十分に育つ」というのが、不登校の現場での経験です。

 

著書の石井さんによれば、これまでの長年の不登校の現場を通して、子どもが不登校であっても、社会性は親子関係の中で十分育つことができると記載されています。

これは愛着関係と捉えても良いと著者は感じます。

愛着研究によれば、大人になっても愛着を測る指標が開発されているなど、大人の愛着(アタッチメント)の研究も最近非常に着目されるようになってきています。

まさに、子どもから大人に至るまで愛着研究は発展してきています。

そして、愛着に問題を抱える人(子どもから大人まで)に対して、愛着の修復は可能だと考えられています。

 

関連記事:「愛着障害の克服について:良い安全基地の存在から考える

 

アタッチメント理論を活用すると、不登校の子どもは危機的状況に直面していることになり、不登校といった危機が親子関係、さらには、愛着関係を揺るがす可能性があるということです。

仮に子どもが不登校になっても、親子関係の信頼が維持されていれば、社会性は育っていくと考えられます。

大切なことは、周囲の大人が不登校といった子どもの状態を理解していく関わり方をとるということです。

 

 


また、学童期の社会性はそれ以前の社会性の強さと関係があると言われています(以下、著書引用)。

最近の研究では、社会性の基礎は0歳、1歳、2歳のときに育つことがわかっています。

10歳のときに社会性がよく育っている子を調べていくと、0~2歳の乳児期にアタッチメント体験が豊富だったという相関関係がはっきり出てきたんです。

 

著書の内容から、社会性の基礎は0~2歳の頃に育ち、社会性の基礎はアタッチメント体験が豊富だという関係にあることがわかります。

つまり、社会性の育ちは幼少期の養育者との安定した愛着関係が非常に重要であり、それが後の社会性の発達においても影響するということです。

 

 


さらに、著書には、親以外の大人との関係もまた社会性の育ちにおいて、とても重要であるとの記載もあります(以下、著書引用)。

自分のことを理解して、何か失敗をしても、「大丈夫、大丈夫」と言ってくれる。血のつながりがなくても(中略)自分を愛してくれる人がいる。そういう感情を小さなときに持つことが、社会性の成長に最も関係しているというデータが出てきたんです。

 

著書の内容から、親など血の繋がりのない〝第三者″の大人が、子どもに愛情深く関わることで、子どもの中には他者への信頼感の基礎が育まれ、こうした関係性は社会性の発達に最も強く影響しているといったデータが出たという記載があります。

補足として、この知見はデータ数が少ないとの記載もあるため、今後まだまだ検討の余地はありますが、著者はこの知見は非常に興味深いと感じます。

子ども、特に、小学校中学年以降は友人関係(仲間関係)が非常に社会性の発達において大切だと著者は考えていました。

もちろん、同年齢集団での関わりはとても大切です。

一方で、今回見てきたように、第三者の大人との関わりも非常に社会性の発達において重要だということです。

不登校の子どもは学校での友人関係で悩むことが多くあります。

そんな時に、真摯に自分の気持ちに寄り添ってくれる保護者及び第三者的な大人との関係が大切だということです。

 

関連記事:「【社会性の発達段階について】人の社会性はどのような発達過程を辿るのか?

関連記事:「【〝社会性″とは何か?】療育で〝社会性″を育てるために大切なこと

 

 


以上、【不登校の子どもの社会性について】他者への信頼感の重要性を通して考えるについて見てきました。

今回見てきたように社会性の発達においては、保護者及び第三者的な大人との関係が非常に重要だということです。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も不登校への理解を深めていきながら、子どもの社会性の発達についても考えを深めていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

石井志昂(2021)「学校に行きたくない」と子どもが言ったとき親ができること.ポプラ新書.

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