〝実行機能″とは、〝遂行能力″や〝やり遂げる力″とも言われています。
実行機能の発達は、幼児期(1歳前後~5・6歳頃)に急激に発達することがわかっています。
また、実行機能の発達に大きく貢献する〝アタッチメント″また、幼児期に急激に発達することがわかっています。
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実行機能を育てる上で、個別のプログラム、集団のプログラムなど様々な方法があります。
それでは、実行機能を育てる上で最も効果的だと考えらえている支援方法はあるのでしょうか?
そこで、今回は、実行機能への支援で最も大切なことについて、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「森口佑介(2021)子どもの発達格差 将来を左右する要因は何か.PHP新書.」です。
実行機能への支援で最も大切なこと
以下、著書を引用しながら見ていきます。
むしろ実行機能などにとって大事だったのは、クラスの情動的な雰囲気や先生の指示の仕方でした。先生のポジティブな声色とか、子どもがお互いに承認し合うかどうか、先生の指示が上手か、などが実行機能などと関わっていることが示されています。
こういう結果をみると、特定のプログラムが大事というよりも、教師や保育士と子どもとの関係性や、クラスの雰囲気などが大事であることがうかがえます。
著書の内容から、実行機能への支援で最も大切なことは、特定のプログラムよりも、関わる大人との関係性であったり、子どもに対する大人の関わり方であったり、クラスの雰囲気などであると記載されています。
例えば、言葉の内容ではポジティブなことを言っていても、関わり手の声色や顔の表情など非言語的要素を子どもたちはよく見ています。
そのため、非言語的要素がマイナスな関わり方であれば、子どもたちは安心感が持つことが難しくなります。
非言語的要素による情動交流が子どもとの関係性を作る上でとても大切であり、非言語的要素が子どもにとって安心できるかどうかが大切になります。
また、一人ひとりの子どもがしっかりと大切にされているクラスでは、子どもたち同士もまた互いを認め合う文化が育まれていく可能性が高まります。
実行機能は、目標に向けて計画を立ててそれを遂行する力であるため、一見すると、上記のような他者との関係性や場の雰囲気などとの関係性は低いように思えます。
しかし、幼児期を対象としたこれまでの研究結果から、こうした要素が強く影響していることが分かってきているという事実は非常に興味深いことです。
著者の経験談
著者は現在、放課後等デイサービスで療育をしています。
関わる対象の子どもたちは学童期(小学生)ですが、上記の研究内容は学童期の子どもたちへの実行機能への支援にも通じるものがあると思います。
実行機能への支援の根底には、〝他者との信頼関係″や〝安心できる場の雰囲気″がとても大切だと経験則的に実感できるからです。
〝他者との信頼関係″や〝安心できる場の雰囲気″を作る上で著者が意識していることは、子どもたちが安心感を持てる情動的な関わり方を意識的にすることです。
例えば、表情や声のトーンが子どもにとって脅威とはならず安心感を持てる伝え方をすることです。
また、一人ひとりの子どもをしっかりと承認することです。
子どもたちは得意不得意、好き嫌いなど一人ひとり非常に多様です。
多様な子どもたちの状態像を理解し子どものパーソナリティをしっかりと受け止めていくことが大切だと感じています。
子どもたちは自分が承認されることで他者にも優しくしようとする行動がよく見られると思います。
こうした状態が相乗効果となり、様々な他者を認め合うことに繋がっていく集団・文化が少しずつ形成されていくように思います。
さらに、その場の大人同士の関係性も非常に大切だと感じています。
関わる大人同士の関係性が場の雰囲気を作るといっても過言ではないからです。
例えば、ギスギスした雰囲気の中で子どもたちが安心感を持つことは難しいと容易に想像できるかと思います。
そのため、子どもに関わる大人がお互いを信頼し合い、楽しそうに会話をしながら場を形成することを著者は大切にしています。
このような関わり方や場の雰囲気を作り出すことで、実行機能への支援にも効果が出ていると感じることがあります。
例えば、物の管理がうまくなった、時間の管理がうまくなった、目標を立てて楽しく活動する様子が増えた、などの変化が見られるようになったと思います。
もちろん、〝他者との信頼関係″や〝安心できる場の雰囲気″以外にも、個別の実行機能への支援も効果の一要因であるのは確かだと思います。
一方で、〝他者との信頼関係″や〝安心できる場の雰囲気″などが、実行機能の発達において、間接的に大きな影響を与えていることは経験則的ではありますが著者の実感としてあります。
以上、【実行機能への支援で最も大切なこと】療育経験を通して考えるについて見てきました。
実行機能への支援は、もちろん、実行機能に対する直接的なアプローチもあります。
今回は、直接的なアプローチというよりも、間接的なアプローチとも言える内容を紹介してきました。
ここで、大切なことは、上記に見てきた間接的ともいえるアプローチが、非常に効果があるということです。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も関わる子どもたちの発達が豊かになるように、様々な知見を学び療育現場に取り入れていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
森口佑介(2021)子どもの発達格差 将来を左右する要因は何か.PHP新書.