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思春期 自閉症

自閉症児が思春期を乗り越えるために大切なことについて考える

投稿日:2020年6月1日 更新日:

一般的に思春期になると体の急激な成長に伴い、心身ともに多くの変化を感じる時期だと言われています。

また、思春期になるとより周りを気にするなど、自他の違いをより意識するようになります。

 

そうした中で、この時期に自閉症の子どもはどのような変化を辿るのか?

そして、どのような支援や取り組みが必要となるのか?

 

今回は、自閉症児の思春期の前後にどのような取り組みが必要になるのかについて考えながら、実際に私がこの年代で関わりのあった事例からもこの時期に大切なことについてお伝えしていこうと思います。

 

 

今回取り上げる文献は、「本田秀夫(2017)自閉スペクトラム症の理解と支援.星和書店.」です。

この文献を参照していきながら、思春期前後に大切な取り組みについて重要な個所を引用していきたいと思います。

 

 

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思春期を乗り越えるために大切なこと

自閉スペクトラムの子に、物心がつくのはいつ頃なのでしょうか。これは思春期なのだと思います。

 

中学生つまり思春期よりも前の時期は、彼らにとってはまだ物心がつく前の時期ということになります。まだ周りも十分によく見えていませんし、将来に対する自分の目標もはっきり確立していません。

 

私は思春期よりも前というのは、もっと自然体で子育てをすべきだということを強調しています。

 

何よりも大切なのは、本人の意欲を減らさないことです。

 

育児方針としては、過保護に構造化された環境を提供すること。得意なことを十分に保障すること。不得意なことに苦手意識を持たせないこと。大人に相談してうまくいったという経験を持たせること。

以上が引用文となります。

 

この内容を見ますと、自閉症児は、目標をもって自発的に行動する、周囲の状況が見えるようになるのが思春期ということになります。

あくまでも発達は人それぞれですので、一概に規定はできませんが、大切なのは思春期前の関わり方が、思春期を乗り越えるために重要であるということが読み取れるかと思います。

 

 

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著者の体験談

次に、私自身の経験を述べます。ある自閉症の子が中学(普通学級)に入学した時の話です。ここでは仮にAさんとします。

Aさんは、中学校の普通学級に入るとすぐに、周囲との違いに気づくようになります。それ以前は、周囲との違いについて話すようなことはあまりありませんでした。

小学校の頃は、ある意味マイペースでやっており、仲間集団にも何となくついていくような感じでした。小学校高学年になると、他児とうまくやり取りができない様子が目立ち始めました。

遊びの内容やペースが合わない、その中での話しがかみ合わず、他児から一方的に言われることが多かったなど、同年代でのズレが見られました。

ですので、急に中学生になって変わったというわけではなく、その兆候はその前からありましたが、中学になると周りも心身ともに急成長するため、よりその差が大きくなっていきました。

周囲との違いは様々なところで感じており、例えば、なぜ自分だけ体が小さいのか、周りが何を話しているのか理解できないなどです。

中学生になると、学業や部活動、興味関心などもそれ以前とは変わってきます。そうした変化についていくことが難しく、周りが急に変わってしまったという感じだったと思います。

今の私がAさんを見れば、普通学級でやっていくことは非常に困難であると思います。

しかし、そんな状態でもなんかと学校に通い続け卒業できたのは、小学校の頃から、家庭の中で自然に家族が関わり続けたことが大きかったのだと思います。つまり、先の例でいうと意欲が保たれていたということになります。

願わくば、Aさんが中学校でもっと本人にあった環境で過ごすことができれば、Aさんなりのペースで周囲と自分の違いなどを理解し、その中で、自分がやりたいことなどを考えることができたのではないかと思います。

当時のAさんに夢や目標などはありませんでした。それもそのはずで、日々を過ごすこと、他の人たちと自分との違いを考えながら生きることに精一杯だったからです。

こうして振り返ると、本人にあった環境がいかに重要であるかがわかります。

 

 


以上の事例と先の文献から言えることは、自閉症児が思春期をうまく乗り越えていくためには、本人が意欲のエネルギーをたくさん蓄えておくことができるように、それ以前の保護的な環境が重要だと言えます。

心身ともに変化の激しい思春期を乗り越えるためには、それ以前の関わりが大切だということです。

そして、Aさんの事例からせっかく思春期前に蓄えた意欲のエネルギーをより良い方向に向けていけるように、思春期においても本人にあった環境や教育が大切であると改めて感じます。

現在、私は発達につまずきのある小学生と関わっています。まさに、思春期前の意欲のエネルギーを蓄える時期です。彼らが少しでも良い未来を歩いていけるように、安心できる環境をつくっていきたいと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

本田秀夫(2017)自閉スペクトラム症の理解と支援.星和書店.

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