療育(発達支援)現場では、子どもたちが見せる様々な〝問題行動″への対応に迫られることがあります。
〝問題行動″の対応としてまずは情報を収集すること、〝測定″することが必要です。
関連記事:「【発達障害児の〝問題行動″の測定の仕方について】療育経験を通して考える」
そして次に、〝測定″した情報を〝分析″していくプロセスが出てきます。
それでは、〝問題行動″の分析の仕方にはどのように視点が必要になると考えられているのでしょうか?
そこで、今回は、発達障害児の〝問題行動″の分析の仕方について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「小嶋悠紀(2023)発達障害・グレーゾーンの子がグーンと伸びた声かけ・接し方大全 イライラ・不安・パニックを減らす100のスキル.講談社.」です。
〝問題行動″の分析の仕方について
著書の中では、〝問題行動″について、測定→分析の順で進めていき、分析では以下の2点に注意を払う必要があるとしています。
学校という枠を対象にしていますが、学校外の例えば、放課後等デイサービスに携わる人たちにとっても参考になりと思います。
以下、著書を引用しながら見ていきます。
①曜日による増減はあるか
曜日に増減がある場合は、「家庭環境」か「特定の教科」の影響が大きい可能性が高いです。
②増減の傾向がバラバラなら
たとえば学校であれば、
・近くにいる子と仲が悪い
・いつも聞こえてくる音などの刺激への過敏性がある
・行事など集団内で起こっている変化への抵抗感
など、その子を取り巻く環境をチェックします。
著書の中で、〝問題行動″の分析の視点として、①曜日による増減がある場合、②増減の傾向がバラバラの場合、の2点が必要だとしています。
①曜日による増減がある場合については〝家庭環境″か〝特定の教科″の要因を上げています。
家庭間で何が嫌なことがあった場合には当然その思いは学校生活にも影響が出てきます。また、特定の教科が苦手・嫌いなため、その教科の前後には状態が悪くなることがあります。
このように、曜日によって変動がある場合には、以上の2点が影響していることを考えていくことが必要になります。
②増減の傾向がバラバラの場合には様々な要因が考えられます。
学校というフィールドであれば、子ども同士の関わりやクラス集団の影響、他児の声・騒音といった音に関するものなど環境面のアセスメントが必要になります。
著者の経験談
これまで見てきた分析の視点は、学校をベースとしていますが、著者が勤める放課後等デイサービスにも参考になる点が多くあります。
まず一つ目として、学校での状態の悪さは、必ずといっていいほど放課後等デイサービスにも引きずってくるからです。
例えば、行事前に状態が悪くなる、音がうるさかったことで状態が悪くなる、クラス集団内で何か嫌なことがあった後は、〝問題行動″の生起頻度が非常に高まります。
発達障害児の多くは、予定の変更の苦手さや感覚過敏の問題があること、そして、対人コミュニケーションの困難さがあるため、上記の内容に困り感を抱えやすいことがあります。
そのため、学校からの情報を聞き取りながら、その上で、〝問題行動″の生起頻度を測定し分析していくことで、子どもの状態像の把握に繋げていくことができると感じています。
二つ目として、学校以外でも、ご家庭からの影響を受けることで状態像が悪くなることもあります。
例えば、きょうだい喧嘩、生活リズムの乱れ(夜遅くまでゲームをしていたなど)、家族間の不和によるマイナスの影響もまた〝問題行動″の生起頻度が高まる要因になります。
そのため、学校の情報に加えて、家庭での過ごしの情報も情報収集していくことが大切だと感じています。
三つ目として、放課後等デイサービス内での直接的な影響です。
非常に様々な要因があるかと思いますが、例えば、子ども同士の関係性(曜日による子どもたちの組み合わせの変動)、スケジュールが変わること、使える物(おもちゃ)やスペースの問題、他児の声、行き・帰りの車両の問題などがあります。
ただ、事業所内の問題は上記に見てきた学校や家庭とは異なり、情報を集めやすいため、素早く分析しその後の環境調整をはかりやすいといった違いがあります。
難しいことは、学校や家庭の情報を集めにくいケースです。
情報が不足すると分析材料が少なくなり〝問題行動″の実態にうまく迫ることができない場合があります。
そのため、著者は最大限、放課後等デイサービスでできる環境調整をはかりながらも、同時に、周囲の情報を収集していくように心がけています。
以上、【発達障害児の〝問題行動″の分析の仕方について】療育経験を通して考えるについて見てきました。
著書にあった分析で注意を払う2点以外にも、分析の視点はあると思います。
一方で、ここで取り上げて見てきたものは非常に高い割合で〝問題行動″の背景要因となっている場合があると感じています。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も子どもたちが見せる問題行動への理解と対応の質を高めていけるように測定と分析の精度を高めていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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小嶋悠紀(2023)発達障害・グレーゾーンの子がグーンと伸びた声かけ・接し方大全 イライラ・不安・パニックを減らす100のスキル.講談社.