子どもたちは時に危ない遊びをしようとすることがあります。
例えば、高い所に登ったり、そこからジャンプしたり、相撲や戦いごっこをしたり、など様々なものがあります。
著者の療育現場でもこういった少し危険とも思われる遊びを子どもたちが好んでする様子がよく見られます。
それでは、そもそも子どもはなぜ危ない遊びをするのでしょうか?
そこで、今回は、子どもはなぜ危ない遊びをするのかについて、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、追いかけっこを例に理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「ピーター・グレイ(著)吉田新一朗(訳)(2018)遊びが学びに欠かせないわけ 自立した学び手を育てる.築地書館.」です。
子どもはなぜ危ない遊びをするのか?
以下、著書を引用しながら見ていきます。
動物たちの遊びについて調査する研究者たちは、遊びの目的が進化してきた理由は、緊急時にどう対応したらいいのかを学ぶ助けであると主張しています。
人間が狩猟採集の時代には、獲物を捕るするため、あるいは外敵から身を守るために様々なリスクを伴う生活を送っていました。
著書にあるように、動物研究を通して遊びの目的の進化の理由を見ていくと、生命が脅かされる状況、危険を伴う緊急時の対応などにおいて、人がその状況への適応を学ぶ助けを学習することに理由があると考えられています。
つまり、危険性のある遊びを通して、人はある程度の居心地の悪さ、緊張感を要する状況において、自分の身体をコントロールする術を学んでいくということです。
そして、こうした学びは進化の過程の中で、遊びという形をとることで身につけることができるように変化してきたということです。
現代社会において、日々の生活の中で危険性がある活動を強いられるということは少なくなってきています。
むしろ、危険な場所や活動を極力排除する方向に進んでいるように思います。
そのため、遊びといった主体的な活動において、自由な環境の中で選択的に少し危険な遊びをすることが現代においての身体のコントロール力に繋がるということです。
それでは次に、相手を捕まえる、相手から逃げるといった少し危険な遊びとも言える〝追いかけっこ″を例に、危ない遊びの目的や意味について著者の経験も交えて見ていきます。
追いかけっこを例に考える
以下、著書を引用しながら見ていきます。
ほとんどの種の幼い哺乳類は、追いかけっこ遊びをします。互いに競争し、追いかける側と追いかけられる側を交換しながら遊びます。
こうした激しい運動の中で、子どもたちは自分の不安や肉体的な優れた能力を試しています。恐れと喜びを同時にもつことを興奮と呼びます。そのような遊びでは、子ども自身が活動をコントロールしている必要があります。
著書の内容から、ほとんどの哺乳類は、追いかけっこをして遊ぶと言われています。
追いかけっこの代表は鬼ごっこです。
著者の療育現場でも〝追いかけっこ″や〝鬼ごっこ″は人気のある遊びの一つです。
そして、〝追いかけっこ″や〝鬼ごっこ″は毎年例外なく人気のある遊びであり、飽きずに子どもたちがやる様子から、〝なぜここまで人気なのか?″と疑問に思っていましたが、今回参照した資料を通して納得感が高まりました。
つまり、著書にあるように、こうした激しい運動を通して、子どもたちは自分の身体を使って快・不快といった様々な感情を体感し(興奮を覚え)多くのことに挑戦をしていきながら、身体機能を高め、そして、活動をコントロールする力を獲得していくからです。
活動をコントロールする力とは、自分はここまでの脅威には対応できるなどの感覚をつかんでいくことです。
例えば、ブランコをこぐ勢い(高さ・速さ)や、木登りで登っていられる高さなどを把握していくことがあります。
そして、先ほど述べたように、こうした危険な遊び、激しい運動が必要になる遊びは進化の過程で遊びという形態をとるように進化してきたということです。
また、サッカーやバスケットボールなど様々なスポーツの中にも、追いかけっこの要素が複雑に混在していると考えられています。
著者の療育現場でも、〝追いかけっこ″のある種の発展形とも言える、サッカーやドッチボールなどの遊びもまた人気のある遊びの一つです。
さらに、〝戦いごっこ″は最近ではもっとも人気のある遊びの一つですが、〝なぜここまで人気なのか?″と思っていました。
そして、その答えもまた、ある程度の危険を感じる環境の中で自分の身体のコントロール感や身体能力の高まりを感じているなど、非常に人間の根源的な本能に基づいたエネルギーが遊びの形となったものなのだと理解できました。
以上、【子どもはなぜ危ない遊びをするのか?】追いかけっこを例に考えるについて見てきました。
世間では、危ない遊びはネガティブなものだと捉えられる傾向があります。
しかし、遊びという枠の中であるからこそ、ある程度の安全性が担保され、その中で少しリスクのある遊びをすることで子どもたちは多くのことを学んでいくのだと思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も危険な遊びの価値についての理解を深めていきながら、怪我のない範囲で思う存分体を動かして遊べる環境やルールを考えていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
ピーター・グレイ(著)吉田新一朗(訳)(2018)遊びが学びに欠かせないわけ 自立した学び手を育てる.築地書館.