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【自閉症の心の理論への支援について】療育経験を通して考える

投稿日:2023年6月5日 更新日:

「〝心の理論″とは、他者の意図、欲求、願望、信念、知識といった心の状態を推論する能力」のことを言います。

自閉症(自閉症スペクトラム障害:ASD)の人たちは、心の理論の獲得に困難さがあると言われています。

著者は長年の療育現場での経験から、自閉症児には心の理解の苦手さを感じることが多くありました。

その中で、自閉症の人か抱える心の理論の困難さの事例として、〝他者の心情がうまくくみ取れない″、〝他児が何をして過ごしたいのかの把握がうまくできない″、〝冗談が通じない″、〝複数人の中での会話が成立しない″などがあります。

 

関連記事:「【自閉症の心の理論の特徴について】療育経験を通して考える

 

それでは、心の理論の困難さへの支援方法にはどのようなものがあるのでしょうか?

 

そこで、今回は、自閉症の心の理論への支援について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「下山晴彦(監修)(2018)公認心理師のための「発達障害」講義.北大路書房.」です。

 

 

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自閉症の心の理論への支援について

以下、著書を引用しながら見ていきます。

・求められる支援

①他者の視点取り

②他者と自己の思考・感情・行動の関連の理解

 

著者の内容から、自閉症の心の理論への支援については、〝1.他者の視点取り″と〝2.他者と自己の思考・感情・行動の関連の理解″があると考えられています。

 


それでは次に、以上の2つの支援方法ついて著者の療育現場での取り組みも交えて見ていきます。

 

①他者の視点取り

自分と他者は異なる心を持った存在であることを理解していくためにも、他者の心の状態を言葉にして伝えていくことは大切なことです。

例えば、自分が話したい興味のあることを一方的に話す子に対して、他児の興味関心を伝えたり、他児が今どのような心境にいるのかを伝えるなど、自分とは異なる心の状態であることを教えていく方法があります。

その他、他児の気持ちを聞かずに自分で遊びを進めようとしたり、ルールを急に変える場合にも同様に、他児の心の状態を関わる大人が推測して言葉にして代弁する方法もあります。

自閉症児は、他者の心の状態を直感的に推論するよりも、言葉に置き換えて理解する傾向があります。

そのため、関わる子どもに応じた言葉選びが必要であり、例えば、A君の心の状態は〝○○したい気持ち″〝○○に興味がある″〝○○するのが好き″などA君に関連する情報を少しずつ付与していくことで、A君といった人物が持つ心を理解していくことに繋がると感じています。

A君だけではなく、B君、C君・・・と関わる人の数が増えていくことで様々な人物の心の状態の違いに気づいていくことができると思います。

著者が考える〝他者の視点取り″からの支援とは、上記のようなイメージです。

 

関連記事:「【心の理論から見た他者理解のプロセス】自閉症を例に考える

 

 

②他者と自己の思考・感情・行動の関連の理解

他者の心の状態への理解に加え、自分自身の心の状態にも目を向けその気持ちを言葉にしていくことは大切なことです。

心の理論の困難さは、他者の心の状態を理解する困難さ以外にも自己の心の状態の理解の苦手さも同時に合わせ持っています。

そのため、様々な経験の中で生じる体験を言葉にしたり、その中での気持ちを大人が言葉にして(推測しながら)伝えていくことが大切です。

実際に著者も、言葉にうまくできない子どもの気持ちを言い当てる言葉を投げかけることで、少しずつではありますが自分の気持ちの表現が豊かになってきたと感じるケースも見られます。

さらに、自己と他者といった個人の心の状態だけではなく、一方の思考・感情・行動は他方に何らかの影響を与えることについても伝えていくことも大切です。

例えば、A君がB君と遊べて楽しかった思いを著者に伝えてきた時に、著者は直接B君にその気持ちを伝えることを促したり、著者が代弁するようにしています。

また、A君は様々な遊びのアイディアをB君と遊びたいがために出すも、その気持ちや行動がうまく伝わらない時には、著者がA君の行動の意図をB君に伝えるようにしています。

このように、一人の思考・感情・行動はもう一方に影響することを言葉で伝えていくことで、少しずつではありますが、自他の関係性の理解や他者との関わり方などを学んでいくことができるのだと思います。

 

関連記事:「【自閉症の人は自分の気持ちに気づきにくい?】自閉症の心の理論の特徴について考える

 

 


以上、【自閉症の心の理論への支援について】療育経験を通して考えるについて見てきました。

今回見てきた心の理論への支援方法は、日々の地道な取り組みの継続が大切だと感じています。

人の心の状態は時と場合に応じて変化する非常に複雑なものです。

そのため、日常生活の対人関係の中で生じる自他の心の状態への気づき、それを言葉にしていく経験が心の理論への支援にはとても重要なことだと思います。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で関わる子どもたちとの共有経験をベースとして、子どもたちの心の状態を推測し、形(言葉)にして共有していけるように日々の取り組みを大切にしていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

下山晴彦(監修)(2018)公認心理師のための「発達障害」講義.北大路書房.

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